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第三章【京都ダンジョン遠征編+古都ドウマン模擬戦争編/ニンジャ・ヒーロー・コンプレックス】

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31 閑話【模擬戦争】 『日記』さん、吠える



 コードネーム『日記』にとって、攻略派兵から外されたのは、想定外だった。


「おれ、古都奪還戦争でもマコ様と工事とかやっていたから、そっちかなって思っていたんだけれども」


 見放されたのかと、そう感じた。

 派兵団の選抜が終わったその日、食堂で仲間に愚痴ると、兵士たちは笑った。


「そりゃおまえ、家畜化ラボの研究員が古都を離れられるわけねえだろ。だいたい、おまえのスキル、建築系だけじゃねえか。遠征派兵は歩きで、実質的には体力勝負なんだから、最低でもCランクのタフネスねえときついって」


 言われれば、納得だ。

 そして、ありがたいことに自由騎士卿イコマは出発前、古都ドウマンに残って防衛するものたちに、こんな言葉を残してくれた。


「僕はこの街が大好きで、これからもっと大好きになれる街だと思うので、だから、お願いしますね」


 ――ああ。そうだよな。


 わかっている。自分たちで取り戻し、自分たちで未来を夢見て、再開拓を――再び街を開き、人々の生活を拓くために、一生懸命やってきた街なのだ。

 その一環が、『日記』も取り組む家畜化研究であり、朱雀大路の露店だ。

 古都ドウマンは、そして朱雀大路は、『日記』にとって職場であり、生活の場であり、誇りの詰まった場所なのだ。

 だから、すとんと腑に落ちた。

 見放されたのではない。逆だ。


 信頼されているのだ。自分たち、古都に残る者たちは。


 模擬戦争当日、『日記』は腰ポケットのノートを自分の天幕に置いて来た。ずっと肌身離さず持っていた日記を、だ。

 大切なものだ。けれど、今日は……いや、常日頃からもっと大切なものがある。


「おお……ッ!」


 ライオットシールドを構え、木材の殴打を耐え忍ぶ。

 向こうから見れば攻城戦だが、こちらの兵士団から見れば制圧戦だ。

 厳しい訓練の中では、格闘の教えもあった。

 盾を使い、警棒を使い、打ち据え、組み、押して地面に転がす。

 戦闘不能の基準はない。風船をつけるのは、女王カグヤだけだ。

 だから必然、現場では、相手が諦めるか、あるいはこちらが諦めるまで、続けることになる。


「……頼まれたからじゃねえ……!」


 『日記』は吠える。


「覚悟してんだよ、こっちは! ここで生きていくって、決めてんだ!」


 だれともなく叫んだ言葉に、仲間たちが「おう」と応じる。

 ひとりひとりは小さな叫びだが、混ざり、うねり、怒号となって朱雀大路を埋め尽くす。

 対して、敵側、復古勢も吠えた。


「こっちはこっちで、譲れねえ過去があるんだよ!」


 だれとも知らない、名前もわからない相手だ。


「じゃあ、お互い様だな!」


 吠え返し、しかし、『日記』はさらに牙を剥く。


「だけどな! おれらには勝利の女神が……」


 考える。


「……勝利の女装神がついているんだ! おまえらにはいねえだろ!」

「いてたまるか!」


 ごもっともであるが、しかし、『日記』はファンクラブ会員ナンバー一桁だ。


 ――押し負けるわけにはいかねえんだよ……!


 すべてが、生活だ。再開拓も、訓練も、家畜化研究も、ファンクラブ活動も。

 この街で営むことすべてが、いまの生活で、街で、国で、朝廷で、そして未来だ。


 ――信じてくれたんだ。おれたちも信じてついていく!


 自分たちは同じ未来を見ていると、『日記』は思う。

 過去から続く、同じレールの上で。

 しかし、もっと良い未来に向かって伸びる線路を、共に往く。


「うしろばっか向いてないで、これからの人生楽しんでけ、復古勢!」


 吠える、吠える。


「おれらがいまから、楽しい未来ってのを教えてやる!」


 ライオットシールドを衝撃。警棒を伸ばして、もうひとり、地面に引き倒す。

 拘束までする余裕はない。相手は倒れても立ち上がり、連携をとるカグヤ朝廷兵士団に果敢に挑みかかってくる。

 折れない。それでいい。


 ――おれらも、折れねえ!


 喉が枯れても、吠えてやる。そういうつもりで、『日記』は盾を構えた。

 何度も。何度も。何度でも。




熱い変態が多い街、古都ドウマンのカグヤ朝廷をよろしくお願いいたします。



★マ!

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― 新着の感想 ―
[一言] 増え続けるファンクラブ…女装神が居るならば神器が欲しいと走る電流…狙われる女装神着用済みパンツ…派生するパンスト派…妥協しエア神器で良いとするブラジャー派…
[一言] 復古勢に一言。 「昔話をしよう」 「かつて、日本では衆道は当たり前だったんだ」
[良い点] 日記が好きすぎて辛いわ [一言] マコ様一発ヤらしてやってくんねぇかな… 最悪粘液あげるだけでもいいから
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