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#壊れた地球の歩き方 【コミカライズ全3巻発売中!】  作者: ヤマモトユウスケ@#壊れた地球の歩き方 発売中!
第一章【古都奪還戦争編/妬まれて追放されたけど、実は『複製』スキルで戦闘から生産までなんでもこなす万能ワーカーでした。今さら帰ってこいと言われてももう遅いです。】

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11 『傷舐め:C』



 翌朝、僕は朝日を拝んでいた。

 文字通り、両手を合わせて太陽に頭を下げていた。

 天気は快晴、気温はやや低いけれど、清廉な空気がすがすがしくてちょうどいい。

 ああ、それにしても――。


「生きているって素晴らしい……!」


 生命とはかくも美しきものであったか。

 思わず涙を流しそうになる。

 生きることとはなにか。それをいま悟りつつあるといっても過言ではない。


 なにか新しい"教え"に目覚めそうになりつつ、湖で水を汲んで濾過して沸かす。

 万全とはいかないけれど、右腕は問題なく動いている。

 昨夜、ギャングウルフの頭目に噛まれ、裂かれた肩には白い傷跡が盛り上がって残っている。

 激しく振り回したり重いものを持ったりするとさすがに痛いものの、軽作業であれば普段通り動かせそうだ。

 とうぜん、全治一ヶ月くらいはありそうだった牙の傷が、たった一晩で治りかけているのにはわけがある。

 僕自身気づいていなかったけれど、僕は土壇場で新たなスキルの『複製』に成功していたのだ。


 おそらくギャングウルフの頭目オオカミが持っていたスキル。

 『統率:C』と『傷舐め:C』を、僕は取得していた。

 『統率』はリーダーとしての才覚、カリスマ、魅力度などを向上させるスキルであり、現状あまり使い道はなさそう。

 だけど『傷舐め』のほうは、まさしく垂涎の効果だった。


 『傷をなめることで治癒を促進する』スキルなのだ。


 その性能はCランクの魔法と同等らしい。

 『オールナイト元・日本』で魔法系スキルについて聞いたことがある。

 魔法自体が非常に希少なスキル系統で、日本国内ではまだ十人も報告されていないという。

 CランクやDランクであっても、魔法系スキルは非常に有用かつ強力であり、都市圏奪還の戦力になりうるのだとか。

 もしも魔法スキル持ちを見つけた場合は情報を共有してほしいとパーソナリティが呼びかけていた。

 それと同等のスキルを、うっかり入手してしまったのである。


 昨夜、気を失いそうになりつつも、ぶっ倒れた少女を引きずってロッジ内に入ったとき、このスキルを『複製』していたことに気が付いた。

 試しに自分の口が届く範囲で肩を舐めてみると、驚いたことにほのかに発光して傷がふさがり始めたのだ。

 これは使えると思い、僕はズタボロになっていた上に水を吸って原型を失っていた香草バンドとジャージを脱ぎ捨てて全裸になった。

 そして必死に肩を舐めまわし、『傷舐め』を発動したのである。

 自分の肩を舐めることに若干のキモさはあったものの、命には代えられない。


 出血が止まり、腕が軽く動くようになったあとは、女の子の傷を確認した。

 ギャングウルフ八匹をものの数秒で討伐するほど激しく動いたのだ。

 おなかにつけられていた爪による傷口は大きく開き、どくどくと激しく血を垂れ流していた。

 あまりに痛々しい光景に、僕は思わず肝が冷えた。いや全裸だったからではなく。

 僕を助けたせいで少女の命が失われるようなことは、決してあってはならないからだ。

 それゆえに、僕はなにがなんでも少女を助けようと決意したのである。


 そして舐めた。

 めちゃくちゃ舐めた。

 女子高生のおなかをこれでもかというくらい舐めまわした。

 腹部につけられた長大な爪の傷。

 全身に広がる大小の擦り傷や切り傷。

 あのオオカミたちの爪と牙が、どれほどの攻撃を、恐怖を与えたのかを物語っていた。


 それも全部舐めた。

 指先の割れた爪も舐めたし、ほっぺたの切り傷も舐めた。

 とにかく舐めた。

 犬のように、いやまさにオオカミのように舐めまくった。

 疲れと痛み、失血のせいで意識が半ば朦朧とし始めてもやめなかった。

 僕は夜を徹して少女を舐めくり回した。

 いやもう、()めたというより、(ねぶ)ったといったほうがいいくらいの勢いであった。


 そして気づけば、少女の出血は止まっており、朝になっていたのだ。

 いやあ、本当に生きてるって素晴らしいな!


 少女の意識は戻らないけれど、『傷舐め』による治療行為を継続して行なっていけば、じきに目を覚ますだろう。

 やれやれ、僕が眠れるのはもう少し先になるみたいだ。

 A大村を出ても、結局はこうして睡眠時間を削ってしまっている。

 我ながら仕事人間でイヤになるけれど、誰かを助ける行為にやりがいを感じているのもまた事実。


 ホットタオルで顔を拭って眠気を払い、よし、と気合を入れて立ち上がる。

 お湯で絞ったタオルをひとつ作成し、冷めないうちに『複製』を使ったのだ。

 こうすれば大量のホットタオルが出来上がる。

 僕と少女は未だに血みどろで、あまり清潔とは言えない状態だから、これがあれば何かと便利だろう。


「さ、また女子高生の全身を舐めまわす仕事に戻らないとな!」


 仕事は山ほどある。

 僕は意気揚々とロッジに戻った。



 全裸で。




硬派なポスト・アポカリプスを舞台にしたクラフト系ローファンタジーなので、展開もキャラクターもどうしても硬派になってしまいますね。


「面白そう!」「これからが楽しみ!」と思った方は、下の☆☆☆☆☆を★★★★★にしていただけると作者のモチベーションがもりもりアップして硬派なファンタジーをひねり出します!!



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― 新着の感想 ―
[良い点] 何という聖なる行為。 笑うしか無い。
[良い点] コミカライズ始まったので読み直しに来た そうだ、俺はこのシーンで爆笑してブクマしたんだった!
[一言] 最後の一言の破壊力www
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