6 二人の中年剣士
翌日、今度は中年剣士のモーリィさんを伴い、俺は討伐クエストに挑んでいた。
標的は『リザードマン』。
その名の通り蜥蜴と人の中間のようなモンスターで、強さとしては下の上といったところか。
「大丈夫だ、モーリィさん。俺が見ている。あなたは自分の全力を出し切れば、それでいい」
助言する俺。
「安心してほしい。危険な状況になれば、俺が即座に助ける。あなたに危険は及ばない」
俺という『保険』の存在を強調し、彼を落ち着かせる。
「ジラルドさん……」
「まず剣を振ろう。実戦で、敵に斬りつける──たったそれだけでも、今のあなたには大きな経験になる」
「分かりました……っ!」
モーリィさんが剣を抜いた。
前方十メートルほどの地点にリザードマンが構えている。
と、リザードマンが突進してきた。
「くっ……!」
それほど速くはないが、モーリィさんは反応が遅れた。
がきん、と互いの剣が打ち合わされる。
五合ほど打ち合ったところで、モーリィさんが相手の攻撃を盾で受け、そのまま押しこんだ。
ぎいいっ……!?
バランスを崩したリザードマンの胴部に斬撃を食らわせる。
「くっ、硬い──」
刃が通らず、モーリィさんは後退した。
「腰を入れて。大丈夫、モーリィさんなら斬れる」
俺が背後から指示を出す。
どうやらモーリィさんの防御能力はそれなりに高いようだ。
なかなか巧みに盾を操る。
一方で、やはりネックは攻撃力。
何度斬りつけても、リザードマンの鎧に剣を弾かれてしまう。
その原因はモーリィさんの腰が引けていることだ。
きっと恐怖心のためだろう。
あれだけ腰が引けていると、斬撃に力が乗らない。
「腰を前に突き出して。体重を乗せて!」
指示する俺。
「うううっ、やっぱり怖い……」
蒼白な顔でモーリィさんがうめいた。
「……ここまでか」
俺は助けに入ることを決めた。
「じゃあ、下がってくれ。後は俺が──」
「怖いけど……私は決めたんだ。ジラルドさんのように勇気をもって戦うと……中年でもやれる、ってことを私自身が実感したい! おおおおおおおっ!」
闘志のこもった雄たけびだ。
突進して間合いを詰める。
その勢いに虚を衝かれたのか、リザードマンの動きが止まった。
今だ──。
思わず身を乗り出す俺。
完全に応援モードである。
次の瞬間、モーリィさんの一太刀がリザードマンの胸元を斬り裂いた。
ぐおおおおおおっ……!
絶叫とともに後ずさるリザードマン。
「くっ、腕が……」
だけどモーリィさんは追撃できない。
剣を振り続けたその両腕は、すでに限界だったらしい。
がしゃん……と、剣を取り落としてしまう。
その間にリザードマンが体勢を立て直し、向かってきた。
「う、うわぁっ……」
「よくがんばった」
俺はモーリィさんの前に出た。
「ソフィア、頼む」
「はい、ジラルドさん」
ソフィアが俺に【全盛期ふたたび】のスキルをかけた。
力が、みなぎる。
俺は剣の表面を闘気でコーティングし、硬質化させた。
そして、一閃。
リザードマンの首が宙を飛んだ。
「す、すごい……こんなにもあっさりと……!」
驚くモーリィさん。
「今日はこれで十分だ。こういう実戦を積み重ねていけば、もっと強くなれる」
「は、はい……少しだけ、自信がついた気がします」
「よかった」
俺はモーリィさんと微笑み合った。
一人で倒すところまではいかなかった。
だけど、見事な戦いぶりだった。
きっと今回のクエストは、モーリィさんにとって自信になっただろう。
後はこういった経験を重ねていくことだろう。
今度は、できれば一人で討伐を成し遂げ、もっと自信をつけてほしい。
精神面の向上こそが、モーリィさんにとっての最大の伸び代だろうから──。
【読んでくださった方へのお願い】
ページ下部にある『ポイントを入れて作者を応援しましょう!』のところにある
☆☆☆☆☆
をポチっと押すことで
★★★★★
になり評価されます!
「面白かった!」
「続きが読みたい!」
「作者がんばれ!」
と思っていただけましたら、ぜひポチポチっとしていただけましたら励みになります!
「面白くなかった!」
ときは(ごめんなさい……)★1でも結構ですので、ポチっとしていただけると嬉しいです!