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第四章【カグヤ朝廷冬休み編/魔剣抜刀《マジックソード・ジェネレーション》】

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5 技術



 翌日、僕は兵部が新設した道場で床に転がっていた。

 というか、転がされていた。

 ぜえはあと荒い息をする僕に、いかめしい顔つきの老人が鋭い視線を向けた。


「技術のおぼえはいい。筋もいい。だが小器用さに頼りすぎるな」


 老人――クキさんが兵部の特別指導役になってから、訓練がてら体術の指導をしてもらっているのだけれど、もうマジで強い。

 一本も取れないまま、床を転がされ続けている。

 一緒に訓練しているヤカモチちゃんやナナちゃんも、壁に寄りかかって荒い息だ。


「頼りすぎるな、ですか。うーん……」


 正直、自覚はある。

 いつだって小手先頼りで戦ってきた人間だ。


「イコマ。おまえには『幻覚』と『粘液』の魔法系スキル二種に加えて『複製』もある。小手先の工夫が先に立つのは、よくわかる」

「え、まあ、僕の強みって結局そこですし……」


 首をかしげる僕に、クキさんが溜息を吐いた。


「和歌山でタンバが儂に勝った方法、わかるか?」


 ……そういえば、タンバくんはクキさんに一回勝ったんだっけ。

 ダンジョン挑戦を認めさせるために、立ち合いをして。

 どうやって勝ったのかは、そりゃスピードを生かして立ち回ったんだろう、とは思うけれど。

 しかし、それが答えだとは思えない。

 むむう、と唸る僕に、クキさんが再度溜息を吐いた。


「むずかしく考えすぎだな」


 クキさんが身をかがめて僕の道着の袖を掴み、引っ張った。

 次の瞬間、僕はものすごい勢いで立ち上がっていた。

 うおう。

 驚いてクキさんを見ると、鋭い視線とばっちり目があった。


「わかったか?」

「……これ、合気道の応用ですか? それとも柔術?」

「違う」


 クキさんは即座に否定した。


「筋肉だ。『タフネス強化:B』を得て以来、筋トレは欠かしていない」

「き、筋トレ……」

「タンバは単純な速度で儂に勝った。背後を取ることだけに特化した立ち回りでな。当たり前だ。そうでなければ儂は負けん」


 つまり……僕は難しく考えすぎたらしい。


「おまえは全種のステータス強化を持っている。力や速度で攻めるべき場面で、わざわざ小手先を持ち出す必要はない」

「……でも、それは……スキル頼りは、ちょっと卑怯な気が……」

「スキルがなければ、儂は両足で立っておらん。儂がこうして動き回るのも卑怯か」


 む、むう。

 答えられなくなって目を泳がすと、クキさんが小さく笑った。


「使えるものを使う。それが技術の本質だ。竜に与えられたモノが気に食わない気持ちもわかるが、人類にそんなことを考える余裕はないだろう」


 まったくもって正論である。

 人類が生存圏を取り戻すためには、使えるものはなんでも使わなければならないのだ。

 そこに好き嫌いの入り込む余地はない。


「……そうですね。スペックゴリ押しでいけるところは、それでいきます」

「そうしろ。……それと、悩み事があるならば、だれかに話して解決するのがいいだろう。今日は珍しく気が散っていたようだ」

「あ、わかりますか」


 えへへ、と思わず誤魔化し笑いが漏れる。

 そうなのだ。

 昨日、フジワラ教授から引退の話を聞いて以来、ずっともやもやしている。

 『なにかできることはないだろうか』とか『いやでも本人が決めたことだしな』とか、そういう考えが後頭部でずっとちらついて離れないのだ。


「おまえの最大の強みは、数多くの仲間に支えられているところだろう。強みは活かせ。ありとあらゆる場面でな」


 素直に「はい」とうなずいたところで、クキさんが顔を道場の入り口に向けた。


「今日はここまで。おまえに客だ」


 僕もつられて視線を向けると、意外なひとが立っていた。

 僕より六つ年上のお姉さん……にして、見た目は中学生くらいにしか見えない合法ロリメイド先生が、そこにいた。


「わ、えちち屋ちゃんっ?」

「ご無沙汰しております。本日は所用あってまいりました……イコマおにーちゃん♥」


 優雅に頭を下げて、えちち屋ちゃんはいたずらっぽく微笑んだ。




★マ!

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― 新着の感想 ―
[一言] クキさん『タフネス強化:B』じゃなかったっけ。 CからBに進化したっけ。 やばいわすれちゃったよぉ。><
[一言] 将軍修行中……ハアハアしながら誰か見学してそうw
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