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第四章【カグヤ朝廷冬休み編/魔剣抜刀《マジックソード・ジェネレーション》】

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27 難民窟の女性



 ここ数日は古都外縁の見回りに同行している僕だ。

 『複製』任務もレンカちゃんたちのがんばりのおかげで無理のない範囲に収まっているし、訓練以外に時間を使いたい気分だった。

 『竜種』の研究が頓挫してしまったから、暇になったともいう。

 竜になってしまうリスクは、さすがに負えない。

 鱗みたいなしこりは太ももに残っている。

 太い血管に近いから、物理的な切除を試みるわけにもいかなくて、目下経過観察中……もとい放置中。


 外縁のキャンプを歩いて回り、朝廷の用意したテント村への移住を勧めたり、いさかいを解決したり、探し人の名前を名簿とにらめっこしたりと、毎日そんな感じだ。

 ナナちゃんは道場で訓練したいらしく、珍しく別行動が多い。

 遠征中は四六時中一緒にいるし、古都にいるときくらいはね。

 カグヤ先輩、レンカちゃん、ミワ先輩は公務があって、ヤカモチちゃんとアキちゃんは護衛任務。

 フジワラ教授は魔道具と魔力の研究に忙しくしていて、マツシタさんも一緒だとか。

 そういうわけで。


「今日も一緒にがんばろうね、タンバくんっ」


 足を内またに締め、両手を胸の前でぎゅっと握ってミックスボイスで話しかけると、見回り部隊長のタンバくんがすっと目を閉じた。


「イコマさん。揃いの制服で来てくださいと言ったはずですが」

「え? これちゃんと制服だよ?」

「男性用の、です。どうしてわざわざ女性用を……」


 軍服ワンピースマコさまがお気に召さないらしい。

 ただ、これにはちゃんと理由があるのだ。


「男性用、洗濯中で。でも、替えがあるわけでもないからさ。ほら、女性用を着ても仕方ないでしょ?」

「汚れていてもBランク相当のきれいな状態のものが『複製』できるはずでは?」


 ひゅう、と崩れた建造物のあいだを寒い風が吹きぬけた。

 二月は寒いね。

 ストッキングがあったかいや。


「……さ! 見回りいこっか!」

「ごまかしすらしないのですね!?」

「わかったよ、じゃあちゃんと言えばいいんだね? 僕は女装趣味の変態です! タンバくんに言えって言われたから叫びますけど、僕は女装趣味の変態です! 女の子の格好をして興奮しています! これでいいのかな、タンバくん!」

「ウワァーッ! 最低だこのひと! く、くそう、でも見た目がマコさんだから強くツッコめない……!」


 部隊員たちが半笑いでタンバくんの脇腹をつつく――寸前で避けられた。

 なんで目を閉じているのにわかるんだろうね。


「隊長、毎日無駄なやり取りしてないで、開き直ってガン見すればいいのに。もう性癖手遅れなんだし」「隊長、わたしたちくのいち班のこともガン見していいのよ? お姉さんたちいつでもOKだから」「隊長、中学生でこのモテ方はずるいっす」


 ……巨乳のお姉さんがいっぱいいる班については、あとで根掘り葉掘り聞こう。

 僕もそれなりに羨ましがられる立場にいるから、あえて羨ましいとは言わないぞ。

 襲われても逃げられないのが困りどころだけれど。


「で、タンバくん。そろそろ真面目に見回り始めようか。今日はどこを回る?」

「真面目にやっているんですよ、僕は。むしろ僕こそが真面目なんですよ」


 ぶつくさ言いつつ、タンバくんが懐からばさりと地図を出した。

 カグヤ朝廷謹製の再開拓地図だ。

 『ここはビルが崩れていて危ない』とか『この辺はたまにウィップヒップ(サル)が出る』とか、そういう注意書きがされている、便利な一枚である。

 覗き込むと、タンバくんらしいきちっとした丁寧な字で、外縁には難民たちのたまり場や隠れテントの情報が書き加えられている。

 タンバくんは、その情報の一部に指を突き立てた。


「今日はホームセンター近くの難民窟に行きます。最近、西から新しい難民団が到着して、朝廷の仮設テントに入居したのですが、そのうちの数名が『一緒に来たはずの女性がいない』と証言しておりまして」

「え? 仮設テントにいないの? 一回入居したのに?」

「はい。おそらく、ただ朝廷の生活が合わなかっただけだろうとは思うのですが」


 タンバくんがうなずき、部隊にだけ聞こえるよう、声を潜めた。


「証言してくれた方いわく、その女性、下関海峡を越えて来たそうです」

「下関を……」


 部隊員のひとりが首をかしげた。


「……下関ってどこだ?」「馬鹿、海峡なんだから淡路島に決まってんだろ」「違うわよ、下関は北海道と青森を繋ぐところでしょ」「おまえら小学校からやり直せよ。南アメリカと南極のあいだの海峡だぞ」


 ぜんぶ違う。

 明石海峡と津軽海峡とドレーク海峡だよ。

 むしろなんでドレーク海峡はわかって下関はわからないんだ。

 タンバくんが呆れ顔で訂正する。


「山口と福岡を繋ぐ……つまり、本州と九州を繋ぐ海峡です」


 そう、それが正解。

 つまり、その女性は……。

 はっとしてタンバくんを見ると、少年はうなずいた。


「福岡、博多ダンジョン方面から来た可能性があります。いちおう、チェックしておくべきかと思います」




★マ!


最近リリースされた某TCGのデジタル版に手を出したら毎日更新なんかできなくなるってわかっていたのに手を出してしまいました。

もうダメです。カード拾ってくる。



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― 新着の感想 ―
[一言] イコマくんもタンバくんも羨ましい()
[一言] デジタルではカードは拾ってきたができない…… 竜種になるのが怖いなら竜種にはならないゾ!って竜種の力を使えば竜種?(ゲシュタルト崩壊からの脳みそ崩壊)
[一言] 普通に犯罪に巻き込まれてるんじゃなかったっぽい? 女性だからてっきり……。
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