1 追放
文明が崩壊して二年が経った。
僕は大学三年生になった。
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「イコマ、おまえは追放だ」
狩猟班リーダーのイケメンチャラ男、レイジが冷たく言い捨てた。
僕も「いつか追い出されちゃうかもなー」と思っていたけれど、まさか本当に言われるとは思っていなかった。
一応、
「マジで言ってる?」
と聞き返して確認をしておく。
レイジは不快そうに眉をひそめて、大きく頷いた。
「マジだ。おまえは村に不必要――いや、ちゃんと言おうか。
おまえは有害なんだよ、この村にとって。
カグヤに取り入って上手いことやってるつもりかもしれないが、おれにはちゃんとわかってるからな。
おまえのスキルはゴミだ」
思わず空を仰いでしまった。
コイツ、マジか。
A大学集落――A大村の入り口の広場で、周囲にはたくさんの学生がいる。
仕事中に通りかかり、僕らを見て足を止めた人たちが、ざわざわと喧騒を生み始めていた。
狩猟班リーダー、A大村トップハンターのレイジと、器用貧乏生産職お手伝いの僕が向かい合うという構図は、それなりにセンセーショナルだろう。
レイジが僕を嫌っているのは、みんな知っていたけど――まさか、追い出すほどだとは。
しかも理由が、僕とカグヤ先輩の仲が良いからだとは。
どうしようもないな、コイツ。
「あー、そう。でもいいの?
僕の『複製:B』スキルがないと困ることに――」
「おれには通じねえ、おれにはわかってるって言ったろうが。
おまえの御託はもういいんだよ。
劣化コピーしか能のないパクリ野郎がごちゃごちゃ抜かすな」
聞く耳持たず、だった。
レイジは僕に指を突きつけて、
「明日までに出ていけ。二度とカグヤに近づくんじゃねえぞ。
出ていかねえなら力づくで叩き出すからな、このパクリ野郎」
そう吐き捨てたのである。
レイジはカグヤ先輩を狙っているから、親しい僕を排除したいのだろう。
僕としても正直、もうそろそろレイジたちにうんざりしていたので、売り言葉に買い言葉みたいな感じになってしまった。
「わかったよ。出ていけばいいんでしょ?」
そういうわけで、僕は村を追放されたのである。
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二年前、地球がぶっ壊れた。
最初に発生したのは地殻変動を含む天変地異。
大地震が発生し、世界各地の地形ががらりと変わった。
旧来の道の大半が分断され、街中にも巨大な断層が絶壁のようにせり上がった。
人類の一割弱が亡くなった大地震のあとにやってきたのは、激しい稲光を伴う大嵐。
川という川が氾濫し、海という海が津波を海岸沿いにぶつける日々が続いた。
この時点で、文明は半ば崩壊していたと思う。
けれど、真に恐ろしい滅びはそれからだった。
――モンスターの出現。
超常の力を持つモンスターたちが、世界各地に湧いて出た。文字通り、どこからともなく。
やつらは人類の兵器をものともせず、国家という枠組み、人間の持つワールドワイドな社会性を破壊しつくした。
特にドラゴン――神話に出てくるような、四足と一対の翼を持つ巨大な怪物はすさまじく、天変地異後で疲弊し、混乱しきった人類の軍隊で太刀打ちできる相手ではなかった。
大都市圏の大半が竜種の縄張りになってしまい、人類は住む場所を追われた。
それが二年前。文明が崩壊したときのあらすじ。
でも、人類はまだ滅んでいない。
そう、二年前。二年前だ。
僕ら人類は、まるで天から授けられるかのように、唐突にその力を手に入れた。
ステータスとスキルを――ゲームや漫画みたいな超常の能力を。
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