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第三章【京都ダンジョン遠征編+古都ドウマン模擬戦争編/ニンジャ・ヒーロー・コンプレックス】

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13 閑話 タンバ、キレた……ッ!



 タンバは、イコマの恋人であろうマコが、目を落として言うのを見た。


「……英雄と呼ばれるには、足りない男だと思うよ」


 諦観交じりの声音だった。

 ショックを受けて、ゆえに、心中で期待していた自分に気づく。


 ――ハーレムメンバーのマコさんなら、イコマさんをだらしないだけの男ではないと、言ってくれると思っていたのですね、僕は。


 英雄と呼ばれるだけの、高潔な人間であると思いたかった。

 あるいは。


 ――マコさんが惚れ、ハーレムを作るに足るだけの男であると。


 つまり、否定してほしかったのだ。

 この街に英雄はいるのだ、と。

 英雄に足る男が古都を奪還し、大阪を解放し、そしてタンバの速度に追いつける素敵な女性を手に入れたのだと。

 それなら、納得ができた。理解もできた。


「流されやすいし、お調子者だし、まあその……実際にハーレムを形成しちゃっているし。軽薄なところは否定できないかも」


 なのに。

 なのに、なのに、なのに。


「僕は――イコマという男は、英雄と呼ばれるような人間じゃないと思う」


 ――どうして、そんなことを言うのですか。


 英雄であれば、まだ。

 英雄になろうとする、タンバと同じ立場の者であれば、まだ。

 許せたと、思う。

 だってこれは、感情の問題だ。

 未熟で経験の少ない少年が、ひとりの女性を諦められると。

 その居場所に、彼女が座る席に納得ができると。

 そういう、気持ちの問題だった。


「英雄であろうとも思っていない、かな」


 だから、その言葉を聞いて、タンバは抑えきれなくなった。


「なんですか、それは……ッ!」


 タンバは正義の味方だ。英雄だ。

 そうあろうとしている。そうあらねばならないと、己に課している。

 正しくあらねばならない。そう習った。父に、母に、教師に、世の中に。

 すべてに。

 そう教わって、正しさに憧れて、ここまで来た。


「マコさんはッ! それで、そんなイコマさんで、いいんですかッ?」

「え、ええ……いや、いいもなにも……あるがままで、いくしかないというか。変わりたくても、どうせいきなり大きくは変われないんだから。ほら、等身大の自分に付き合っていくしかない、みたいな」

「それじゃ、マコさんは、イコマさんが足りないままでいいというのですかッ?」

「ん? え、あれ? まあ……うん、足りないままじゃダメだけど。でも、足りないところはみんなが支えてくれるから、なんとかなっているし、これからも頼り頼られなんとかしていく感じで……うん? なにかがおかしい気がするんだけれども……」

「お――」


 タンバは思わず倉庫前の階段から立ち上がった。

 中身の残ったカップが手元から転げ落ちて、階段にスープの染みを作る。

 やってしまった、もったいない……と思うが、止まれない。


「――おかしいのは、イコマさんです! 許せません!」

「ゆ、許せない、の?」

「はい!」


 まとめると、こうだ。


「実力が足りないとわかっていながら、向上心もなく、多数の女性を囲って関係を持ち、あまつさえ他人頼りが大前提だなんて!」


 タンバは叫んだ。


「そんなの、マコさんがかわいそうです! 騙されていますよ、マコさん! イコマさんはとんでもないスケコマシです!」




だいたいイコマが悪い。

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― 新着の感想 ―
[一言] タンバくん、いいスキル当たったからってものすごく都合のいいように使われてない?
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