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第五章【悪党北海道脱出編/魔弾暴発《マジックバレット・アウトバースト》】

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6 旅路



「ボクのスキルは『狙撃術:A』だけだったんだけど、札幌の竜が『エルフ種:B』をくれたんだぁ。これがすごく便利なスキルでさぁ」


 ハルの説明は、すごく短かった。


「竜、倒せるなって思って。試してみたら、実際倒せたの」

「どういうスキルなんですか?」


 タマの疑問に、ハルがにっこり笑う。


「魔力とスピードにBランクの補正。あと、魔力を直感的に使えるよぉ」

「魔力を直感的に……? 魔法を使えるってこと?」

「とは、ちょっと違うかな。説明が難しくて」


 ハルは空を見上げて、首をかしげた。


「夜来る前に、雪原を抜けたいなぁ。移動しながら、お話ししよっか」


 レイジが同意し、そういうことになった。

 タマはワクワクしながら、ヤウシの上に飛び乗る。


 ――蜘蛛に乗るのんなんか、はじめてや!


 尋常ではない跳躍力を持つタマとは違い、レイジはハルに教えられるまま、ヤウシの足の付け根に足をかけて、器用に登る。

 両手の剣でヤウシを傷つけないよう、鞘を装着してある。


「こういうとき、手ェないと困るんだよな……。あのボケ、いつか殺してやる……」


 ぶつくさ言いながら、鞍に座った。

 イテツチグモのヤウシは一見乗りにくそうだが、真っ白な鞍が取り付けられていて、四人くらいは座って乗れるようになっている。

 ハルも慣れた様子でヤウシによじ登った。


「エルフ女。この鞍、ホムラセッコの革か」

「ハルって呼んでよぉ。ええとね、木と鉄パイプで作った鞍に、革を張り付けてあるの。これがないと寒い日に肌が鞍にくっついちゃったりして、無理やりはがすと皮膚がびりびりーってなるんよ」


 レイジは顔をしかめた。

 びりびりーってなるのを想像したのだろう。


「札幌までは、どれくらいで着く?」

「二日かなぁ。寄り道はなしで、最短だよぉ。途中、狩りはするけどねぇ」


 にっかり笑って、ハルは手綱をとった。


「ヤウシ、走って」


 カチカチと顎を鳴らして、ヤウシが走り出す。

 蜘蛛の足は八本。胴体をほとんど揺らさずに、雪上を走り出す。

 揺れはほとんどない。

 多脚ゆえに、胴体が上下に揺れず、高さが安定しているのだ。


 ――わ。はやいなぁ。足がぎょうさんあるからかなぁ。


 周囲を見回すと、真っ白な地平線や、盛り上がった丘のようなものも見えるが、真っ白だ。

 楽しそうにするタマを、レイジがイライラした目で見て、「やれやれ」とでも言わんばかりに首を振った。

 そして、ハルに向き直る。


「おい、エルフ女――ハル。札幌はどうなってるんだ? ダンジョンだったんだろ」

「街があるよぉ。でも、人はいない。ボクだけ」

「……札幌まで滅んだのか」

「うん」


 ハルは微笑んだ。


「札幌は、寒さよりもダンジョンのほうが大変だったなぁ。村が呑まれちゃって」


 タマは、手綱を握るハルを見た。

 微笑んでいて、感情は読めないが。


 ――大阪と一緒や。


 呑まれて、滅んだ。

 いま、大阪は古都の援助を受けながら、ユウギリキャンプを中心に再開拓を進めているはずだが、札幌は滅んでしまったという。

 どうしてそんな差が生まれたのか、タマにもわかる。


「インフラ系のスキル持ちがいなかったか、いても早々に死んじまったか。……あるいは、人間同士のいざこざで追放でもしちまったのか?」


 レイジが自嘲気味に「はん」と鼻を鳴らした。


「詳しく聞かせろよ、札幌ダンジョンのこと」

「ちょっと、レイジさん。失礼やで」


 タマはレイジの太ももを強めに叩いて――「いってえなボケ! パワーAで殴るな!」――ハルにおずおずと言った。


「ごめんなさい。言いたくなかったら、言わんでええですから」

「ううん、いいよぉ。でも、ごめんねぇ。ボク、そういうお話するの、すごく苦手で。とっちらかっちゃうけど、いいかなぁ」


 うなずくと、ハルはにっこり笑った。


「じゃ、まずは二年前の……天変地異のことから話すねぇ」




★マ!


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正直続刊厳しいラインなので、書籍版買ってくださるとモチベがガン上がりします!!

なにとぞよろしくお願いいたします!!

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[一言] 北海道はむしろ函館あたりに生き残りいそう。
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