4 バルツを、斬る
俺はふたたび突進し、バルツの四肢を切断した。
「い、いてぇぇぇぇ……だが、無駄だぞ……俺はすぐによみがえる……!」
「だろうな」
俺は地面に転がったバルツを見下ろした。
追撃は容易だが、どのみち再生してしまう。
ならば、奴が四肢を再生するまでのわずかな時間の間に、闘気を溜める。
「くおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ……!」
「ふん、攻撃してこないのか?」
「……おおおおおおっ!」
通常よりも溜めるのに時間がかかる、この闘気は――『雷光の闘気』。
俺が操る各種の闘気の中で、最速のスピードを俺自身に与えてくれる。
「今まで以上の速度で、お前を斬り続ける――動けなくなるまでな」
「っ……!」
バルツがハッとした顔になる。
そして。
先ほどまでの数倍の速度で、俺は剣を閃かせた。
何度も、何十度も、何百度も、何千度も――。
ほどなくして。
バルツは全身をズタズタに裂かれ、その場に横たわった。
「はあ、はあ、はあ……ち、ちくしょう……!」
さすがに体力を消耗しきったのか、倒れたまま起き上がれないようだ。
「終わりだ、バルツ」
俺の方は息一つ乱していない。
あの最強の堕天使ノアに比べれば、はるかに温い相手だった。
「お前はすでに人間じゃない。人を襲う堕天使――いや、怪物に成り下がった」
俺は闘気でコーティングした剣を振り上げた。
「ここで斬る――」
わずかにこみ上げる躊躇を振り払う。
目の前にいる男は、もうバルツじゃない。
堕天使だ。
敵だ。
何よりも――バルツは俺を裏切った男じゃないか。
躊躇する必要はない。
……そう考えながらも、心の片隅にはそれに抗う感情があるのも事実だった。
何十年もの間、相棒として頑張ってきた男。
粗暴だが、気のいいところもあった。
俺とともに何十何百というクエストを潜り抜け、そこで結んだ絆もあった。
かけがえのない仲間であり、友だと思っていた。
俺がこの剣を振り下ろせば、バルツという存在は永遠に失われる――。
「た、助けて……くれ」
バルツが突然言った。
「えっ……?」
「頼む……助けて、くれぇぇ……」
予想外の命乞いに俺は思わず硬直した。
【お知らせ】
本作の書籍化が決定しました! これも応援してくださった読者の方々のおかげです!
下部のリンクから書報ページに飛べます。そこに1巻の予約ができるamazonのリンクが載っていますので、気になる方はぜひ~!
∴先生の素敵かわいいイラストや書下ろしエピソードを収録しています!
【読んでくださった方へのお願い】
ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある
☆☆☆☆☆をポチっと押すことで
★★★★★になり評価されます!
「面白かった!」「続きが読みたい!」「作者がんばれ!」
と思っていただけましたら、ぜひポチポチっとしていただけましたら励みになります!
「面白くなかった!」
ときは(ごめんなさい……)★1でも結構ですので、ポチっとしていただけると嬉しいです!