5 高まる想い
戦いが終わったので、ソフィアにいったんスキルを解除してもらった。
まだ他にもモンスターがいるかもしれないからな。
そのときに備えて、できるだけ効果時間を温存しておかないと。
俺たちはふたたび歩き出した。
と、ソフィアの表情が少しくらい。
「どうした、ソフィア?」
「みんな積極的だなぁ、って」
彼女がぽつりとつぶやいた。
「えっ」
「ジラルドさんにアプローチして……私はあんな風にはできません……」
「ソフィア……?」
「私は、あなたにとって……どういう存在ですか……?」
か細い声は俺に対する質問なのか、それとも独り言だったのか。
「これでクエスト完了、っと♪」
「えへへ、戦闘能力はあんまり自信ないけど、効率よく採集するのは得意なのよね」
「採集ならあたしたちにお任せ~!」
彼女たちがにっこりと告げる。
アリアンが【観察眼】のスキルで木の実の位置を探り、ルルが【収穫】のスキルで木の実を次々にもぎ、シェーラが【収納】スキルで集めた木の実を異空間にしまいこむ。
あちこちに生っている『リィスの木の実』を三人であっという間に集めてしまった。
「確かに、君たちのスキルはこういった採集クエストに適しているようだな」
少なくとも、こと『採集』という分野なら、俺よりも彼女たちの方が勝っているだろう。
冒険者のクエストは討伐だけじゃない。
採集や護衛など何種類もあるんだ。
採集関係については、彼女たちがこなしてくれそうだった。
正直、心強い。
と──、
きゅいいいいいいいいいいいいいいんっ。
甲高い声とともに、前方で何かが蠢いた。
「えっ、何!?」
「やだ、まさか──」
「触手を持つ者か!」
茂みをかき分け、俺たちの前に巨大なシルエットが姿を現した。
全長10メートル近くあるだろうか。
ウツボカズラを連想させる姿。
その全身から無数の触手が飛び出している。
テンタクラー。
食人植物のモンスターである。
「また俺の出番だな」
剣を抜いた俺が、三人の前に出る。
「ソフィア、頼む」
「スキル……発動!」
彼女は俺の手を握り、スキルを使った。
いつもなら離れた場所から、スキルの光を俺に向かって飛ばすのだが、今日は少しパターンが違う。
「ソフィア……?」
突然手を握ってきた彼女に困惑する俺。
「私だって──あなたの側にいたい、です」
「えっ」
「だから、もっとあなたの役に立ちたい」
ソフィアが熱のこもった声で告げた。
俺を見つめる瞳が、爛々としている。
俺は普段と違う様子の彼女に、ますます困惑する。
おとなしい彼女にしては珍しいほど情熱的な雰囲気だ。
そう──まるで彼女の母親のレフィアのような。
ボウッ……!
俺の全身から黒い闘気が立ち上った。
「これは──!?」
いつもよりも、闘気量が多い気がする。
いつも以上に力があふれてくる。
スキル効果が高まっているのか──?
疑問に思いながらも、俺は剣を掲げた。
一刀のもとにテンラクラーを斬って捨てる。
まさしく、瞬殺。
斬撃の威力もまた、いつもよりも高い気がした。
「こうやって触れ合ってスキルを使った方が、効果が上がるようですね」
と、ソフィアが言った。
その表情は凛々しく引き締まっていた。
「なーんだ、てっきりあたしたちに見せつけてるのかと思っちゃった」
アリアンが悪戯っぽく笑う。
「っ……! ち、違います……!」
ソフィアはたちまち真っ赤になってうつむいた。
──ともあれ、採集クエストはこうして終了した。
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