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第三章【京都ダンジョン遠征編+古都ドウマン模擬戦争編/ニンジャ・ヒーロー・コンプレックス】

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34 閑話【模擬戦争】 レンカ、めっちゃ慌てる



 レンカは思う。地球は、否応なく変わっていくものだと。

 太政大臣の立ち位置は、女王が座る舞台の一段下。

 戦争には不参加だが、見届ける立場として、ここにいる。


「――カグヤ様。二百メートルのところに、クキ様が現れたそうですの」

「予想通り、だね」

「ええ。そして、予定通りですの。控えていた近衛部隊がクキ様に対応いたします。それで、この模擬戦争は終わりになるでしょう」


 実力、練度、忠誠心。必要なものすべてが揃った精鋭揃いだ。

 武人と見受けられる老人が相手だが、老人に対応させた親衛隊の数は八名。多勢に無勢というやつだ。

 親衛隊最後のひとり、隊長のヤカモチはカグヤのそばに控えている。


 ――護衛を最低でも一人残す必要がありますものね。


 つまり、ほぼ全戦力が戦場に出たことになる。

 女王が落ち着きなく椅子を揺らして、心配そうな顔でレンカを見た。


「朱雀大路のほうは?」

「防衛兵団二百名で抑えきれる、との見立てです。問題ございませんわ」

「そうじゃなくて、けが人とか。大丈夫なのかな」


 言われて、レンカは思わず笑ってしまった。

 そういうひとだから、イコマがだれよりも慕い、自分たちも彼女こそが女王だと認めているのだ。

 体を回して、カグヤに向き直る。


「ご安心ください、カグヤ様。救護テントにて、敵味方関係なく手当てをおこなっておりますの。骨折や打撲はあるでしょうけれど、朝廷の誇りにかけてしっかり治療しますわ」

「……ありがとね、レンカちゃん」


 女王からお褒めのお言葉だ。レンカは一礼し、居住まいを正した。


「加えて、クキ様を制圧し、捕縛完了すれば、向こうの士気も続かないでしょう。そうなれば、これ以上のけが人も出てこないはずですわ」


 一息入れる。


「つまり、すでに勝ち確ですの。親衛隊がすぐにでも勝利の勝鬨を上げてくれることでしょう。間違いございませんの」


 自信たっぷりに言うと、カグヤが微妙な顔になった。


「……なんですの?」

「レンカちゃん、それ、死亡フラグじゃない?」

「言われてみればそうですわね。でもご安心くださいな、現実では想定外の大逆転なんてそうそう起こるものでは――」


 言葉の途中で、物見やぐらの上からミワが叫んだ。


「親衛隊八名、全員敗北! やべえぞレンカ、あの爺さんクソ強ェ! 素手で全員叩き伏せやがった!」


 レンカは真顔でカグヤを見た。


「――ありましたわね。どうしましょう」

「どうしましょうじゃないよぅ! 私の風船割られたら負けなんだからね……ッ?」


 とはいえ、だ。

 八名で抑えきれないのであれば、もっと数を送り込めばいいだけの話。

 本陣には、模擬戦争不参加の兵が五百名以上控えている。

 現実的なラインで勝負が成立するよう、あえて戦線に出さなかったものたちだ。


 ――出せば勝てますけれど、それはちょっと、いい勝ち方ではありませんわね。


 相手は『朱雀大路を二百メートルと定義する』形で攻略を挑んできた。正直、反則だと言い募れば反則にできる。

 こちらが不参加の兵士を使ってもいいシチュエーションではある。

 だが、この局面で慌てて控えを出すのは、かなり外聞が悪い。


 ――イコマ様かナナがいれば、どちらかを出して一騎討ち形式にできましたのに。


 それならば、かなり見た目のいい決着になる。

 だが、いまはいない。

 というか、英雄級を出していいのであれば、向こうもタンバを出しただろう。


 ――悩みどころですが、ここは勝利を優先すべきでしょうか


 レンカは物見やぐらに向かって呼びかける。


「ミワ様、控えの兵を――」

「レンカっち。それはまだ早いし」


 遮ったのは、目を閉じていたヤカモチだ。

 寝ていたのかと思っていたが、起きていたらしい。


「親衛隊なら、まだひとり残っているんだし」

「……ですが、相手はおそらく準英雄級ですわよ?」

「生徒会長のくせに、大事なことをふたつ忘れてる」


 ヤカモチは立ち上がり、傍らに置いてある棒を手に取った。

 くるりと回して、肩に担ぐ。


「ひとつ。アタシ、これでもいちおうナナと同じ筆頭騎士だったんだからね」

「ですが、それはナナのスキルがランクアップするまでの話で――」

「ふたつ。いい? レンカっち。アタシはね」


 ヤカモチはにかっと笑った。


「たとえスキルがあろうがなかろうが、無敵の女子高生なんだし」




オタク、爺はたいてい強キャラにしてしまう説。

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― 新着の感想 ―
[一言] 強い爺はロマン。
[一言] 頑固な爺は大体強キャラ。ただし味方になると弱体化したり伸びしろがなかったりするw
[一言] いつかはみんなジジババになるんだよ。 未来には希望があるんだ! (その過程で魔法使いにもなれるしな。)
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