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8 雷光の闘気

「ザイン!」


 俺は神操兵の胸元に向かって呼びかけた。


「ぐ……うう……」


 わずかに反応したのか、体をよじらせるザイン。


 だが、それだけだった。

 俺たちに対して、それ以上の反応を見せない。


「神操兵の動力源にされた人間は意識を失い、生体エネルギーを供給するためだけの存在になる……命が尽きるまでね」


 ミーシャが言った。


「少なくとも大戦時の神操兵はそうだったはず」

「命尽きるまで、か。その前に助け出す!」


 俺は右手をまっすぐに突き出した。


 思い浮かべる。


 強烈に。

 鮮明に。


 鋭い刃を持つ、長大な剣。

 それらが飛翔するイメージを。

 それらを矢のように射出するイメージを。


「闘気解放──収束」


 俺の周囲に闘気で生み出された剣が次々に出現した。

 全部で三十本。


「行け。ザインを救え」


 俺の意思を受け、闘気剣がいっせいに放たれる。

 イメージ通り、矢のように飛んでいったそれらは、神操兵の胸元に飛びこみ、ザインの拘束具に斬りかかる──。


 がきんっ!


 その瞬間、ザインの体に突き刺さっていた剣鎖の一部が抜け、俺の闘気剣を弾き飛ばしてしまった。


「攻撃を感知。迎撃態勢に入る」


 さらに二本、三本……すべての闘気剣が剣鎖によってあっさりと防がれた。


「あれは──」

「自動防御反応のようだね。遠距離からでは、あの拘束具を斬るのは難しそう」


 と、ミーシャ。


 直接切りつけるならともかく、この距離からの斬撃だとどうしても単調な攻撃軌道になってしまう。

 敵からすれば見切るのは簡単だろう。


「こっちの取れる手立ては、基本的に二つだね」


 ミーシャが言った。


「彼の救出を諦めて、彼ごと神操兵の動力部を破壊するか。あるいは──」

「奴の反応が追いつかない速度で拘束具を斬ればいい」


 俺は剣を構え直した。


「方針は変わらない。ザインを助ける。奴を倒す。その二つを同時に成し遂げるんだ」

「……ジラルドらしいね」


 ミーシャが苦笑した。


「君だって、ザインを見捨てる気なんてないんだろう」

「私は武闘家であると同時に、僧侶だもの。生きとし生けるものすべてを慈しみ、すべてを救うために戦う──それだけよ」


 にっこりと微笑む彼女。


「『雷光の闘気』を使う。サポートを頼めるか、ミーシャ?」

「了解っ」


 ミーシャはうなずき、前に進み出た。

 今度は彼女が前衛で、俺が後ろに回る陣形だ。


「こっちよ!」


 ミーシャが走る。


 走りながら拳や蹴りを放ち、その風圧で神操兵を牽制した。

 奴の注意を引きつけてくれているのだ。


「おおおおおおおおっ……!」


 俺はその間に、闘気を溜める作業に入った。


 全身を覆う黒いオーラが、紫色に変わっていく。

『速さ』に特化した闘気──『雷光の闘気』。


 これは溜めるのに、他種の闘気よりも時間がかかる。

 俺はひたすらに意思の力を奮い立たせ、闘気を増幅させ続けた。


 この間は、俺も半ば無防備になる。

 意識のほとんどを、闘気の増幅やチャージに振り分けざるを得ないからだ。


 そこを攻撃されたらひとたまりもない。

 だから、俺が闘気をチャージする時間を、ミーシャが稼いでくれているのだった。


 神操兵をただ倒すだけならともかく、ザインを救い出すとなると、俺一人では難しかったかもしれない。


 ──ありがとう、ミーシャ。


 あらためて、かつての仲間に感謝する。


「闘気放出」


 俺は紫色の闘気を背後に噴き出し、一気に飛び上がった。

 まさしく、雷光のごとき速度で瞬時に神操兵の胸部へと肉薄する。


「侵入者発見。迎撃態勢に入る──」


 無数の剣鎖が俺に向かってくる。

 だが、もう遅い。


「そこはすでに俺の間合いだ」


 闘気でコーティングした超巨大剣を旋回させて連撃を放った。


 秒間、約一千。

 俺の連撃は剣鎖を一本残らず切り刻んだ。


 冥皇封滅剣(めいおうふうめつけん)、五の型・(きわみ)──【雷導瞬刃(らいどうしゅんじん)】。


『雷光の闘気』を噴出力に変えての高速突進から、さらに高速連続斬撃につなげる技。

 移動も、攻撃も、すべてが雷速ともいうべき速さを極めた奥義だ。

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