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第四章【カグヤ朝廷冬休み編/魔剣抜刀《マジックソード・ジェネレーション》】

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47 分かち合う



 まずは鱗の確認。

 いつの間にか十枚以上に増えていた鱗は、どこかすすけた質感になっていて、触るとぽろりと抜け落ちた。

 ぎょっとしたけれど、鱗があったところにすべすべした皮膚が見えて、安堵する。

 僕の中にはもう竜はいない。

 そういう確信がある。


「それで、お兄さん。『竜種』を別のものにする、ってことしか決まってなかったけど、結局どういうスキルになったの?」


 ナナちゃんが首をかしげた。

 僕は笑って、彼女の手を取る。

 逆の手でカグヤ先輩の手も。

 とても温かくて、どうしてか、そんなことがとても嬉しい。


「急に触るなんて、お兄さん大胆なんだから。……あれ?」

「いっくん、おてて冷たいよぅ。……え?」


 ふたりが首をかしげた。


「……いっくん、なにかした?」

「なんか、不思議な感覚があったんだけど」

「僕の作った『旅路』は複合スキルで……」


 スキル名は『旅路』で、ランクはA。

 『竜種:B』と『影式:A』をもとにして作り上げた。

 その主な効果は。


「過程を省略しないスキル。経験を積み、努力を重ねれば、技術が手に着く……そういうスキルだよ」

「……え? それあたりまえじゃないの?」


 ナナちゃんがさらに首をひねった。

 うん。そう、とうぜんのことである。

 才能や努力の差はあるだろうけれど、手を伸ばせば、いつか指先が届く。

 そんなの当たり前だ。

 けれど、当たり前じゃないと思わされていた。

 カグヤ先輩はなにかに気づいたのか、目も口も丸くして僕を見た。


「いっくん。それ、もしかして……努力次第で、後天的にスキルを獲得できるスキル、ってこと?」


 さすがに鋭い。

 ナナちゃんもびっくり顔で固まった。


「そうです。ただ、竜王の作ったスキルシステムに乗っかっているので、現実そのまま努力が報われるスキルではないですけど。『旅路』を持つ者は、努力と才覚と経験に応じてスキルが覚醒し、成長していく。そういう仕組みです」

「……すごい! お兄さん、すごい! 努力次第で、いろんな魔法も使えるようになるんだね!」


 うん、とうなずく。

 それだけじゃない。


「『旅路』の最大の特徴は、そこじゃないんです。ふたりとも、自分のスキルを確認してみてくれる?」


 一瞬きょとんとしてから、ふたりともすぐに気づいた。


「わ――私も『旅路』持ってるんだけどっ!? ランクはBだけど、あるよ!?」

「私もあるよぅっ? どういうこと?」


 そう。

 これが『旅路』の……僕が思う人類の強み。

 みんなと一緒に歩いていけること。


「手をつないだときに、共有しました。『旅路』は魂の根底で深く縁を繋いだ相手となら、共有できるんです。もちろん、ランクや内容はそれぞれが歩んできた過程(旅路)次第ですけど」


 たとえば、僕の『旅路:A』はステータス補正が各種B相当と、各種魔法の基礎的な扱い方がぼんやりわかるとか、その程度だ。

 僕個人で見れば、弱体化していると言っていい。

 でも、僕はひとりじゃない。

 みんなと一緒に歩いていけるほうが、ずっといい。

 カグヤ先輩はしばらく呆然としてから、僕をまっすぐ見つめた。


「……ありがとう、いっくん」

「ええ。便利なスキルだから、先輩のお役にも立つと思います」

「そうじゃなくて」


 先輩は僕の手を両手で包み込んだ。


「私たちと、深くつながってくれたこと。信じてくれて、頼ってくれて、助けてくれて、助けられてくれて……私は、いっくんとそういう関係でいられることが、とっても嬉しいよぅ。だから、ありがとう、だよぅ」


 道場の窓から、白い光が差し込む。

 夜が白んできたらしい。


「だいすきだよ、いっくん」

「先輩……!」


 ぎゅ、と僕の逆の手も握りしめられた。

 ナナちゃんだ。


「私もお兄さんだいすき!」


 満面の笑みで告げられる。

 僕もまた、釣られて笑った。


「僕も、ふたりのことが……みんなのことが、だいすきだよ」




★マ!


やっとナナちゃんたちに新スキルをあげられた……!


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― 新着の感想 ―
[一言] バッドエンドルート:竜種スキルをごり押しして「魔石:竜種付与」を限界まで生産。ドラゴンになる寸前までそれを繰り返し、寿命か何かでもう死ぬって言う手前で最後の大働きをして、ドラゴンとして退治さ…
[一言] 良い話で良いスキルなのにまっ先に浮かんでしまったこと。 「体の奥底で繋がる必要は無いんでゲスな?w」
[良い点] てぇてぇ……
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