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第三章【京都ダンジョン遠征編+古都ドウマン模擬戦争編/ニンジャ・ヒーロー・コンプレックス】

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15 閑話 クキ、未来と対峙する



「どうすれば、認めてもらえる……ますか?」


 カグヤからの問いに、クキは眉をひそめた。


 ――なぜだ。


 自分の内側にある感情が、老害と呼ばれるものだと知っている。

 だから、終わらせようとした。それがいい。自分にとっても、相手にとっても。

 なのに、食らいついて来た。


「儂に認めさせて、どうする」

「理屈ではありませんよぅ」


 言われて、気づく。己と同じなのだ。


「感情か」


 若人がうなずく。クキは笑った。


「クキさんのそれは、勝ち逃げだよぅ。私たちと別れ、ひとりで納得して旅に出る。たしかにクキさんのプライドは守られるかもしれない。けれど――私たちにも、クキさんを客として、難民としてこの街に迎えた以上、プライドがあるんだよぅ」


 頼りない敬語を捨てて、女王はクキに真正面から言い切った。

 逃げるな、と。


 ――キミたちもまた、誇りを持つのだな。


 日本国民としての自覚と誇りを持つクキ同様、目の前の少女はカグヤ朝廷代表としての自覚と誇りを持っている。

 当たり前だ。人間、だれしも自分が決めた自分の居場所にプライドを持つ。

 それが自分たちで考え、作り上げている最中の場所となれば、なおさらだ。


 ――(過去)にも認められるような国であらねばならないと、理屈ではなく感情で……そう考えているのか。


 気骨ある若者だ。

 嫌いではない。けっして、嫌いではないのだ。

 だからこそ、相容れない。


「どうすれば、か……」


 ――これはもう、すでに勝負になっている。


 クキは内心で思う。

 意地と意地の張り合い、誇りと誇りの比べ合いは、つまり、勝負だ。

 ならば、目の前の少女――カグヤの問いは、勝負の宣告でもある。


「勝負だな。これは」

「はい、勝負ですよぅ。これは」

「……守る、と言ったな? 守るために力を使うと」


 はい、と女王がうなずく。


「ならば、最低限、国としての要件を満たしていると証明してみせろ」

「……要件?」

「そうだ。そちらの太政大臣……レンカ嬢ならば、知っているのではないか」


 クキは考える。この若人たちに、敗北を認めさせるにはどうするか。

 あるいは、この若人たちがどうすれば、自分は敗北を認められるか。


「国家の定義というやつは、過去において明文化されている。過去よりも良い未来を見据え、海外と遣りあう力を持ちたいというのならば。最低限、過去の基準をクリアしていなければならない。そうだろう」

「ええと……」


 女王カグヤは横に座る太政大臣を見て、太政大臣はクキに視線を向けてきた。

 あきらめの混ざった、しかし、勝負を望む瞳だ。

 実利を考えて首を縦に振りはしたが、しかし、女王カグヤ同様にプライドを持つのだと、クキは悟った。


 ――虎の巣だな、ここは。女性が二人と高をくくっていた己を反省せなばならん。


 気を抜ける相手でも、手加減できる相手でもない。


「クキ様がおっしゃるのは、モンテビデオ条約の第一条に記された四つの要件のことですわね。どう証明せよ、と?」

「そちらに任せる。だが、これが勝負である以上、試合は必要だろうな」

「……そうなりますの」


 試合の細かい条件や試合のルールはあとで……やると決まったあとで詰めればいい。

 クキは女王に向き直り、問う。


「無論、そちらに受ける必要はない。やるか、女王カグヤ」

「満たされれば、認めてもらえる?」

「完膚なきまでに打ちのめされれば、否が応でも認めざるを得ない。そうだろう?」


 クキは淡々と、しかし、この会談でいちばん力強く言った。


「過去ではなく、未来にこそ価値があると、この老骨に思い知らせてみるがいい」




ここまでちょっと閑話が多めでしたが、次からイコマのターンが見えて来るかなといったところで。


タンバくんが性癖にダメージを食らっているあいだ、こんな真面目な話が展開していたんですねぇ……。


星はおかげさまでたくさんあるので、ぜひぜひ感想とレビューをください!(欲望)

感想やレビューが作者の“力”となり、膨れ上がったパワーはいずれ世界を呑み込むだろう……!(ここで七大罪『強欲』戦のBGMが流れる)



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