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悪役令嬢に転生して傍若無人の限りを尽くしたかったけど、空きがないと言われたので極悪聖女を目指します!  作者: 藤谷 要
第四章 王子とのお茶会

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お茶会の結果

「そうですね。恥ずかしいからと言わずにいて、大切なものを失ってはダメでしたわね。わたくし、きちんと自分の気持ちをまっすぐに伝えてみますわ」


 アルメリア様はそう言うと、落ち着きのある所作で優雅に立ち上がる。王子にしっかりと向き直り、ゆっくりと丁寧に一礼した。


「レリティール様、わたくし昔からあなたのことをお慕いしておりましたわ。だから、気になったときに色々と差し出がましいことを申しましたけど、レリティール様の気に障ってしまい、申し訳ございませんでした」


 ふああああ!

 こんな淑やかで奥ゆかしい上に素直で可愛らしいアルメリア様をお目にかかれるとは!

 もじもじと恥ずかしそうに王子を見つめる彼女の姿はとてもいじらしかった。


 破壊力が半端ないですわ!

 そうでなくても美貌の少女。

 こんなストレートで純真な好意だけではなく、みなを虜にするアメジストの瞳に見つめられたら、即落ちですわ! 即落ち!


 案の定、王子は頬だけではなく、首までも、みるみる赤くしていった。

 それまでムッと不機嫌な顔が、恥ずかしそうに照れはじめ、への字だった口元が緩んでいる。

 ドキドキと高揚したエメラルドの瞳が、アルメリア様を戸惑ったように瞬きを何度もしながら見つめていた。


 ああ、他人が恋する瞬間をわたし初めて目撃した気がする。


 王子は慌てて立ち上がり、アルメリア様だけを一心に見つめて近づいてきた。

 そして、彼女の前で躊躇なく跪いた。


「いや、私こそ、誤解してすまなかった。ここまでアルメリア嬢にさせてしまったこと、心より謝罪する」


 おお! こういうレリティール様の素直に反省するところは、本当に彼の美徳だよね。


 アルメリア様の頬に朱がさし、不安そうだった瞳が今度は歓喜で潤んでいた。


「あなたのこれまでの気遣いに感謝する。あなたの手に私の敬愛の口づけを贈らせてほしい」


 アルメリア様が感極まって、口元を手で押さえていた。


「ええ、喜んでレリティール様」


 そう答えたアルメリア様の声は感極まって震えていた。

 王子はアルメリア様から差し出された手を取ると、そっと自分の唇で触れていた。


 さすが王子なだけあって、非常に絵になる美しい姿だった。


 アルメリア様は頬を赤く染めて、うっとりとした表情で王子を見つめている。


 これは再び王子に惚れ直しているようだ。


「アルメリア嬢の本心を知れて嬉しかった」


 王子は彼女の手を握ったまま、立ち上がり、横に並んでいた。

 お互いに照れ臭そうに見つめ合う様子は、まるで初々しい恋人のようである。


「良かったですね、アルメリア様。王子と仲直りできて」


 嬉しくなって思わず口から祝福が出ていた。

 これで二人がくっつけば、わたしとのフラグは消えてなくなるわよね。

 うししと内心ほくそ笑んでいたら、二人にキラキラとした純真な眼差しで見つめられた。


「クリステル様のおかげですわ。あなたがいなかったら、レリティール様とこのように仲直りできませんでした」

「うむ。今になって思えば、私がひどい言葉でアルメリア嬢を傷つけたのにも関わらず、私を責めもせず、真摯に話を聞いてくれた其方のおかげだ。本当に感謝する」


 アルメリア様と王子だけではない。


「クリステル様に感謝しますわ。わたしの娘はあなたのおかげで成長できたようです。私も夫に普段から感じている気持ちを改めて伝えなくてはと、胸が熱くなりましたわ」


 アルメリア様のお母様にまで深く感謝された。

 お父様と言えば、なぜか感動して涙をハンカチで拭いていた。


 みんなに称賛の目を向けられて、居心地の悪いと言ったら!

 傍若無人に振舞ったはずなのに、おかしくない?

 二人が無事に仲直りできて良かったけど、今回も悪女として失敗したみたい。

 はぁ、反省だわ。

 一体、何が悪かったのかしら。





 その日、城から帰宅するとお兄様に玄関で出迎えられた。

 心配そうなお兄様の顔を見た瞬間、思わずぎゅーと抱きしめてしまった。

 伝わる温もりのおかげで、少しずつ安心できた。


「すごく緊張したみたいだね。お疲れ様、クリス」

「はい、わたくし頑張りましたわ」


 お兄様が背中を優しくポンポンしてくれて、だいぶ落ち着くことができた。


 居間のソファに座って城での出来事をお兄様にも伝える。

 お兄様はわたしの横でじっくり話を聞いてくれた。


「そうか。王子とアルメリア様は仲違いしそうになったけど、クリスのおかげで仲直りできたんだね」

「はい。王子ったら、勘違いしていたんです。でも、きちんとお話したら分かってくださって良かったですわ。王子とアルメリア様がいい雰囲気になっていたので、このままお二人が婚約すればいいんですけど」


 そう願望をつぶやくと、お兄様が意外そうに見つめてきた。


「クリスは王子との婚約は嫌だったの?」

「嫌といいますか、アルメリア様は元々王子をお慕いしておりましたし、わたくしは彼女を応援しているんです」

「じゃあ、ウィルフレッド様はどうなの?」

「なぜあの方の名前が上がるんですか?」


 ウィルフレッド様が恋しているのは、プリンだ。わたしはその付属品に過ぎない。

 すると、わたしたちの向かいに座って寛いでいたお父様が「クリス」と話しかけてきた。


「国の安寧のため、聖女は王族と婚姻するのが慣例と言われている。初代国王は聖女に選ばれた聖騎士。それにより、女神の加護を得て国の王となったと言われている」


 お父様が深刻そうな顔をして説明してくれるが、それは何も問題なかった。


「でも、王子ともう一人の聖女であるアルメリア様がご結婚すれば問題ないですよね? わたくし、誰とも結婚したいとは思いませんわ。この家でずっと家族と一緒にいたいです」


 ゲームでは、ヒロインが別の攻略キャラと結ばれると、王子とアルメリア様が自動的にくっついていた。

 ちなみに、ヒロインに対する攻略キャラ全員の信奉値がクリア基準値より低かったら、アルメリア様と友情エンドだ。

 密かにこれを狙っている。


「そうだね。そうだといいね」


 そう隣でつぶやくお兄様の声が、心底そう願っているようだった。


 お兄様の温もりを感じながら、重くなった瞼を閉じ、眠りについていた。


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