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あの風景  作者: ポキール
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近くて遠い2

ゴールデンウィーク最終日、2件目の写真の場所を目指すことにした。

写真の風景は緑が生茂る公園か緑地のようだった。

今回はいかに地元と言えども、場所の検討がつかない。その景色からは分かりやすい情報が読み取れないのだ。

では記事はどうだろうか。ふむ、なるほど。有力な情報はこれまたない。

さながら謎解きのアトラクションにでも挑戦している気分だ。


"はっはっは、お手上げだ"

諦めてしまおうか。ここで卓越した推理力を発揮出来たり、根気があるなら私の人生はもっと豊かなものになっているはずだ。

…いやいや、まてまて。最後の休みを使っているんだ。諦めるにはまだ早い。

とりあえずローラー作戦でもやってみる。大きな市ではないのでなんとかなるだろう。

公園や緑地をスマホのマップで確認してみた。

問題は緑地だ。自然豊かなこの街は、緑地と言わないでも至る所に植物が青々と自生しているのだ。

流石に緑地を探して回ったら途方もないので、今日行ける公園をマッピングして回ってみることにした。


幸い市は四角い形をしているので、方角にブロック分けをしてみた。

自宅のある南ブロックから最も離れた北ブロックを潰すことにした。

北方には大きな川があり、ここが市境となっている。そこから先は平坦な地形が続く。

丘陵地にあるこの街から他市を望むと、平らかに広がる地平線を見ることができる。

この街で風景を切り取るなら、この眺めがセオリーだろうに。もちろん、被写体は自由だしそれだけが景色ではないのだけど。

"人のブログに勝手に挑戦するくせに悪態をつくとは…"

少し気を許すとすぐにこんな風になってしまう。なにかに期待しているのだろうか。

そんなことを自問しながら、自転車を北へと走らせる。


ない。ない。ない。

それらしい雰囲気のところがどこにもないのだ。

日頃から運動しない私にはすごく辛い…しかも、この頃日中が暑いのだ。

先月のピクニック気分での散歩とは訳が違う。先の見えない作業の疲労感はなかなか堪える。

"あの喫茶店で少し休憩しよう"

ちょうど良いところにあった純喫茶へ吸い込まれるように飛び込んだ。

これもまた嘘だ。さっきからこの喫茶店が気になって気になって仕方がなかった。

ここを中心にして散策していたのだから、'ちょうど良いところ'のはずだ。

最近無意識に心に言い訳をしている気がする。


純喫茶と言ったが、それがどのようなものかは知らなかった。

'感覚的にレトロな雰囲気の喫茶店'くらいの認識である。

まぁそれはそうとして、その思い描いたような絵に描いたような店内に逆に戸惑ってしまった。

こういったお店の楽しみ方や作法を知らないからである。

なんでも知ってそうなマスターがあれこれ飲み物の説明をしてくれたり、常連さんがメニューに載ってないもの頼んでたり、不倫者やら探偵やらが茶封筒の押し付けをしていたり。

紙コップにリッドを付ける小洒落た店に背伸びして行く私には、ここが場違いすぎて席に通されるなり完全に思考停止してしまった。

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