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第四章【カグヤ朝廷冬休み編/魔剣抜刀《マジックソード・ジェネレーション》】

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50 幕間 フジワラ、迫られる



 マツシタは酒豪だった。

 どれだけ飲んでも顔色一つ変えず、普段通りの調子である。


「いいお酒がこん、なに残っているな、んて」

「寮に戻ったとき、イコマくんと会ってね。増やしてもらった」

「なる、ほど」


 こくこくとウィスキーを飲み乾す。

 スタッフたちの大半はテント外だ。

 持ち込んだ鉄板で肉を焼いて、楽しそうにしている。

 寒いというのに、元気なことだ。

 フジワラもさっき少しもらったが。


 ――豚串は少々脂がこたえるねぇ。


 年齢を実感してしまう。


「マツシタくん、酒に強いのは生まれつきかね?」

「もともと、飲む方、です。……でも、『ドワーフ種』を得てからのほうが、飲め、ます」


 そうか、とうなずく。

 タフネスの増強によるものか、あるいはドワーフらしさの演出なのか。


「イコマくんが申し訳ないと言っていたよ。『竜種』は失ってしまったし、『旅路』はスキルを獲得するスキルであって、スキルの消去はできないから、と」

「謝る必要は、ない、です。そう、伝えてくだ、さい」


 マツシタは前髪を揺らした。


「『ドワーフ種』は、つらい、です。鏡を見るたび、につらくなり、ます。でも、みんなが戦った証拠、です」


 ウィスキーのグラスに、唇が触れる。


「……つらいこと、とも。生きていき、ます」


 フジワラはもう一度、そうか、とうなずいた。


「博多では、どういう予定かね。キオくんと別れのあいさつに回って、それからあとのことだが」

「おはかを、つくり、ます。みんなの、おはか、を」

「僕もいつか、参らせてもらいたい。だが、そういう意味ではなくて……その、すべてが終わったあと、なにか予定はあるのか、という意味でね」

「すべてが終わった、あと?」


 マツシタが首をかしげる。

 やはり、そこまでの予定はないらしい。


「なにをして生きていくのか、と。やはりものづくりかね」

「なにをして……」


 マツシタは前髪の奥からフジワラを見た。


「ジブン、なにして生きていった、らいいで、すか?」

「僕に聞くのかね」


 苦笑して、気づく。

 銀色の柔らかい毛に隠されてよく見えていなかったが、目がとろんとしていた。

 机の上には年代物のスコッチ・ウィスキーの瓶が十本以上並んでいる。


 ――酔っているのか。


「マツシタくん。今日はもう寝たまえ」

「フジワラさん。ジブン、なにして生きたら、いいで、すか」

「酔っているだろう。明日出発なのだから、早めに休んだほうがいい」

「フジワラさん、は。ジブンになにして生きて、欲しいです、か。ね、フジワラ、さん」

「酔うとぐいぐい来るね……!?」


 褐色の小さなドワーフは唇を尖らせた。


「生きろと言った、のに。無責任、です。生きているから、文句を言い、ます」

「む、むう。だがね、僕にきみの生き方を規定することは――」


 ぎゅ、とマツシタの小さな手がフジワラのジャケットの袖をつかんだ。


「責任、取ってくだ、さい」

「いや、あのだね、マツシタくん。そういう誤解されそうな言葉は……」


 ふと気づくと、テントの入り口から若い女性スタッフがこちらを見ていた。

 頬が真っ赤で、見るからに酔っぱらっていて、そして目を丸くしている。

 ややあってから、テントの入り口から顔を引っ込ませて、外で叫び声がした。


「みんなァー! マツシタさんが教授に『責任とれ』って迫ってるゥー!」


 フジワラはテントの天井を見上げて思った。


 ――こういうのはイコマくんの役割じゃなかったかね……?


 誤解はすぐに解けるだろう。

 だが、しばらくはこのネタでいじられるだろうな、とフジワラは思った。




★マ!


なお、恋愛感情とかではないです。


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― 新着の感想 ―
[一言] フジワラがいなかったらそのまま死んでたんだし。 ある意味、あんたのせいで生きることになったんだから、この残りの人生責任とれよは、まぁ的外れじゃないのか、なぁ? ほんとに責任とれよ展開になっ…
[一言] 若い娘(相対評価)の「責任とってください」は効くw
[一言] まぁ違うだろうなぁ。 それはそれとしてしばらく使えるネタだけど!w
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