6 ドワーフ
土色の肌に銀色の髪。
そして――尖った耳。
「マツシタ、です」
小さな声で自己紹介するその女性は、えちち屋ちゃん以上に身長が低い。
「信じられないかもしれません、が……ドワーフ、です」
手早くシャワーを浴びて応接室にやってきた僕とナナちゃんは、マツシタさんを一目見て――大変失礼ながら――絶句した。
えちち屋ちゃんから「どうしても合わせたい人がいるから連れて来た」とは聞いていたけれど、まさかその、ドワーフだなんて。
「ど、どわーふ……って、あの、土の精霊的な……?」
ナナちゃんのおそるおそるの質問に、マツシタさんはこくんとうなずく。
「そういうスキル、です。『ドワーフ:B』という、スキル、です」
話すのがあまり得意ではないらしい。
しかし、そうか。
元からドワーフだったわけではなく、スキルとして後天的に獲得したのか。
そんなケースはラジオでも聞いたことがなかった。
もしかすると、最近なんらかの要因で得たスキルなのかもしれない。
えちち屋ちゃんが、僕に目配せした。
「マツシタさまは、ゆえあって博多から聖ヤマ女村にいらっしゃいましたが、ケースがケースですので、朝廷での療養をおすすめしました」
聖ヤマ女村。療養。
それらの言葉に、はっとする。
わざわざ九州福岡は博多から聖ヤマ女村に来たのだ。
おそらく、トラウマが……それも特大のなにかがあるのだろう。
古都ドウマンに連れて来たあたりから見て、男性トラブルではないと思うけれど……。
「わかった。レンカちゃんには?」
「もう話は通してあります。しかし、種族スキルを持つものはマツシタさまがはじめてではありませんから、イコマさまにもご説明を、と」
「……はじめてではない? だれかいたっけ?」
「タマコちゃんだよ。あと、お兄さんもでしょ」
ナナちゃんの呆れたような言葉に、ああ、と得心する。
「そっか。僕の『竜種』も種族スキルか」
何気なくそう呟いて、そして、後悔した。
『竜種』という単語を聞いた瞬間に、マツシタさんが目を見張って、喉を引き裂かんとばかりに叫んだのだ。
「だめ、キオ、止まって……!」
ずるり、と。
ソファに座ったマツシタさんの足元、彼女の影から、なにかが立ち上がった。
引きずり出されるように現れたのは、二メートルを超える巨体のヒト型。
陶器と鉄と歯車で形作られたシルエットに、色鮮やかな着物の残骸がまとわりついている。
きりきり音を立てて動く球体関節は細くしなやかで、美しさすら感じる。
けれど、右腕には溶岩のように赤く発光する、捻じれた異形の大剣が接続されており、人形全体に奇妙なアンバランスさを醸し出していた。
そう、これは。
「――からくり人形!?」
どこから現れたかも不明な人形が、がこん、と顎を開いた。
『りゅりゅりゅ、りゅう……! ここ、ころ、す……!』
複数の音色が混ざった、ざらざらに錆びついた声で人形が叫ぶ。
まるで人間みたいに。
そして、人形は右腕を振るった。
接続された異形の大剣を――僕めがけて。
「お兄さんッ!」
★マ!
毎日更新だと後書きでネタをやる余裕がない……。




