2 ミリエラのクエスト1
「今回は探索クエストだ。とある魔法使いが作り上げたダンジョンの奥で、危険な魔導兵器が発見された──ということで、その調査だな」
俺はミリエラに説明した。
「魔導兵器……」
「行く手にはモンスターも生息しているし、剣も魔法も両方の腕が問われることになると思う。魔法剣士のミリエラにはちょうどいいクエストだな」
「なるほど~。あたし、がんばるねっ」
ミリエラは元気いっぱいに返事をした。
「それと、今回はもう一つのパーティと共同でクエストに当たる。彼らとの連携や共闘も学んでほしい」
「他の人たちと力を合わせて……ってこと?」
「そうだ」
「んー……そっちはちょっと苦手」
ミリエラが少しだけ顔をしかめた。
「何事も経験だ」
「分かった。師匠がそう言うならがんばるっ」
「その意気だ」
俺はにっこりと笑った。
「ふーん……あんたたちと組むわけね」
共同でクエストに当たるパーティとの顔合わせで、リーダー格らしき女が鼻を鳴らした。
俺はミリエラの付き添いで、基本的に彼女のサポートはしない。
あくまでも万が一のための保険である。
向こうのパーティは女だけの三人組だった。
リーダー格がナイフ使い。
燃えるような赤毛をショートヘアにしており、露出の多い革鎧を身に付けている。
他の二人は魔法使いと魔法剣士のようだ。
「あたしはバーバラ、そっちの二人はカトレアとリズ。あたしらが若い女ばかりだからって鼻の下伸ばさないでよ、おっさん」
リーダー格の女……バーバラが俺をにらんだ。
なかなか辛らつだった。
「ああ、気を付ける」
「この間も共同クエストで中年の剣士と組んだんだけど……あたし、お尻触られたんだよね」
「俺はそんな卑劣なことはしない」
「……ふん」
じとっとした視線を浴びせられた。
そういえば、『栄光の剣』を追い出されたときはセクハラの冤罪をかぶせられたな。
嫌なことを思い出してしまった。
「どしたの、師匠?」
「……いや、なんでもない」
きょとんとしたミリエラに俺は笑って答えた。
過去を振り返ってどうする。
今の俺は『癒しの盾』の一員だ。
先輩冒険者として、ミリエラをしっかり指導するんだ──。
ダンジョン探索が始まった。
「彼女たちはそれなりに経験がありそうだし、まずそれに合わせることだな」
俺はミリエラに言った。
「ダンジョン内では何が起こるか分からない。生息しているモンスターが襲ってくるかもしれないし、罠が仕掛けられていることだってある。しかも視界が暗い。開放空間での戦闘とは違うからな」
「りょーかいだよ、師匠」
ミリエラが元気よく返事をする。
「──ふん、ガチの初心者か。あたしらの足を引っ張らないでよ」
バーバラが言った。
「あ、ちょっと感じわるーい」
「初心者は黙ってな」
「ますます感じわるーい」
言いかけて、ミリエラが前方を指さした。
「そこ、魔法の罠が仕掛けられてるよ。気を付けてね、おねーさん」
「は?」
彼女が振り返った瞬間、床が発光する。
同時にそこから巨大な剣が飛び出してきた。
侵入者を抹殺するためのトラップか!
剣がバーバラの胸を突き刺そうと迫る──。
「えいっ」
刹那、ミリエラが剣を抜いて魔力衝撃波を放った。
青く輝くエネルギーの刃が、バーバラを襲う剣を弾き飛ばした。
「ひっ……」
バーバラはその場にへたり込む。
「あぶなかったねー」
対して、ミリエラはにっこりと笑っていた。
今のは初心者とは思えない落ち着いた対応だった。
俺が思っていたより、ずっとしっかりしているんだな……。
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