24 幕間 フジワラ、プロジェクト開始
朝廷本部の芝生に、大型のテントが仮設されている。
テントの入り口には『魔力・魔道具の運用によるエネルギー問題解決を目指す研究本部』と記された木製看板が釣り下がっており、スタッフでごった返していた。
中央の机には、フジワラが座っている。
手にはCランクの魔石を持ち、対面には銀髪褐色肌のマツシタがちょこんと腰かけていた。
「レンカくんからもらい受けた。まずはこれを用いて『魔力から電力を生み出す魔道具』を作成してもらいたい」
「いいのです、か? 発電機としては、あまり……」
「研究の前提段階として、魔道具がどのようなものか見ておきたい。それに、魔力測定器としても扱えるだろう?」
首をかしげるマツシタに、フジワラは苦笑した。
「いつまでも、キオくんの魔剣を借り続けるわけにはいかないさ」
なるほど、とマツシタがうなずいた。
「では、魔石と……鉄と銅と、電池などがあれば嬉しい、です」
「電池?」
「雷の属性を、付与し、ます。……いえ、魔石の方向性を決め、ると言ったほうが、正しいでしょう、か」
「ふむ。不定形の魔力に指向性を与える……といった解釈であっているかね」
マツシタがこくんと首を縦に振る。
「おそらく、そう、です。……ごめんな、さい。詳しい理屈は、わからない、です。ただ、必要なものがわかるだけ、で……」
――なるほど。スキルの弊害だな。
『できる』ことは『できる』のだ。
そこに理屈はない。
過程を省略して結果だけを手にするものがスキルならば、省略された過程で手に入れる『試行錯誤』や『理論』などは棄却されてしまう。
「では、イコマくんが大量に複製した野外活動用の大型蓄電池を流用しようか」
手元のメモに必要なものを書き出していく。
蓄電池、鉄、銅、さらに一通りの工具など。
「あとは、そうだな。本格的な魔道具作成だし、作業場などは必要かね? いちおう、このテントの一画は空けてあるが、不十分ならば別途用意しよう」
「いえ。広さは十分、です。あと、鉄と銅は……できれば、薄板でいただきたい、です」
「……わかった」
――イコマくんの推測が正しければ、トラウマの元となった行為はキオくんの製造そのもの。
陶器と鉄と歯車で形作られたあの体。
ダンジョン内でどうやって槌と炎を用意したのかはさだかではないが、マツシタ本人が鍛冶によって作ったのは間違いない。
――鍛冶が必要な行為からは、極力遠ざけるしかなかろう。
あるいは、ものづくりそのものから遠ざけるべきかもしれないが、手元作業は没頭するのは
「薄い鉄板、銅板、ミリ指定はあるかね?」
「指定できるので、すか?」
「古都郊外のホームセンターから金属板は発掘済みだ。各種揃っているとも」
つい、とマツシタが顎を上げた。
「ホムセン、あるのです、か?」
反応がいい。
――ホームセンターが好きなのか。
そういえば、二年前にはDIY女子なるものが流行った時期もあったような気がする。
「魔力測定器が完成し、魔力測定待ちの行列が落ち着いたら、見に行くとするか。素材を見ることで出てくるアイデアもあるだろう」
マツシタは心なし嬉しそうに、こくん、とうなずいた。
★マ!




