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第四章【カグヤ朝廷冬休み編/魔剣抜刀《マジックソード・ジェネレーション》】

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42 どうする会議



 掛け値なしに、ほんとうに、どうしようもなく、困ったことになった。

 ユウギリの診断結果を朝廷本部に持って帰ると、緊急会議が開かれた。

 議題はもちろん、(イコマ)の竜化について。

 会議室にはカグヤ先輩、ナナちゃん、レンカちゃん、ミワ先輩、護衛のヤカモチちゃんとアキちゃん、タンバくんがそろっている。


「いっくんがダンジョン攻略に参加できなくなるのは、困るね」


 とカグヤ先輩が眉を寄せて呟いたあと、少し笑う。


「……でも、いっくんが危険なところに行かなくて、ずっと古都で一緒にいてくれるかもしれないのは、ちょっとだけ嬉しいなって思っちゃうよぅ。女王らしくないかな」

「カグヤ先輩らしくていいと思います」

「あの、おふたり? いちゃついている場合ではありませんのよ」


 レンカちゃんが、こほん、と咳ばらいをした。


「いいですの? 『まあ三枚くらいなら大丈夫でしょう』と昨夜いっぱい楽しんだ手前、こんなことを言うのはなんですけれど。現状、イコマさまを竜王にネトラレたようなものですのよ?」

「その例え方やめない?」

「竜王許せない。ぜったい殺す」

「ナナちゃんもいきりたたないで」


 殺気が怖いんだよ。

 ただのたとえ話だから安心してほしい。


「でもネトラレってなんか興奮しますよね」

「アキちゃん? 急にどうしたの?」

「アキは出番が少ないからな。欲求不満なんだろ」


 はん、とミワ先輩が鼻を鳴らす。


「イコマがダンジョン攻略に参加できなくなるのはたしかに困るが、困るだけ(・・・・)だ。練度の高い軍隊と竜に対抗できる武器さえあれば、英雄級の戦士がいなくたって攻略は可能だろ。ウチが思うに、竜化の問題はふたつある」


 ドレッドヘアの先端をいじって、苛立たし気に言った。


「ひとつ。『竜を殺せない』って縛りが、どこまで有効なのか、だ。例えば、イコマが竜を殺すために武器を『複製』で量産する行為。これもまた『竜を害する』行為であるはずだが、これも不可能なのか? 解釈によっちゃ、ウチらと一緒にいることすら縛られるが」

「たぶん、問題ないと思います。限りなく弱体化しているとはいえ、ユウギリが古都に住んで、僕らに協力しているわけですし。いまのところは『複製』も使えています」

「そうだな。いまのところは、だ。おいイコマ、ひとつ質問するぞ」


 ミワ先輩が僕を睨みつけた。


「たとえばウチらの中のだれかが大怪我をして、医療も足りず、手持ちのスキルで対処できない場合、オマエはまた『竜種』を使うか?」

「使います」


 断言する。

 助けられるなら、使う。

 ミワ先輩がものすごく不機嫌そうに顔をしかめた。


「それだよ。それが問題だ。怪我をしたのがウチら以外であっても、オマエは使っちまう。見ず知らずの相手でも、助けられそうなら助けちまう。今後、攻略や再開拓の中で、同じような事態は必ず起こるだろう。そのたびにオマエの竜化が進行する……これがふたつめの問題。イコマ、オマエが自制心のない底抜けのお人好しだってことだ」

「……僕だって、自制心くらいはありますよ?」


 全員が半目で僕を見て、一斉にため息を吐いた。


「な、なんだよ! みんな、そんな顔で!」

「自覚あるでしょ、いっくん。焦るとあるものぜんぶ使っちゃう癖あるって。私が刺されたとき、魔石何個割ったっけ」

「ぐ。で、でもあれは仕方なかったですし……」

「お兄さん、京都で私が霧の中に取り残されたときも、みんなの制止振り切ってひとりで突っ込んできたんだよね、たしか」

「ぬ。い、いや、あれも仕方なかったから……」


 カグヤ先輩が困り顔で頬を掻いた。


「もちろん、助けてくれたのは、とっても嬉しいよぅ。一生かかっても返せない恩だし、私はいっくんのそういうところが大好き。でもね、いっくん。今回みたいな事態もあるから。ね?」

「……はい。気をつけます」


 とても心配そうな顔で言われると、ぐうの音も出ない。

 レンカちゃんが顎に指を当てた。


「ま、いまここで反省したところで、どうせイコマさまは他人のために暴走しますから、先んじて手を打つべきですわね」

「どうせってなんだ、どうせって」


 否定しきれないのが悲しい。


「いっそ、『竜種』を消してしまうのはいかがでしょうか。『複製』で得たスキルは、たしか消せるはずでは?」

「あ、なるほど! その手があったね!」


 もったいない気もするけれど、『竜種』を消し――あれ?


「消せないんだけど。なんか、弾かれるっていうか」


 ランクの問題か、あるいは『竜種』が僕に鱗として定着してしまったからか?

 わからないけれど、消せない。


「ドウマンめ。お兄さんに変な呪い残しやがって」

「さすがは呪竜ですわね」

「ほかの手段考えるしかないよぅ」


 どうしよう、とみんなで首をひねるも、なにも出てこない。

 うーん。

 会議室に少し沈黙が漂ったあと、ふとミワ先輩がレンカちゃんに声をかけた。


「そういや、フジワラ教授はいねえのか。幹部会議だってのに」

「しばらくは向こう優先でいいと伝えておりますの。昨日の今日ですもの」

「……ああ、そうだよな。わりぃ、水差した」


 教授たちも大変だろうな、と思う。

 キオのこと、トモさんのこと、パニック、暴走、自殺未遂といろいろあったけれど。


「あっちも、別に問題が解決したわけじゃねえもんな」




★マ!


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― 新着の感想 ―
[一言] 対竜種戦で無敵の盾になれるじゃーん!!! え、ダメ?
[一言] ボス戦以外参加できるならまあ……タンバくん頑張って! マコ様がチアのかっこすればいけるいけるw
感想一覧
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