表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

42/141

2 迫る決戦

「貴様あああああああああああああああああああああっ!」


 ガリアヴィエルの怒りは頂点に達したようだ。


聖武具召喚(ディルヴァロ)……!」


 その手に光が弾けたかと思うと、巨大な斧槍が出現した。

 彼専用の武具『グラーシーザ』である。


「へえ、戦うつもり?」


 一方のノアは武具を召喚しない。

 人間界に一定時間とどまっていたせいで、それなりのダメージを追っているが、ガリアヴィエル相手なら問題あるまい。


「武具も必要ない。素手で叩きのめしてあげる」

「愚弄するな!」


 ガリアヴィエルが斧槍を振りかぶる。


 その刃先がまばゆい燐光を放った。


「へえ……」


 ノアが目を細めた。


 さすがにすさまじい神気だ。

 エネルギー量だけなら、決して侮ることはできない。


「といっても、私の敵じゃないけど」

「ぬかせ!」


 ガリアヴィエルが斧槍を振り下ろす。

 ノアは対抗するため、両手を掲げ──、




「──よさぬか」




 重々しい声が二人の動きを止めた。


「かつての『六蓮華』筆頭が仲間討ちとは。何をやっておるか、ガリアヴィエル」

「は、ははっ……お恥ずかしいかぎりで」


 ガリアヴィエルがかしこまる。


「あーあ、怒られちゃった」


 くすりと笑うノア。

 ガリアヴィエルは憎々しげに彼女をにらんだ。


「ノア、お前もだ」


 邪神が今度はノアをたしなめる。


「人間界に行って消耗が激しいのだろう。無理をすれば消滅しかねんぞ」

「平気ですよ。ちょっと休んだら、また人間界に行ってきます」


 ノアが微笑んだ。


「『黒き剣帝』の居場所は分かりました。すぐに始末してきますね」

「ノア……」

「人間ごときに手こずって逃げかえるという屈辱を晴らせないなら──消滅したほうがマシです、邪神様」


 ノアが首を左右に振った。


 可憐な少女然とした顔に険しい表情が浮かんでいる。

 つぶらな瞳には激しい闘志の光があった。


「徹底して人間を見下し、邪神の眷属である誇りを貫く──その意気や、よし」


 邪神が満足げにうなずく。


「ならば、ふたたび行くがよい。我が力の一部を授けよう。さすれば、活動時間も少しは伸びよう」

「邪神様、それは──」

「我の復活はその分、遠のく。だが汝が示した眷属の意地と誇り──それに報いたくなってな。さあ、持っていけ」


 邪神の手から紫色の輝きが飛ぶ。

 その輝きがノアの全身を包みこんだ。


「く……ああああああああああああああああああああああああああっ……」


 絶叫。


 同時に彼女の胸元からまばゆい光があふれた。


 光は収束し、長剣の形を作り出す。

 彼女専用の聖武具『フラガラッハ』だ。


「力だ……力があふれてくる……!」


 その剣を手にしただけで、全身から熱い神気が湧き上がってくる。

 剣自体になんらかの力が宿っているかのようだった。


「邪神や堕天使の力の源は『心』だ」


 告げる邪神。


「限界まで消耗してもなお、人間に対する敵意と堕天使であることの矜持を燃やすお前になら──お前のその心なら、我が力を使いこなせよう。お前の剣に宿した我が力の欠片を、な」

「ありがとうございます、邪神様」


 ノアは満足感たっぷりにその長剣を見下ろした。


 彼女の新たな専用聖武具──『真フラガラッハ』というべきだろうか。

 あの『黒き剣帝』が相手でも、これならいとも簡単に斬り伏せられそうだ。


「ただし、消耗しているのは事実だ。三日の休息を命じる」


 邪神が静かに告げた。


「そんな、私はすぐにでも──」

「消耗した状態で振るえるほど、我が力を注いだ武具は甘くないぞ」

「……それは」


 口ごもるノア。


 確かに、この聖武具は強力な分、膨大な神気を消費するようだ。

 今のノアでは存分に力を発揮する前に、力尽きるかもしれない。


「三日後、あらためて『黒き剣帝』の抹殺を命じる。その途上で多少人間界を破壊してもかまわん。存分に暴れるがいい」

「承知……しました」


 悔しさを押し殺し、ノアはうなずいた。


 早く回復させねば。

 早く──この剣で世界中の人間どもを斬ってやる。


 そんな衝動に駆られながら。


    ※


 俺はミーシャやザインとともに第四研究所まで戻ってきた。


 ミーシャは自分自身に回復魔法をかけ、なんとか動けるようになったが、大きなダメージを受けていることに変わりはない。

 俺は意識を失ったままのザインを担ぎ、研究所内で医療スキルを持つ職員に引き渡した。


「ご無事で何よりです、ジラルドさん」


 ソフィアがホッとした様子で出迎えてくれた。


「なんとか……な」


 闘気技を連発した反動もあり、俺は疲労を隠せなかった。


 スキルの効果が切れた後の脱力感が、いつもよりも大きい。

 それだけノアが強敵だったということだ。


 何度斬り殺しても即座に復活する第一階位堕天使。

 奴を倒す術はいまだ見つかっていない。


 再戦のときに備え、次は確実に倒さなければ──。

もし『面白い』『続きが気になる』と思ってもらえましたら、最新話の下のフォームから、ポイント評価をお願いします。

ぽちぽちっと押すだけで簡単に評価できます。

どうぞ応援のほどお願いいたします!m(_ _)m

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
↑の☆☆☆☆☆評価欄↑をポチっと押して

★★★★★にしていただけると作者への応援となります!


執筆の励みになりますので、ぜひよろしくお願いします!



▼こっちの新作もぜひ!▼

実家を二度追放された俺、弱小国に拾われて無双の英雄となる。
【スキル鑑定・極】が発現して、騎士や魔法使いたちの能力を片っ端から底上げしてたら、いつのまにか世界最強国家になっていたようです。




▼書籍版2巻、11/2発売です!▼

ブラック国家を追放されたけど【全自動・英霊召喚】があるから何も困らない。
jdyu5w8o6t2ae4b1hjwslwuver50_18a6_1d0_1xo_1o9ld.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ