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第五章【悪党北海道脱出編/魔弾暴発《マジックバレット・アウトバースト》】

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17 凍り付いた街



 蜘蛛の背に乗って辿り着いた札幌は、凍てついた真っ白な街だった。

 倒れたビル、割れたアスファルト、崩れた民家……そのすべてが、雪に覆われ、凍り付いている。


 ――すごいわ。


 残酷な滅びにこんなことを思うべきではないと、タマもわかってはいるが。

 それでも、氷漬けにされた輝く街の美しさに、息を呑んでしまう。

 年明け、真冬だからこその光景と言えるのかもしれない。


「除雪する人間がいないからさぁ。ボクだけじゃ、手が足りなくて」

「無理して除雪する必要もねえだろ、住んでる人間もいねえんなら」

「いやぁ、残った建物も雪の重さで潰れていくし、融けた雪が流れて木材や床下を濡らすと腐っちゃうし。できる限りやっておかないと、ボクが安全に住めるところも、どんどんなくなっちゃうの」


 微笑んでそう言ったハルは「あ」と声をあげた。


「そうだ。札幌の地下街にはいかないでねぇ。水が溜まってる場所とかあるし、崩れやすいから」

「……なんで札幌に住みはるん? それこそ牧場とかのほうが住みやすそうやのに」


 泊まった廃牧場を想定して聞いてみると、ハルは唇に指を当てた。


「うーん。いちばんの大都市だから、物資も多いし。……まあ、大半はだめになってるけど。それに、北海道で生き残りがいるなら、まずは札幌を目指すと思うんだぁ。だから、住める限りは、ここで生活するの」

「生き残りを出迎えるため、なんやね」


 うなずくエルフを見て、タマは思う。


 ――やっぱりええひとやん。


 ヤウシが雪道をシャカシャカ走って、大きな通りの中央に広がる公園のような場所に入った。

 通りの正面には、斜めに傾き、中ほどで完全に折れた電波塔が見えている。

 雪のせいでわかりづらいが、かなり広々とした道路と公園だったらしい。

 公園のど真ん中には、複数の真っ白なテントが張られている。


「ここが拠点なの。左右の建物は軒並みダメだけど、真ん中ならがれきが崩れて潰される心配もないし」

「暖房はどうやってんだ。凍え死ぬだろ」

「基本は焚き火。テントはホムラセッコの毛皮で覆ってあるし、『温めて』ってエンチャントもかけてあるから、意外と寒くないんだよぉ」

「あのパクリ野郎とは別ベクトルの便利さだな。数でカバーするんじゃなくて、質を上げて対応するわけだ。……質を上げるって言えばよ」


 レイジがわざとらしく片眉をあげた。


「竜を倒したんなら、魔石が出ただろ。使ったのか?」


 ハルは首を横に振る。


「もったいないから、そのままだよぉ。倒す敵もいないしねぇ、いまのところは」

「ランクは? S級か?」

「さあ。ボク、『鑑定』持ってないからわかんない。魔力的にはB以上ありそうだけど」


 ハルは防寒具のポケットに手を突っ込み、ジャラジャラ音を立てて拳を引き抜いた。

 広げた手のひらの上には、魔弾がいくつかと、小さな黒い水晶玉がのっている。


 ――んん。


 タマの角が、魔石に込められた力の大きさを感じ取る。


「Aランクやわ」

「札幌ってかなりの大都市だが、それでもSじゃねえのか。都市ごとのボスの選定基準がよくわかんねえな。タマ、てめえの角なら、なんかわかるんじゃねえのか」

「なぁんも、わからん」

「肝心な時に役に立たねえ角だな」


 うっさいわ、と思うが、事実なのですねを蹴るくらいで許しておく。

 がっ、と苦悶の声をあげてこちらを睨みつけるレイジを睨み返す。


 ――実際、私はまだまだ、この角を使いこなせてへんし。


 角というか。『竜種』を、と言うべきか。

 事実ほど言われてうっとうしいものはない。

 特にそれが自分の実力に関することであれば、なおさら。


「ま、なんにせよ。今日はここで過ごすといいよぉ。もうすぐ日も暮れるしさぁ」

「そうだな。今日はそうさせてもらう。そんで、明日だが」


 テントの前で止まったヤウシから飛び降りて、レイジがハルを見上げた。


「函館までこの蜘蛛……ヤウシを貸してもらいたい。いいか?」

「ヤウシがいいって言うなら、いいよぉ」

「え」


 思わず声をあげてしまった。

 怪訝な目で見るレイジに、タマはそっぽを向いて、言い訳をする。


「いや、せっかく札幌来てんから、ちょっといろいろ見て回りたいなって思っただけや」

「見て回るつっても、雪と廃墟しかねえぞ。それに……」


 ちらりと、レイジがにこにこ笑顔のハルを見た。


「ゆっくりしていったらいいよぉ?」


 レイジは目を眇めて、首を横に振った。


「ともかく、できる限り早めに発ちたい。補給と観光を含めて明日一日使って、明後日に発つ。それでどうだ」

「……わかった。それでええよ。ヤウシ、明後日、一緒に来てくれる?」


 タマが問いかけると、イテツチグモはカチカチと顎を鳴らして肯定した。




★マ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 北海道民はこの状況なら函館目指すんじゃないかなあ? そもそもこの寒さだと普通に死ぬと思ってるから近場の食料を確保して巣ごもりしてそのまま力尽きそうだけど。
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