6 虹色
「光栄に思うがいいわ、『黒き剣帝』。この力を人間に振るうのは初めてよ」
ノアがゆっくりと両手のカマを振りかぶった。
「本来なら『原初の神』の軍勢と戦うための形態──天使や神を相手にしか使わないはずだった力を、たかが人間に使うのだから」
カマが、振り下ろされる。
同時に、視界が大きく揺らいだ。
「っ……!?」
とっさに大剣を跳ね上げ、渾身の斬撃を放つ。
俺とノアの攻撃がぶつかり合い、周囲が激しく揺れた。
衝撃波が吹き荒れ、吹き飛ばされないように俺は大剣を地面に突き立てる。
ふと前方を見ると、空中に黒い線のようなものが走っていた。
あまりにも強大なエネルギーによって、空間が裂けたのだ。
「『次元断裂』──かつて邪神シャルムロドムスが使った技か……!」
「そう。この形態の私は、邪神様と同じ技を使える。いくらあなたがかつて邪神様を封じたとはいえ、一対一でそれを成したわけではないのでしょう? 邪神クラスの力を持つ私に、たった一人で対抗できるかしら?」
ノアがふたたびカマを振りかぶった。
なるほど、『今の私に対抗できる者など、存在しない』という言葉もあながちハッタリではなさそうだ。
神気も、そして攻撃も邪神クラスとは……。
「ふふふ……さっきの戦いでは『私の攻撃を読める』と言っていたわね。だから、パワーやスピードで勝る私が、あなたに一撃も当てられない、と。だけど──今の私ならどうかしら?」
視界が、歪む。
ノアが、ふたたび空間を断ち切る攻撃を放ったのだ。
「ちいっ」
俺は斬撃波を放ってそれを相殺する。
が、俺の周囲はかろうじて被害を免れたものの、異能の里全体に斬撃の余波が広がっていた。
研究施設は軒並み倒壊し、大地が裂け、無数の悲鳴が聞こえてくる。
ミーシャが僧侶魔法で自身とソフィア、ブイドーラを守っているが、さすがに他にまでは手が回らないようだ。
「いつまで防ぎきれるかしら、『黒き剣帝』」
ノアがみたびカマを振りかぶった。
大技連打で押し切ろうという心づもりか。
このままでは里が壊滅する……!
「もう一度言うわよ。邪神様と同等の戦闘力を備えた今の私に、あなたでは絶対に勝てない!」
カマが振り下ろされる──。
その直前、
「一つ、勘違いをしているな。ノア」
俺は大剣を振るった。
放った斬撃波は、通常闘気の『黒』ではない。
『紅蓮』の赤でも『疾風』の緑でも『雷光』の紫でも『大地』の焦げ茶でも、その他どの闘気の色でもなく──。
虹色の輝きをまとっていた。
「なっ──!?」
ノアが驚愕の声を上げるのと同時に、巨大なカマが半ばから折れ飛んだ。
「い、今の威力は……!」
「かつての大戦で、俺は邪神と一対一で戦い、勝利した」
虹色の闘気をまとい、俺はノアに言い放った。
「邪神と同レベルの力を身に着けようとも──君は、俺には勝てない」
言いながら、全身が激しく軋む。
さすがにこの技は体への負担が大きい。
あまりにも、大きすぎる。
闘気だけは全盛期に戻っているとはいえ、体自体は中年の俺にどこまで耐えられるか……?
だが、やるしかない。
これ以上、ノアの攻撃を許したら確実に里が壊滅する。
その前に、次の一撃で俺が彼女を倒す──。
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