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第四章【カグヤ朝廷冬休み編/魔剣抜刀《マジックソード・ジェネレーション》】

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17 粘幻魔法



「で、出来上がったのがこちらのスキルになります」

「三分で料理するみたいなノリでスキル合成しちゃったよぅ」


 カグヤ先輩が呆れ顔で山盛りのごはんに箸を差し込んだ。

 ちょうど晩ごはんの時間になったので、汗だくでへろへろのナナちゃんとヤカモチちゃんを担いで、道場からカグヤ朝廷本部の宿舎に戻ったのだ。

 訓練に没頭しすぎたなかよし二人組を簡易シャワー室に放り込んで、僕はお先に幹部屋敷の食堂にやってきた。

 通電式のカンテラで照らされた食堂内は、夜でも明るい。

 ちょっと前までは野外でキャンプ食堂だったけれど、さすがに寒さが堪えるのだ。

 いつまでもテント暮らしは無理があるね、やはり。


「で、スキル合成ってなにをどう合成したの? 『傷舐め』と『粘液魔法』を合体させたとか? よく組み合わせて使っていたよね?」

「いえ、まずは『粘液魔法』と『幻覚魔法』を合成しました」


 おかずの照り焼きチキンを白米にワンバウンドさせてほおばる。

 うむ、とてもうまい。

 ある学校村が、繁殖に成功していた鶏ごと移住してきたのだ。

 卵も鶏肉もいただけて大助かりである。


「魔法繋がりだよぅ」

「そういうことです。カッコいい名前を付けようとしたらナナちゃんに止められたので、シンプルに『粘幻魔法』と名付けました。ランクはBで、効果は『粘液魔法と幻覚魔法の二種類を使える』です」

「……合体させたのに、効果が変わってないね。スロットを開けるのが目的?」


 照り焼きチキンを嚙みながらうなずく。


「あと、はじめての試みだったので、失敗が怖くて。まずは当たり障りなく、そのまま合体を試してみました」

「どう? なにかわかったこととか、ある?」


 いつの間にか空になった茶碗に白米を追加するカグヤ先輩に、声を潜める。

 この場所には僕らしかいないけれど、なんとなく大きな声で言う気になれなかったのだ。


「……たぶんですけど、Bランクの『竜種』で他人のスキルをどうこうするのは難しいと思います」

「てことは、マツシタさんの『ドワーフ種』を消去するのは……」


 首を横に振って応じると、先輩は大きなため息を白米の上に落とした。


「あの堕竜、またてきとうなことを言ったんだよぅ」

「いえ、まあ……アレはもともとSランク相当で、しかも竜ですから。想像力そのものでできている竜と、肉と骨で出できた僕らじゃ、前提が違うんだと思います」


 かばうわけではないけれど、スキルを合成して感覚的にわかった。

 少なくとも、Bランクでは不可能だ。

 Aランクでもできるかどうかわからない。


「他人の中にあるスキルに触れるなんて、どうしようもないですよ。相手の魂に触るようなモノです」


 瞑想で済む自己とはわけが違う。

 魂レベルで深く通じ合い、理解し合い、リソースを共有し合う。

 そんな関係でもなければ、まず無理だと思う。


「マツシタさんには、言うの?」

「はい。……いえ、まずはえちち屋ちゃんに相談してからですけど」

「それがいいよぅ。あ、フジワラ教授にも相談するといいかも」

「え、教授ですか? たしかにどこか、対応が手慣れているようでしたけど」


 専門は古典じゃなかったっけ。

 すると、カグヤ先輩はもりもり動いていた箸を止めて、ちょっと悲しそうな微笑みを浮かべた。


「そっか、いっくんは知らないか。教授の奥さんもね、トラウマの発作を抱えていたんだって」

「……奥さんが?」


 教授の顔と指輪を思い出す。

 丁重に弔ったと言っていた。


「ずいぶん長い間、奥さんと二人暮らしだったそうだし、通院にも付き添っていたらしいから、いろいろ知識もあるんだと思うよぅ」


 カグヤ先輩はちょっと長めの瞬きをして、またもりもりと箸を動かし始めた。


「それで、今後の『竜種』研究とか、空いたスロットとかはどうするの?」

「『複製』と『竜種』は変更できそうにないので、『傷舐め』ベースで治癒系スキルの利便性向上に挑もうかなと。ただ、その前に――ひとつ、どうしても複製したいスキルがあるので、そのお願いに行くつもりです」




★マ!


年始にぶっ倒れていた関係でマジでストックが追い付かない……!!

でも毎日更新頑張るので★やブクマや書籍の予約やタグ付きツイートで応援してくれたら嬉しくて粘液が出ます(どこから?)



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― 新着の感想 ―
[一言] どんなエロティックスキルを合成する気なんやw そういや、違うランク混ぜたらどうなるか。 確か今は複製すればランク上がるんだったから試せはしないか。
[一言] スキル合成するなら常時空きスロ3つは欲しい……
感想一覧
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