8 重なる心
「ぐっ……!?」
だが、俺はあっけなく押しこまれてしまった。
闘気の鎧のあちこちに亀裂が走る。
ノアの攻撃の威力に耐え切れなかった──わけではない。
「力が……抜けていく……!?」
全盛期の闘気を維持できない。
まさか、これは──スキルの効果が切れたのか!?
効果時間はまだ数分以上持つはずだが……。
虹色の闘気を使用したことで、効果切れまでの時間が一気に早まった……?
「ぐああっ……」
闘気の鎧が完全に砕け散り、俺は大きく吹き飛ばされた。
「形勢逆転ね」
巨大なカマキリ──ノアの光想体が勝ち誇るように笑った。
巨体をゆすると、あっという間にカマや節足が復元する。
一方の俺は、立ち上がれなかった。
「力が入らない……」
歯噛みする。
「ジラルドさん!」
ソフィアが飛び出してきた。
「やめろ、こっちに来るな!」
慌てて叫ぶ俺。
「っ……! スキルの効果が切れたんですね」
「ああ、力の配分をしくじったらしい……」
息を呑むソフィアに俺はうなずいた。
「全盛期の闘気が使えないとなると──戦況は絶望的だ。ノアを倒すことより、里の人間を無事に逃がすことをまず考えるべきだろう」
「ジラルドさん……」
「そのためにも、俺がノアを引きつけなければ──」
「そんな! 一人であの怪物を引きつけるなんて無理です!」
ソフィアが悲痛な表情で叫んだ。
俺に向かって手をかざし、
「スキル──発動!」
だが、いつものスキルの輝きは現れない。
やはり効果時間を過ぎているからだろう。
「やはり無理だ」
「いえ、まだです……っ!」
ソフィアが俺を抱きしめる。
「前にこうやってスキル効果が戻ったことがありましたよね!? 今度も──」
しかし、現実は非情だ。
しばらくそうやって抱きしめてもらっても、スキルが再発動する気配はなかった。
「この期に及んで何をやっているの?」
頭上からノアの声がした。
「作戦でもあるのかと思って、わざわざ待ってあげたんだけど──ただイチャついているだけかしら? まったく人間という生き物は……」
その複眼にまばゆい輝きが宿る。
まずい、また聖力弾を放つ気か!?
今の俺では、もう防げない──。
「お願い……ジラルドさんに、力を……!」
ソフィアが涙ながらにつぶやく。
「お願い……っ!」
突然、柔らかな感触が俺の唇を塞いだ。
ソフィア──?
かつての恋人の娘との口づけは甘く、同時に背徳的な味がした。
直後、周囲に虹色の輝きがあふれ出す。
「この光は──時空の渦……!? 何だ、これは……!?」
頭上でノアの戸惑いの声が響いた。
俺やソフィアの周囲を覆う輝きは、さらに光度を増していく。
そして──。
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