5 封印解除
「待ってください、あれは──」
ソフィアが前方を指差した。
ミリエラが両断し、地面に転がる魔導兵器たちの残骸。
そのうちの一つが、淡く発光していた。
「まさか……」
ハッとなった。
「離れろ、ミリエラ!」
とっさに叫ぶ。
切断されたパーツが次々と浮かび上がり、空中で合体していく。
地面に降り立ったそれは、先ほどよりも一回りほど巨大になっていた。
肩や腕、足パーツがゴツゴツとした黒騎士、といった姿だ。
「マスターと同じ……魔力波長……」
魔導兵器がミリエラを見て告げた。
「古代種エルフを……発見……」
言って、恭しい仕草でミリエラの前に跪く。
まるで主人にかしずく騎士そのままの仕草。
「えっ、何こいつ──」
一方のミリエラは戸惑っていた。
「お待ちしておりました……ですが、古代種エルフ以外の存在は邪魔となります……今、排除します……」
「えっ、ちょっとちょっと!」
ミリエラが叫ぶ。
「さっきから一方的な展開でわけが分かんないよー」
「限定解除……邪魔者を、排除……」
ヴ……ン。
魔導兵器の両目が妖しく輝く。
がしゃ、がしゃ、と騎士鎧のような表面装甲が外れた。
その下から現れたのは黒く滑らかな素材でできたむき出しの骨格。
頭部も鎧が外れ、髑髏に似た顔が露出する。
騎士というより、骸骨剣士じみた姿だった。
「排除……」
告げて、剣を振り下ろす魔導兵器。
「危ない!」
俺はとっさにソフィアを押し倒した。
「きゃあっ、ジラルドさ──」
「伏せていろ!」
直後、爆風と衝撃波が周囲に吹き荒れる。
高密度魔力の斬撃──。
それが巻き起こした現象だ。
地面に伏せたとはいえ、多少のダメージは受けてしまった。
「ジラルドさん……」
「大丈夫か、ソフィア」
「私は平気です。あなたが守ってくださいましたから……」
頬を赤く染めて、俺を見上げるソフィア。
「かなり危険な相手らしい。いつものスキルを頼めるか?」
本調子じゃないなどと言っている場合ではなさそうだ。
「あ、はい! 今すぐ!」
ソフィアは俺を見て、何かに気づいたようにハッとした顔になる。
頬がますます赤くなった。
「どうしたんだ?」
「い、いえ、その……く、口づけを……」
「?」
「あ、普通にスキルを使えばいいんですよね! すみません!」
なぜか慌てた様子のソフィア。
「…………………………前みたいに、ジラルドさんに口づけした方がいいのかと思って……その……」
か細い声で付け加える。
確かに、彼女とキスを交わした後、スキルの効果が爆発的に高まったことがあった。
あの第一階位堕天使ノアとの決戦時だ。
ただ、今回はそこまでの効果がなくても大丈夫だろう。
……というか、ソフィア相手に気軽にキスなどできるはずがない。
「スキル【全盛期ふたたび】──発動!」
ソフィアが俺に向かって手をかざす。
次の瞬間、俺の全身からすさまじい力が沸き上がった。