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3 聖杯機関

 俺とソフィアは老婆──ブイドーラの案内の下、『研究所』へと向かっていた。

 そこでソフィアのスキルを本格的に調べる予定だ。


 道すがら、ブイドーラから簡単な説明を受けた。


 ソフィアのスキルは、基本的にはやはり本人の認識通り【体調回復(特効)】で間違いなさそうだ、ということだった。


 普通は、スキルをかけられた者の体調が全回復するだけ。

 だが俺の場合にかぎり、なぜか『全盛期の闘気を一定時間使いこなせるようになる』という現象が起きている。


 これは、ソフィアのスキルが時空間にある種の干渉をしているからではないか、とブイドーラは自分の推測を語ってくれた。


「時空間に干渉……?」

「お前の闘気生成能力、制御能力などを全盛時まで戻す──能力面の一部だけが時間をさかのぼって若返っている──といったところかの」


 と、語る老婆。


「時間をさかのぼるとか、私にそんなすごい力があるとは思えないんですが……」

「お前さんは『時使い』の一族の血を引いているんだ。時空干渉系のスキルを身に着けていて不思議じゃないさ」


 戸惑うソフィアにブイドーラが言った。

 と、


「……またあんたらかい」


 いきなり足を止める老婆。


 前方から十数人の集団が歩いてくる。

 いずれも白い詰襟軍服のような制服をきた一団だ。


「この里はよそ者をあまり歓迎しないんだ。そう頻繁に来られちゃ困るねぇ」


 不快げに彼らをにらむブイドーラ。


「『聖杯機関』か」


 俺は一人ごちた。


「邪神の気配が強まっていることを察知して、あたしらの里にも協力要請を出してきているのさ」


 ブイドーラは忌々しげに口先をゆがめた。


「邪神大戦のときみたいに、今回も人類全体の主導権を取り、自分たちこそが救世の組織だとアピールしたいんだろうさ」

「……かもしれないな」


 邪神軍迎撃用汎人類組織──通称を『聖杯機関』。


 それは、かつての邪神大戦において人類側の戦力をまとめ、主導した組織の名だ。


 正直、俺は彼らにあまりいい印象を持っていない。

 当時いろいろあったからな……。


「我々とて多忙を極めている。頻繁に来たくなどない」


 先頭に立つ青年が顔をしかめた。


「だが、邪神軍の封印を強化する能力者を探し、育成するのは急務である。よって、ここには進捗確認のために来ざるを得ん」

「そう都合よく封印の強化をできる能力者なんて出てこないさ」

「それをなんとかするのがお前たちの役割だろう」


 青年の態度は傲慢だった。

 完全に上から目線である。


「我らは人類を代表して要請している。全力で応えろ。いいな?」

「偉そうだねぇ」


 ブイドーラが顔をしかめる。


「貴様! 全人類のために日々命がけで戦っている我らに、何たる言い草か!」

「我らに対する敵意は、全人類に対する敵意ぞ!」

「さすがにそれは思い上がりが過ぎるだろう」


 俺は辟易して前に出た。


「なんだ、貴様!」

「冒険者風情が! 引っこんでいろ!」


 かつての大戦時は、上位の冒険者が対邪神軍の主力だったこともあり、聖杯機関も冒険者に一定の敬意や遠慮があった。

 だが平和が続いていくうちに、それらは失われたのだろうか。


 彼らの態度から感じられるのは、他社への優越感と増長……それだけだった。

 殺気だった表情で俺たちを取り囲む彼ら。


 俺も反射的に身構えた。


 素の実力で、彼らを制圧できるだろうか?

 最悪の場合は、ソフィアにスキルをかけてもらうしかない……か。


「──待て。その男に手を出すな」


 今にも飛びかかりそうな彼らを制したのは、落ち着きのある渋い声だった。


「君は──」


 彼らの背後から歩いてくる男を見て、俺はハッとなった。

 見覚えのある顔だ。


「やはり、ジラルド・スーザか」


 白い軍服風の制服にいくつもの階級章を身に着けた五十がらみの男だった。


「あれから三十年近く……年を取ったな」

「ああ、お互いにな」


 俺はニヤリと笑う。


 聖杯機関の実戦部隊でもっとも多くの堕天使を狩った男──。

 かつての大戦では、ときに共闘し、ときには衝突することもあった男。


「久しぶりだ、ザイン」

これが今年最後の更新になります。今年一年、ありがとうございました。

みなさま、良いお年をお迎えくださいm(_ _)m


新年最初の更新は明日の朝10時ごろを予定しています。

来年もよろしくお願いします~!

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― 新着の感想 ―
[一言] >彼らの態度から感じられるのは、他社への優越感と増長……それだけだった。 他者
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