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第五章【悪党北海道脱出編/魔弾暴発《マジックバレット・アウトバースト》】

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33 竜装甲



 雪の積もる大通りで、タマは感覚を掴みつつあった。


 ――ライフルの弾丸は、音より速いんや。


 音速がどうこう、という話については、あまり理解していないが。

 音を聞いてからでは避けられないと、体感していた。


 ――けど、光よりは速くない。


 地下では、互いに視覚以外の感覚器で対応していたため、気づかなかったが。

 地上なら、よくわかる。


 ――銃口の光を見て、避ければええ。


 『まっすぐ』の魔弾は、それで避けられる。

 ステータスオールAで、なおかつ竜の感覚器()を持つタマならば容易だ。

 問題はそれ以外の魔弾。

 『まがって』の弾丸に込められている魔力量は『まっすぐ』とほぼ同じ。

 いくら鋭敏なタマの竜角といえど、エンチャント内容を遠距離から推察できるほどではない。

 全弾回避というわけにはいかず、紫鱗を使ったガードを何度も使わされている。


 ――距離詰めて制圧するんが、いちばんええけど。


 魔弾の回避と防御。

 タマの軽い体に、衝撃はよく通る。

 距離を詰めようとしても、雪と魔弾によって思うように走れない状況だ。

 地上に出てから、すでに十分ほどが経っているが、雪と瓦礫だらけの大通りで、タマはハルにじりじりとしたにらみ合いを強いられていた。


 ――ハルさんの弾丸が尽きるまで待てば勝てそうやけど、ハルさんがその『詰み』を考えてないはずあらへん。


 雪煙の向こうを睨みつけながら、タマは両手に魔力を集中させる。

 紫色の毒々しい鱗が積層して、篭手(ガントレット)のように小さな両手を包み込む。

 さらに、幅広の分厚い竜爪が、ぐぐ、と伸びて、さながら竜の両腕だけを移植したかのような、異形のシルエットを形作った。


「ええ感じやな、コレ」


 ――自分の体を、竜に近づけたり、遠ざけたり。そういうのは、なんとなくわかってきた。


 今までよりもはるかに『竜種』が体に馴染んでいる。

 全身を鱗で覆うことができれば完璧だったが、そこまでの変化はまだ難しそうだ。

 両腕のみ、両足のみ……など、対になる二部位までが限界だろう。

 いまはこれで対処するしかない。

 ……と。

 視界の端でなにかが光った。

 瞬間、竜篭手を構える。

 がきん、と音を立てて、鱗にあたった魔弾が弾け飛んだ。

 防御したあとすぐに、口から連続で黒火球を放って、銃口が光った方向へばらまいておく。


 ――ハルさんは、弾丸がなくなる前に『即死の魔弾』を私に当てたい。そのための作戦を考えとるはずや。私は逆に、『即死の魔弾』を撃たれる前に距離を詰めて、ハルさんを……。


 爪をこすり合わせて、ぎゃり、と鳴らす。


 ――……終わらせる。


 その覚悟は、できている。

 また、視界で光があった。竜篭手を振るって弾く。

 放射熱で溶けた雪の上を跳ねて、再び走りだす。

 再度の閃光。光った方向ではなく、タマの右側から飛んできた。

 『まがって』だ。

 篭手で弾くが、受けた角度が悪かった。

 衝撃で疾駆が一瞬止まる。


「くっ……!」


 その隙に、ハルがまた移動を開始する。

 大通りを、ひしゃげたテレビ塔のほうへと向かっているらしい。


 ――高いところを取る気ィやな。


 タマ自身、火球を用いるからわかる。

 基本的に、遠距離攻撃は高所を取ったほうが有利だ。

 登られると、マズい。


 ――しゃあない。イチかバチかや。


 両手の竜篭手を解除する。

 黒い煙になって消えていった篭手の代わりに、次は両足を紫の鱗が積層した。

 つま先から太ももの中ほどまでを強固に覆う装甲。


 ――防御しても、衝撃で足止めてまうんやったら。


 リスクは、あるが。


「スピード上げて、ぜんぶ避けながら距離詰めたる……!」


 その両足に、ぼう、と黒い炎が灯った。




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あとがきでこういうこと書くのアレですが、一度だけ書かせてください。

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― 新着の感想 ―
[一言] 話しは面白いのだが、大阪中盤以降のマコちゃんはやり過ぎで、かなり引きますよぉ・・・ 書き下ろしは、その辺りがパワーアップしてそうなので、買うに買えないぃ。 北海道編は、その分、楽しく読ませ…
[一言] 電子版買い増した 紙の方もこれから予約します
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