16 治療日
今日はナナちゃんの回復に努め、明日は移動準備のために丸一日使う。
合計二日の時間をおいて、僕とナナちゃんは明後日から旧・聖ヤマト女子高等学校集落――聖ヤマ女村への移動を開始すると決めた。
ナナちゃんの親友、ギャングウルフに大けがを負わされ、おそらく現在も治療中であろうヤカモチちゃん(いかつい名前だな)に『傷舐め』を施すことだ。
巨大な傷を一日でふさぎ、快方に傾かせた僕のスキルを、どうか友達のために使ってほしいと懇願されたのである。
聖ヤマ女村は男子禁制だが、治療のための人員であれば男性排斥運動過激派の生徒会長も納得してくれるだろうとナナちゃんは考えているらしい。
ヤカモチちゃんが傷を受けてからすでに四日が経過している。
正直、手遅れなんじゃないかと思ったけれど、ナナちゃんは僕の考えを見透かしたように笑った。
「聖ヤマ女村には『医療』持ちがいるからそう簡単には死なせてくれないし、それに――ヤカモチも無敵の女子高生だから。
ぜったい生きてるよ」
友達を信じているのだ。
眩しいくらい、まっすぐに。
僕の行動で人命が助かるならばやるにこしたことはないし、そろそろ村での物資補給もしたかった頃合いである。
近隣のほかの村に行くのはA大村との交流に問題が生じるかもしれないと思って控えていたけれど、没交渉で閉鎖的な独立集落である聖ヤマ女村ならば問題ないだろう。
ナナちゃんがすぐに出発したいと言い張るのは、さすがに止めた。
「表面の傷は治ってるけど、内部の打撲傷や失血までは補えない。
ちゃんと治してからじゃないと、道中でなにかあると困るよ?」
「大丈夫だよ、このくらいなんともな――あひぃん……ッ!?」
生意気な脇腹を突いてやると、ぷるぷるしながらうずくまった。
「さっきまでなんともなかったのに!」
「『傷舐め』は鎮痛効果もあるから。
舐めてないときはそんなもんだよ。
わかったら、まずは自分がしっかり休まなきゃ。
ヤカモチちゃんのおなかをぺろぺろしに行くのはそのあと」
「すごい、正しいことを言っているのに最後の一行で変態にしか聞こえない」
やかましい。治療行為だから仕方ないだろうが。
「ちなみに全然関係ないんだけど、そのヤカモチちゃんって子は褐色ギャルなのかな?
それとも純白の白ギャルなのかな?
治療に必要な情報だから早めに教えてくれると助かるなぁ」
「…………」
「無言は怖いよ!?」
僕を軽く睨みつけつつ、ナナちゃんはおなかのタオルをそっと捲り上げた。
白い肌ときれいな形のいいおへそ、そして肉の盛り上がった痛々しい三筋の傷跡が露出する。
え、なに急に。びっくりするんだけど。
「……今日で治しきるんでしょ。
馬鹿言ってないで、はやく舐めて」
「え? い、いいの?」
「いいも悪いも、それ以外に方法ないんだから、仕方ないでしょ。
今日だけは変態お兄さんに舐めさせてあげる」
「……わかった。
じゃあ、遠慮なくぺろぺろさせてもらうよ」
「そのぺろぺろって言い方やめない?」
ともあれ、実際問題。
体を治すという行為は、かなりの体力を消費する。
『タフネス:C』持ちだから体力はあるだろうけれど、それでもナナちゃんの細い体には耐えがたいほどの疲労がのしかかっているはず。
傷が治っても、体力が戻らないと移動を開始できない。
「寝てていいよ。少しでも体力を回復してもらわないと」
「ん。――私が寝てる間に、変なことしちゃだめだよ、お兄さん」
「しないよ。ただ普通にぺろぺろするだけだよ」
「もう十分変なことしてたね、手遅れか。
お兄さんも、ぺろぺろされてる私も。
どうやって責任取ってもらおっかなー」
怖いことを言うナナちゃんのおなかに舌を伸ばす。
くすぐったそうにしていたナナちゃんだけど――舐めるたびに「ひぅん」とか言うのはドキドキするからやめてほしい――少しすると穏やかな寝息を立て始めた。
僕は休憩や食事をはさみつつ、ナナちゃんのおなかを舐めまわした。
そして翌朝、ナナちゃんのおなかは最初から傷跡なんてなかったかのように、白磁のような滑らかな肌を取り戻したのである。
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ていう、真面目な後書き。




