足跡を辿って2
だいたい休みの日は遅くまで寝てしまう。今日も昼まで寝てしまった。
寝坊助な私にはブランチと言う優雅かつパワーワードがあるから問題ないのだけど。
"さて、今日はなにをしようか…あぁそうだ、昨日見た写真のところまで散歩しようと思っていたんだ"
のんびりと支度をしていると、母がサスペンスの再放送を観ている。
なかなか古いドラマだ。なんせ、最近見ないキャスト陣とガラケーなのだ。
しかし、そこが再放送の良いところでもある。あー、このケータイ懐かしいなぁ、なんて思いながら眺めていると、今ご飯を食べたのに母が食べているおやつが恋しくなる。
気が付けばドラマを見切り、おやつも平らげいつもの罪深い休日を満喫していた。
"まずいまずい…"
せっかく出かける準備をしたんだ。出かけないと脂肪が襲ってくる。
めっきり乗らなくなった自転車を取り出し、サドルのホコリを払う。後ろの泥除けには学生時代の駐輪シールの跡が未だに残っていた。
いざ走り出そうと漕いでみると、タイヤの空気が減っているのに気が付いた。あの頃より増えた体重のせいでは?と頭をよぎるもそれは奥底に封印し、慣れない手つきで空気を入れる。
"さて、今度こそ"
軽快にこぎ出してみると、なかなかどうして気持ちの良いものだった。
仕事を言い訳に外出をしないでいた自分が洗われるようだった。
目的地まではおよそ30分。まだ冷たい風を切りながら機嫌良く走る。
少し寄り道もしてみた。せっかく母校の方に行くのだから見ておこうと思った。
入学の時期もあってか、部活動の声はあまり聞こえなかった。
少し寂しさを覚えながら学校を通り過ぎる。それでも少し見える学生達の若いエネルギーがなんとも見ていられなかったからだ。
またしばらく走ると目的付近に到着した。と思う。
なんとも記憶が曖昧で、あの写真がどこなのか正確に思い出せなかったのだ。
近くのスーパーに自転車を置かせてもらい、歩きで散策してみる。
久しぶりの自転車に汗がじとりと出てくる。歩いているくらいがちょうどいい。
"なんだろう。ちょっと新鮮な気分"
そうして散策を楽しんでいると、思い出したかのように足が目的地に誘ってくれた。
もちろん道中あのブログを見ながら探していたのだが、存外体は覚えているものだ。
"着いたー"
そこには写真と同じ風景があった。それと同時に違和感も感じた。
あんな建物あっただろうか。
写真には写っていなかったが、そこに立てば嫌でも目に入る大きなマンションがあった。
あの規模の建物が建つには数年はかかったろう。時間の流れを感じさせるほどそれは久しぶりの場所だった。
"そっか。景色は変わるよね"
社会人としての時間も、さっき見た学校も、再放送のドラマも。どれもたしかに時が経っている。
少しセンチメンタルになりながら、ぼーっとその景色を1人眺めていた。