表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#壊れた地球の歩き方 【コミカライズ全3巻発売中!】  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!
第五章【悪党北海道脱出編/魔弾暴発《マジックバレット・アウトバースト》】

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

249/266

22 いけないこと



「なんで隠してたん?」

「だって、見つけたら怒るでしょ?」


 いつもと変わらないトーンで、ハルが言う。

 タマは、自分でも驚くほど冷静なまま、問いを投げた。


「ここにおる人らは、こうなることを……エンチャントの素材にされることを、納得してたん?」

「うん。もちろん」

「つまり、ダンジョン攻略のために、使ったんやな?」

「そうだよぉ」

「うそや」


 タマは断言する。

 だって。


「札幌ダンジョンを攻略するために使ったんやったら、死体は札幌ダンジョン内か、札幌近郊の拠点に残るはずや。攻略後の札幌には残らんやろ。ここにいるんは……」


 言いよどむ。


「……ダンジョン攻略後、札幌解放後に使われた(・・・・)ひとたちや」


 タマは幼い。

 人としても、竜としても。

 けれど、決して愚かではない。


「ハルさん、言うてた。札幌ダンジョンの中ボスは六体やったって。つまり、魔石の数は六個や。でも、竜を即死させるほどの魔弾となると、最低でもSランク魔石級のリソースが必要や。どう考えても、リソースが足りへん」


 算数の授業は満足に受けられていないが、これくらいなら指を折らなくたって数えられる。

 気まずそうなハルに、タマは言う。


「攻略前から、他人をリソースにしとった。そうやな?」

「……うん」

「そんで、これはただの勘やけど。攻略前も、攻略後も。ハルさんは素材にしたひとたちの同意なんか取ってへんねやろ」


 ハルは困ったように微笑んだ。

 エルフの微笑みは、その怜悧な美貌とは違って、人懐っこくて、無垢で、子供っぽい。


「だって、聞いたら断られちゃうんだもん」

「ダンジョンを攻略するために、無理やり魔弾にしたんか」


 ――中ボスに竜。何人消費したんやろ、ハルさん。


 Aランクスキルを持つものたちでも、おそらくは数十人単位でエンチャントの素材にしないと足りない。

 そして、Aランクスキル持ちなんて、そうやすやすと見つかるものではない。

 ハルはおそらく、大量の低ランクスキルと、その持ち主たちの生命力までもをリソースに変換して、竜殺しの魔弾を作り上げたのだろう。


「……覚悟はナマモノ。ダンジョン攻略のとき、みんなが自分から囮になったっていうんも、うそやな? ホンマは、ハルさんが後ろから追い立てて、無理やり囮にしたんやろ」

「タマさんは賢いねぇ」

「賢かったら、こんな呪いは受けてへん」


 真顔で応じつつ、わからないことがある。

 周囲を一瞥して、タマは聞く。


「なんでこんなことしたん?」


 理由だ。

 理由が、わからない。


「ダンジョン攻略までは、わかった。でも、そのあとは? 攻略後にも、魔弾を作る意味はないはず」

「……理由を言っても、怒らない?」

「不思議と、ハルさんには怒ってへん」

「そっかぁ。……あのねぇ」


 ハルはうつむいて、自分の体を両手で抱きしめた。


「エンチャントをするとき、ねぇ? 他人の生命力とスキルをリソースにする場合、その人を動けなくして、手を繋いで、『エルフ種』のエンチャントを起動して……一度、変換したリソースを、ボクの体に通して素材にするんだけどねぇ」


 エルフの細い体が、ぶるり、と震える。


「他人の生命力ってねぇ、すごいんだぁ。あったかくて、力強くて、まるでそのひとに包まれているみたいで……それが、なまら気持ちよくてさぁ」


 いつも通りの微笑みが、地下街に溜まった汚水に反射して見えた。


「いけないことをしたとは、思ってるんだよぉ?」




★マ!



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆を押して作品を応援しよう!!

TOブックス様から書籍一巻発売中!!

TOブックス様のサイトはこちら
― 新着の感想 ―
[一言] ハルがヤバすぎる 二人とも生命力奪うつもりだったのか、本島まで送るつもりだったのか……
[一言] これはアカン奴。相手のレベルで抵抗可能なのかどうか……。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ