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あの風景  作者: ポキール
2/6

足跡を辿って2

だいたい休みの日は遅くまで寝てしまう。今日も昼まで寝てしまった。

寝坊助な私にはブランチと言う優雅かつパワーワードがあるから問題ないのだけど。

"さて、今日はなにをしようか…あぁそうだ、昨日見た写真のところまで散歩しようと思っていたんだ"

のんびりと支度をしていると、母がサスペンスの再放送を観ている。

なかなか古いドラマだ。なんせ、最近見ないキャスト陣とガラケーなのだ。

しかし、そこが再放送の良いところでもある。あー、このケータイ懐かしいなぁ、なんて思いながら眺めていると、今ご飯を食べたのに母が食べているおやつが恋しくなる。

気が付けばドラマを見切り、おやつも平らげいつもの罪深い休日を満喫していた。

"まずいまずい…"

せっかく出かける準備をしたんだ。出かけないと脂肪が襲ってくる。


めっきり乗らなくなった自転車を取り出し、サドルのホコリを払う。後ろの泥除けには学生時代の駐輪シールの跡が未だに残っていた。

いざ走り出そうと漕いでみると、タイヤの空気が減っているのに気が付いた。あの頃より増えた体重のせいでは?と頭をよぎるもそれは奥底に封印し、慣れない手つきで空気を入れる。

"さて、今度こそ"

軽快にこぎ出してみると、なかなかどうして気持ちの良いものだった。

仕事を言い訳に外出をしないでいた自分が洗われるようだった。

目的地まではおよそ30分。まだ冷たい風を切りながら機嫌良く走る。


少し寄り道もしてみた。せっかく母校の方に行くのだから見ておこうと思った。

入学の時期もあってか、部活動の声はあまり聞こえなかった。

少し寂しさを覚えながら学校を通り過ぎる。それでも少し見える学生達の若いエネルギーがなんとも見ていられなかったからだ。


またしばらく走ると目的付近に到着した。と思う。

なんとも記憶が曖昧で、あの写真がどこなのか正確に思い出せなかったのだ。

近くのスーパーに自転車を置かせてもらい、歩きで散策してみる。

久しぶりの自転車に汗がじとりと出てくる。歩いているくらいがちょうどいい。

"なんだろう。ちょっと新鮮な気分"

そうして散策を楽しんでいると、思い出したかのように足が目的地に誘ってくれた。

もちろん道中あのブログを見ながら探していたのだが、存外体は覚えているものだ。


"着いたー"

そこには写真と同じ風景があった。それと同時に違和感も感じた。

あんな建物あっただろうか。

写真には写っていなかったが、そこに立てば嫌でも目に入る大きなマンションがあった。

あの規模の建物が建つには数年はかかったろう。時間の流れを感じさせるほどそれは久しぶりの場所だった。

"そっか。景色は変わるよね"

社会人としての時間も、さっき見た学校も、再放送のドラマも。どれもたしかに時が経っている。

少しセンチメンタルになりながら、ぼーっとその景色を1人眺めていた。

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