13 魔剣鑑賞
「では、まずは種族スキル……『ドワーフ種』の実演をし、ます」
マツシタさんが、ポケットから小さな木材を取り出した。
幼児用の積み木みたいなものだ。
それから、手のひらサイズのナイフも。
「これを、こうし、ます」
そして、ナイフで木材を削り始めた。
十秒くらいで手のひらサイズのナナちゃん人形が出来上がる。
「……ん?」
首をかしげる。あれ、目の錯覚かな?
ナナちゃんもえちち屋ちゃんもフジワラ教授も、「んん?」みたいな顔で首をひねっている。
ほんの十秒で、薙刀を持った少女の木製人形が……できた……?
「これが、ドワーフ、です。ものづくりに対する補正があり、ます」
マツシタさんが道場の畳にナナちゃん人形を置いた。
そのまま、畳に落ちた木くずを手で拾い始める。
実演は終わり、ということらしい。
「……たまげたな。種族スキルによる補正、これほどのものとは。ほかにはどんなものが作れるのかね?」
フジワラ教授の疑問に、マツシタさんが目を泳がせる。
ごみを拾いきって、無造作にポケットに木くずを突っ込んでから、言った。
「あと、魔剣や魔道具を作れ、ます。……キオ、魔剣を出してくだ、さい」
ぬるり、とマツシタさんの影から木と鉄の腕が伸びあがって、例の真っ赤な魔剣を畳に置いた。
急だったのでびっくりした。
……あの影のスキル、便利だな。あとで複製させてもらおうかな。
「ありが、とう」
マツシタさんの礼に応じるように、ざりざりと錆びついた音を立てて、腕が影に引っ込んだ。
ふと見れば、フジワラ教授が目を白黒させている。
そっか、見るのはじめてだもんね。
「……いやはや。不思議なことには慣れているつもりだが、まだまだたくさんあるものだね。いまの人形も、マツシタくんの作品なのかね」
「作、品? 違います、キオはジブンの……」
言葉の途中で、マツシタさんが胸を押さえた。
呼吸が荒い。ナナちゃんが慌てて立ち上がりかけたけれど、それより早く、フジワラ教授がすっと頭を下げた。
「いや、すまない。僕の発言がよくなかったようだね。キオくんは作品などではなく、もっと大切なものなのだね。配慮が足りず、失礼した」
マツシタさんが目を丸くして、頭を下げたフジワラ教授をおずおずと見た。
呼吸はましになっている。
急に教授が頭を下げたから、そっちにびっくりしたのだろう。
「……はい。いえ、こちらこそ、慌ててしまって、すみま、せん」
「謝ることはないとも。特に、譲れないものがあるときは」
教授が僕に目配せをした。
これはあれだな。話の流れを変えろ、というやつだな。
「それじゃ、マツシタさん。魔剣を見せていただきますね!」
努めて明るく言って、畳に置かれた魔剣を手に取る。
剣としては異形。奇妙に捻じれた刀身は、まるで爬虫類のよう。
実用性よりもロマンを追い求めた見た目というか、いかにも『魔剣』といった風情。
柄を握って、その重さに驚く。
これ、僕でも振り回せるか怪しいぞ。
両手で持って、なんとかいける程度。
……まあ、二メートル越えのキオのサイズの武器だから、当たり前か。
「魔力を通せば、炎と熱が出ます。原材料は、魔石と……鉄など、です」
ちょっと失礼して、少しだけ魔力を通す。
刀身が真っ赤に輝いて、ぶわり、と高温が発生した。
うわ。顔が熱い。
慌てて魔力を切る。
これ、使う側が耐火性能ないと使えないんじゃないか?
……あ、そっか。だからキオの武器なのか。
写真を撮りたがるナナちゃんに魔剣を渡して、マツシタさんに向き直る。
「すごいですね! 僕も『竜種』の特殊能力が扱えるはずなんですけど、ぜんぜんうまくいかなくって。参考までに聞きたいんですけれど、魔剣を作るって、どういう工程なんですか? どういう原理で、どういう理屈で成立する技術なんでしょうか」
「げ、原理? 理屈です、か……?」
マツシタさんは困ったように眉を寄せて、首をかしげた。
「でも、ドワーフって、そもそもそういうものです、よね? 理屈とかあるの、ですか?」
★マ!




