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第三章【京都ダンジョン遠征編+古都ドウマン模擬戦争編/ニンジャ・ヒーロー・コンプレックス】

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26 マダム・ハッシャクの襲来



 霧はダンジョン外部と内部を隔てるだけでなく、ダンジョン内にもそれなりの濃度で広がっており、見通しは劣悪。

 外の時間に関係なく常に夜であり、しかし、街灯にぶらさげられた提灯が光っているため、なにも見えないほどではない。

 僕らはダンジョンに入ってすぐの石畳の上で、のんびりと座っていた。すでに三十分近くが経つ。

 いまのところは『シャッフル』はなし。

 それから、あとひとつ特徴を追記するとすれば。


「ここ、めちゃくちゃ景色いいね、お兄さん」

「ちょうど紅葉のピークなんじゃないかな。十一月下旬から十二月初旬まで、くらいだったはず」


 京都、嵐山の紅葉といえば、言わずと知れた絶景だ。

 そこかしこに広葉樹が生え、木造建築の古式ゆかしい町屋や屋敷を彩っている。

 真っ黒な夜の闇を背景に、赤や黄色の葉がはらはらと散っていく様子を、提灯のほのかな灯りが照らし上げていた。

 霧深い、寒々とした雰囲気の恐ろしさを感じながらも、しかし、寒さを忘れて見入ってしまう美しさが、そこにはあった。


「……写真、撮らなくていいの?」

「あ、そうだ。あんまりにもきれいで、忘れてたの」


 ナナちゃんが一眼レフを構えて、ぱしゃり、ぱしゃりと木々を写す。

 カメラ背面の小さな画面で撮影した画像を確認し、出来栄えに満足したのか、ナナちゃんがうんうんとうなずいた。


「お兄さん、これ見て?」

「なに、どうしたの?」

「白い服着たデカい女の人が写ってる」


 反射的にカメラを殴りそうになったけれど、がんばってこらえた。

 そして、画面から目を離し、もみじの木の下を見る――いつの間にか、ソレはいた。

 白いワンピースを着た、顔が見えないほど長い黒髪に麦わら帽子をのせた、めちゃくちゃ背の高い女性だ。

 そして、そいつの爪は恐ろしいほど長く、鋭く、血に染まった赤色だった。

 『鑑定』によると、名前は『マダム・ハッシャク』で、Bランクのモンスターらしい。

 なるほど。


「――敵襲ーッ!」


 叫ぶと同時に、マダムが襲い掛かってきた。

 いちばん先に動いたのは、タンバくんだ。

 目にもとまらぬ速さで腰の脇差を抜き、人体の出せる速度を容易にぶっちぎってマダムに襲い掛かった。

 対応するマダムがタンバくん目掛けて振るう爪をさらりとかわして、身長二メートル以上はあるマダムの首を逆に斬りつけた。

 ヒト型モンスターが上体を大きくのけぞらせ、鮮血を噴き上げる。

 さすがの速度だと、そう思った。

 けれど。


「……っ、なんですかコレ……ッ?」


 困惑の声と共に、タンバくんがマダムから距離を取る。

 僕にも見えた。血しぶきが舞って、たしかに傷つけたはずなのだ。

 なのに、傷が――ない。

 マダム・ハッシャクはゆっくりと姿勢を戻し、髪に覆われた顔を僕らに向けた。


「……銃を」

「はっ」


 工兵のひとりから、自衛隊基地跡から回収した自動小銃を受け取る。

 マダムがふたたび動きはじめる前に、狙いをつけて単発モードで狙撃。

 反動でマダムの上半身が大きくのけぞり、その顔面に風穴を開けた。どしゅ、と血が広がり、石畳を濡らす。

 しかし、それでも。


「……着弾。出血アリ。ただし――傷跡、なし!」

「お兄さんなにあれ、どういう理屈っ?」


 ふたたび、ゆっくりとマダムの上体が起こされる。

 とりあえずもう一発撃ち込んで動きを止めつつ、考える。


「……高速治癒能力か、あるいはもっとほかのスキルか。たしかめてみよう」


 もう一発撃ち込んで、僕は一歩近づく。

 『鑑定』を削除して、スロットをひとつあけておく。


「タンバくん、工兵たちの防御に回ってもらえる?」

「はい! あの、イコマさんはなにを……?」

「僕の『複製』は、触った相手のスキルを複製できる。――これは人間相手かどうかを問わず、また、相手のスキルを知っている必要もない。触りさえすれば、不死身のタネは割れるはずだよ」


 もう一発。……そして、小銃を単発モードから連射モードへ。同時に走り出す。

 だだだだ、と弾丸をまき散らしながらし、びくびくのけぞるマダム・ハッシャクに急接近。そのまま、爪を避けて腕あたりにタッチし、そのまま後退。

 ……案の定、マダムは無傷。おびただしい量の血液が石畳に散らばり、そして、黒い粒子になって霧散していく。

 そして、マダムの持つスキルは――。あれ?


「……おかしい、なにも『複製』できていない」


 たとえ格上のスキルであろうと、Bランクにダウンさせて『複製』できるのに、マダム・ハッシャクからはなにも得られなかった。

 ひとつもスキルを持っていないとしか考えられない。

 なのに、この再生能力。というより、まるで『傷なんかなかった』と言わんばかりの挙動。

 はたと思い至る。ホラーじみたダンジョン。マダム・ハッシャク……都市伝説を原型にしたモンスター。

 これは、もしかして……そういうルールなのか?


「……一度、ダンジョンから撤退します! マダムに小銃の斉射を当てて牽制しつつ、橋を渡ってください! 霧の範囲からは出てこないはずです!」


 毎度のことながら、厄介なダンジョンに来てしまったらしい。




八尺様について調べた結果、おねショタが熱いという結論に至りました。

ケツとタッパのデカい女が好みです。僕のファンの中に八尺様がいたらよろしくお願いいたします。

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[一言] > 「ケツとタッパのデカい女が好みです。」 オロカモノメ。 オマエハジンルイノタヨウセイニイドムトイウノカ? モットモットタヨウセイニメヲムケルノダ!
[一言] 初手八尺様……このダンジョン手強いな。中で寝ると悪夢見そうで無理だし、トイレも個室だったら花子さん出そうだし。体を拭こうとするとイコマ君より上位のペロリスト、垢舐めさんが……w
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