表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

44/141

4 告白

「な、なんだ、急に──」


 俺は声を上ずらせた。


 頬が、熱くなる。

 まるで十代の少年のような初心な反応だ──などと、頭の片隅で考えてしまう。


 とはいえ、さすがにミーシャからそんなセリフを聞くとは完全に予想外だった。

 思わずうろたえるのも仕方がないことかもしれない。


「もう時効かな? 私ね、あのころ──君のことが好きだったのよ」


 ミーシャが微笑む。


 三十年近くの時が経っているのに、まるで当時のままのような可憐な笑顔だった。


 俺だって、彼女のことを女性として意識していなかったわけじゃない。

 ただ、当時の俺にはすでにレフィアという恋人がいた。


 ミーシャのことは魅力的な女性だと思っていたが、それが恋愛感情にまで発展することはなかった。

 努めて『戦友』として接してきたつもりだ。


 それにミーシャの方は最初から俺のことを戦友だと思っているのだとばかり──。


「変わらないよね。あのころも、今も。女の気持ちにはとことん鈍感なの」

「そんなふうに言われるほど、俺はモテたわけじゃない」

「えー、ジラルドのことをいいって言ってる女の子、けっこういたんだよ?」


 ミーシャがクスリと笑った。


「君は戦いのことばっかりだったし、レフィアさん一筋だったし、全然気づいてなかったんだろうけど」

「そ、そうなのか……」

「すぐ身近にいた私の気持ちにも気付いてなかったくらいだからね」


 言って、ミーシャの笑みが苦笑に代わる。


「なんて、年甲斐もなく拗ねちゃった。私もけっこう未練がましいよね。この気持ちを伝えることは一生ないと思ってたのに、君に再会したらつい……」

「ミーシャ……?」

「あの堕天使と戦って──正直、殺されるかもしれない、って思ったのよね。私も年を取ったからかな……大戦のときみたいな絶対的な自信が持てなくなっちゃって」


 ミーシャの横顔は寂しげだった。


「死ぬ前に、この想いを伝えたい……なんて、ね。えへへ、突然こんなこと言い出してごめんね、ジラルド。さっきの言葉は全部忘れて」

「ミーシャ……」


 俺は小さく息をつき、


「いや、君の気持ちは嬉しく思う。ありがとう」

「……ちょっとは脈ありだったら、いいな」

「えっ」

「ううん、なんでもない……っ」


 ポツリとつぶやいたミーシャは、すぐに慌てたような表情で首を振ったのだった。


    ※


 その日は、Bランクモンスター『ライトニングリザード』の群れを討伐するクエストを受けていた。


「はああああああっ!」


 ヴェルナが気合いとともに左右の剣を振り下ろす。

 モンスターを一撃でX字に切り裂き、打ち倒した。


 ヴェルナは、深紅の髪を長く伸ばした美しい少女剣士だ。

 年若いながらも、その腕は確かで、Aランクの冒険者に認定されている。

 以前に所属していた老舗の強豪ギルド『栄光の剣』でもエース格として迎えられていたほどだ。


 実際、並の冒険者なら集団でなんとか対処できるクラスの『ライトニングリザード』を複数一度に倒せることが、彼女の卓越した剣技を示していた。


「ふん、Bランクモンスター程度、いくら集まってもあたしの敵じゃないわ!」


 勝気に叫ぶヴェルナ。


「さあ、どんどん来なさい──」


 言いつつ、側面から迫る別の『ライトニングリザード』を斬り伏せた。


 が、まだまだ敵モンスターの数は多い。

 今度は五体の『ライトニングリザード』が集まってきた。


「さすがに五体同時は厳しい──なんて言うと思った?」


 ヴェルナが素早く飛び下がる。

 同時に、


「上級火炎魔法──『烈火魔導咆(れっかまどうほう)』!」


 後方に控えていた魔法使いの少女が、青い炎を放った。

 Aランク以上の魔力があって初めて発動可能な、大火力呪文である。


 効果範囲が狭いのが難点だが、モンスターがこれだけ一か所に集まってくれれば──、


 ぐごおぉぉぉぉううんっ!


 青い炎の渦は『ライトニングリザード』をまとめて焼き払った。


「いいタイミングね、リーネ」


 ヴェルナが五体を引きつけ、そこに彼女が必殺の火炎呪文を叩きこむ。

 打ち合わせ通りの見事な連携だった。


「ふふん、当然ですわ」


 金髪縦ロールのあどけない少女は、自慢げに胸を張った。


 リーネ・ガウディオーラ。

 先日この『守護の剣』に加入した冒険者で、かつての英雄『白の賢者』の孫娘だ。

もし『面白い』『続きが気になる』と思ってもらえましたら、最新話の下のフォームから、ポイント評価をお願いします。

ぽちぽちっと押すだけで簡単に評価できます。

どうぞ応援のほどお願いいたします!m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!



▼こっちの新作もぜひ!▼

実家を二度追放された俺、弱小国に拾われて無双の英雄となる。
【スキル鑑定・極】が発現して、騎士や魔法使いたちの能力を片っ端から底上げしてたら、いつのまにか世界最強国家になっていたようです。




▼書籍版2巻、11/2発売です!▼

ブラック国家を追放されたけど【全自動・英霊召喚】があるから何も困らない。
jdyu5w8o6t2ae4b1hjwslwuver50_18a6_1d0_1xo_1o9ld.jpg
― 新着の感想 ―
[気になる点] ジラルドが死ぬまで待てばいい話だなぁ。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ