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第三章【京都ダンジョン遠征編+古都ドウマン模擬戦争編/ニンジャ・ヒーロー・コンプレックス】

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21 閑話 レンカ、戦争準備



 慌ただしく攻略派兵団を見送ったレンカは、息つく間もなく模擬戦争の準備を始めることになり、そして知った。

 場所は最近、毎日のように赴く会議室。正面には枯木のようなクキが座っている。


「反朝廷派が、クキ様――和歌山勢に与したというのは、ほんとうですの?」

「事実だ。ありがたい話だな、儂ひとりで戦争するつもりが、和歌山で共に暮らし、旅してきた仲間たちだけでなく、朝廷に不満を持つ若人たちが儂に力を与えてくれるという」

「……彼らは、その」


 言いよどんだレンカに、クキは頬をゆがめて笑った。


「わかっている。ただ暴れたいだけ、不満があるだけのものたちだ。大阪ダンジョンの地下にあったという、退廃の街から逃れて来た既得権益の亡者たちもいる。……つまり、過去にしがみつく者どもだな」

「そこまでわかった上で引き入れるというのならば、もうなにも言えませんわね」

「ならばけっこう。加えてひとつ。――儂はもう和歌山勢ではない。和歌山の人間のほうが少なくなってしまったからな」


 レンカの目の前で、クキは朗々と言った。


「復古勢。そう呼んでくれ」

「では、そのように」


 反朝廷派。

 文字通り、カグヤ朝廷の統治に反対する者たちの集団だが、内実は一枚岩ではない。

 クキ同様に『過去の復古』を願うものもいる。

 ただ単に、現在の朝廷が気に入らないだけのものもいる。

 大阪からの難民で、ユウギリの王国でいい暮らしをしていたがゆえに、それを奪った朝廷を恨み、復讐したいだけのものもいる。

 そして、流されるままに朝廷の統治に組み込まれていたが、模擬戦争の決定に伴って自分を見つめ直し――つまり、流されないで考えた結果、復古勢についたものもいるだろう。


 ――いろいろですわね。


 雑多な集団だが、それはカグヤ朝廷も同じこと。

 問題は、数だ。


「総勢は?」

「四百と少しだな」


 和歌山から来た人数が約八十名。軍勢は最初の人数の五倍だ。だが、それでもまだ少ない。

 兵部が防衛に出せる兵士の数は、戦闘員だけでも一千を超える。直接戦闘をおこなわない兵士も足せば、二千以上の兵力がある。

 自衛隊基地から発掘した装備もある。プラスチック爆弾だけでなく、ボディアーマーや防弾ベスト、ライフルやランチャーといった火器兵器すらも、進化したイコマの『複製:A』で全軍配備してあるのだ。


 ――このままでは、虐殺……いえ、不殺のレギュレーション上、兵器は使えませんから、暴徒鎮圧にしかなりませんわね。


 地力が違う。戦局を変える戦力があるとすれば『スピード強化:A』を持つタンバだが、少年は京都遠征組だ。


 ――戦争を見越すならば、タンバ様を古都に留め置いたはず。わざわざ遠征組に推薦したのは、なぜですの……?


 見たところ、あの少年は先生……クキに依存している。

 クキは強力な手駒を自ら手放した。いくらでも理由をつけて留め置けたはずだ。

 そうしなかったのは、なぜか。

 読めない、とレンカは思う。目の前の老爺は、あの少年に対してどういう感情を持っているのか。


「……試合形式に関しては、参加人数が変わろうと変更なしでかまいませんわね?」

「朱雀大路に限定した侵攻戦。それでけっこうだ。こちらの人数が五倍になったぶん、そちらも参加人数を変更してもらうべきだろうな」

「ええ。当初の五十人から、二百五十名に増員させていただきますの。かまいませんわね?」

「無論だ。……しかし、同数ではなく、少数で構えるとは。いささか余裕が過ぎると思うが」

「朱雀大路といえど、あまり広い道ではありませんから。出せる数には限りがありますし、こちらには装備もございますから」


 火器は使わない。催涙弾などの鎮圧兵器はもちろん、刃物もアウトだ。両陣営に配られるのは、木の棒や角材といった打撃武器のみ。

 怪我にしても、悪くて骨折程度で済むよう調整している。


「人竜大戦のさなか、人間同士のもめごとで命を落とすのは、避けなければなりません」

「同感だ。そして、ありがたい。火器があれば、儂らの勝ちは万に一つもなかった」


 ――このルールは、模擬戦争を成立させるためのもの。朝廷にとって不利なルールではありますけれど、防具に制限はなし。


 ライオットシールドや移動式のバリケードは使える。

 問題ないとミワが判断した。レンカはその判断を信じた。

 だから、この会談はあくまで確認だ。


「朱雀大路の南端から直線で侵攻する復古勢を迎え撃ち、鎮圧すれば朝廷の勝ちですわね」

「そして、朝廷本部まで攻め進み、女王の首に手が届けば儂らの復古勢の勝ちだ」


 簡単なルールだ。

 ひとつ確認しておくとすれば。


「朱雀大路の南端で、間違いありませんわね?」

「ああ。そちらの基準で言えば、家畜化研究をおこなっている研究所。あの前あたりになるだろうな」

「かしこまりましたの」


 レンカはうなずいて、薄く笑った。


「それでは、当日まではいさかいなく、互いに十全な準備を以って――戦争をおこないましょうか」




試合形式の決定といったところで。


なんかレンカちゃん下ネタ少なくなってきたな……。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ここまで笑い通しで読ませていただきました。ありがとうございます。 [気になる点] 模擬戦の意味が全く理解出来ませんでした。 クキとの論点は古い日本か新しい日本か、であったはず。 思想の違い…
[一言] 火器はイコマ君ありきなので使わないのは妥当な選択ですね。
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