5 決断、そして
「バルツ、お前は――」
「俺に対して思うところはあるだろう。俺はお前に許されないことをやった」
バルツは地面にひれ伏し、俺を見上げていた。
「だが、俺たちは仲間だったじゃないか。その日々までが失われたわけじゃない」
「……バルツ」
俺が考えていたのと同じことを、この男も考えていたか。
「それに免じて、この場だけは助けてくれないか」
「だが、お前は――堕天使だ」
「堕天使の力は二度と使わん。人間に擬態して暮らしていく。いや、この力を使って困っている人を助ける、ということもできる」
「……白々しいぞ」
さすがにバルツがそんなことをするとは思えなかった。
こいつは、長年の仲間だった俺を冤罪で追いだした男だ。
自分の保身しか考えない男だ。
それが今さら、世のため人のために動くような人間に変わるはずがない。
とはいえ――俺に殺されるくらいなら、更生しようと考えるかもしれない。
俺に対する恐怖と引き換えに、二度と堕天使の力を使わず、普通に生きていく、というなら十分にありうることだ。
バルツは人一倍、自分の身が可愛い男だからな。
「頼むぅぅぅ……」
バルツは恥も外聞もない様子で、額を地面に擦り付けている。
俺は剣を掲げたまま、それを振り下ろすことができない。
と、そのときだった。
ぱしゅっ……。
突然、剣をコーティングしていた闘気がはじけ散った。
「えっ……?」
さらに俺の全身を覆っていた闘気の鎧が消失する。
「ど、どうなって――」
力が、抜けていく。
全身から湧き上がり、体を内部から燃やすような、圧倒的なエネルギーが。
「これは、まさか――」
スキル効果が切れたのか……!?
俺が思い至った瞬間、
「ぐあっ……」
胸元を熱い衝撃が貫いた。
「はははは、大事な女を守った代わりに、ボロボロだな!」
哄笑するバルツ。
その右手に淡い輝きが宿っている。
今の衝撃は、奴の放った光弾だったのか――。
がくり、と俺は膝から崩れ落ちた。
激痛と脱力感に同時に襲われる。
「力が……抜けていく……!」
くそっ、【全盛期ふたたび】のタイムリミットが来たのか。
「――まだです! ジラルドさん、受け取ってください!」
ソフィアが俺の元に駆け寄ってきた。
「ソフィア……? うっ……」
彼女の柔らかな唇が俺の唇に重なった。
甘い口づけに、一瞬すべてを忘れて陶然となる。
同時に、体中から燃えるような力が湧き上がった。
そうだ、これは――。
かつて堕天使ノアと戦ったときの、さらに深いスキル領域……!
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