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断章【よんてんご】

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くのいちとバレンタイン



 カグヤ朝廷の朝は早い。

 太陽が出ているあいだに作業を進めて、夜にかかる電力を節約するためである。

 兵士たちの多くは、割り当てられた兵士寮やプレハブで起床し、身支度を整え、食堂へ赴く。

 朝ごはんのあとは訓練か、女王の指導の下で農作業か、工兵ならば再開拓か。

 ガチガチの戦闘専業兵科は、実は少ないのだ。


 その戦闘専業兵科よりも少ない兵科が、忍者部隊であった。

 単独での行動に長け、死地からの生還率を重視して選んだ兵士たち。

 人並外れたセンスを認められた、ある意味でエリート中のエリートと言える。


「隊長!」

「わ。どうしたんですか、こんなところで」


 そんなエリートのひとり、女性忍者(くのいち)が朝もやの中でタンバに駆け寄った。

 タンバが毎朝訓練前から走り込みをおこなっていることはリサーチ済みだった。

 問題は『スピード強化:A』を持つタンバに追いつけるかどうかだったが、タンバが必ず種付け研究本部に立ち寄ると判明したため、待ち伏せていたのだ。

 四時おきで古都の南端に待ち伏せる徹底ぶりだった。

 部隊の他のくのいちに後れを取るわけにはいかないから、必死である。


「ほらぁ、今日ってバレンタインじゃないですか。うふふ、おねーさんから、チョコです!」

「え、僕に……ですか? わあ、嬉しいです!」


 目を輝かせる少年に、二十八歳のくのいちが濃いピンク色の包みを手渡した。


「チョコ(※くのいち特製亜鉛配合オトナ味)と……私のプレハブの鍵です」

「家の鍵? 他人に渡しちゃだめですよ」

「んもう、わかっているでしょう? おねーさん、今夜、とっておきの準備をして待っていますから」


 もじもじしながらネットリと告げると、タンバは申し訳なさそうに眉をへにゃっとさせた。


「ごめんなさい! 今夜はもう、先約があって」

「せ、先約……!? 馬鹿な、私が一番乗りだったはずなのに!」

「ユウギリに呼ばれているんです。バレンタインがどういうものか、教える予定でして」


 あのクソ駄竜許さねえ、とくのいちは内心で中指を立てた。

 しかし、あのだめな生命体に恋愛感情はないはずだ。

 その点は安心できる、とほっとする。

 のも、束の間。


「看守さんが晩ご飯作ってくれるそうなので、楽しみです」


 くのいちの脳裏に、おそらく同年代である眼鏡の看守が浮かぶ。

 クールな顔立ちだが、口元のほくろが色っぽい女だった。

 ふむ、とくのいちはつとめて冷静にあいづちを打って、片手を上げた。


「隊長」

「なんです?」

「今度、暗殺術を教えてください。どうしても排除しなければならない相手がいるようですので」

「だめです」


 そんなこんなで一日の訓練を終えたあと、夢破れたくのいちたちは食堂に集まっていた。

 みな、訓練前や訓練後に渾身のチョコは渡せたものの、肝心のタンバは駄竜のところに行ってしまった。

 夜の予定がぽっかり空いた、敗残兵の集会である。


「くのいち同士の牽制に気を取られすぎて、部隊外の勢力に目が届いていなかったのが敗因ね」

「そうね。タンバ隊長、けっこうファン多いもんね」

「優しいし、礼儀正しいし、かわいいし、強いし。将来有望すぎるよね」

「……ちょっとアンタ、このチョコなに入れたの? 苦いんだけど」

「マムシパウダー」

「どこで手に入れたのよ、そんな馬鹿な材料」

「ナナ卿が分けてくれたよ。あとアドバイスもくれた」

「なんて?」

「『いっそ全員で襲い掛かればいいよ』って」


 全員で「ああ……」と遠い目になる。


「タンバ隊長相手に全員で襲い掛かって、イケると思う?」

「色仕掛け込みでいけば動揺するだろうけど、最終的には逃げられそうよね」

「逃走ルート誘導して罠にハメるのはどかな」

「縄とか網とかのありがちな罠だと逃走されちゃうよね。それこそイコマ卿の粘液トラップレベルのやつじゃないと効き目なさそう」

「じゃあトリモチ系のも混ぜて……」


 チョコをつまみにビールと意見を交わして、乙女たちの夜は更けていく。

 なお、こうした『タンバ捕獲作戦』の妄想会議が作戦立案訓練にもなっていることに、彼女たちは気づいていない。



 ●



「見よ! わらわの作ったチョコじゃ! 今日はコレ食いながら夜通し鉄道すごろくゲームするんじゃ!」

「口のまわりべッたべたですけど、どれだけ試食したらそうなるんですか」

「いっぱいじゃ!」

「駄竜、テーブルを片付けなさい。晩ご飯広げますよ。……タンバ隊長、良かったんですか? わざわざバレンタインにこんなところに来なくても」

「いえ、バレンタインだから来たんですよ。身の危険を感じるので」

「……大変ですね、タンバ隊長も」




バレンタインネタ多すぎでは。

次回から五章入りたいんですが、仕事と腰痛と肩こりと確定申告(まだ終わっていない)が激ヤバなせいでストックが尽きました!

もしかすると毎日更新途切れるかもしれないくらい進捗悪いので、応援していただけると嬉しいです。

まあ応援しても途切れるものは途切れる(諦観)


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― 新着の感想 ―
[良い点] カグヤ朝廷のりんりかん(ておくれ) ・・・罠でハメる!? いやらしいですわね!! [一言] 「あれ、読んでる話合ってるよな? 女装してるし」と、 2、3回タイトルを確認しながら読み進めた…
[一言] 「タンバが必ず種付け研究本部」 タンバくんが種付研究に必ず立ち寄り……ゴクリ。 うん。リアル優先でええんやで………。
[一言] 食われて一皮剥けてしまえば何の問題もない!(キリッ!)
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