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3 スキル考察

2、3日留守にしている間に日間総合3位&ハイファンタジー1位になっていたようです。

読んでくださった方、本当にありがとうございます!

「じゃあ、いきますよ。ミリエラちゃん」

「ふふふ、わくわくしちゃうなー」


 ミリエラは満面の笑顔だ。


「もしかして師匠より強くなっちゃったりして」

「それならそれで、喜ばしいことじゃないか」


 俺は笑った。


「むしろ師匠を超えるのは弟子の務め。若い君は、俺のようなベテランをどんどん乗り越えていかないとな」

「──うん。ありがと」


 ミリエラは嬉しそうにうなずいた。


「師匠の言葉、胸に刻むね。あたし、がんばる」

「では、あらためて──スキル発動!」


 ソフィアが手をかざす。

 青白い輝きが、ミリエラを包みこんだ。


「どうでしょうか、ミリエラちゃん?」

「んー……なんか、体が軽くなったような?」

「試しに加速してくれないか?」


 俺はミリエラに頼んだ。


 古代種エルフ特有の、膨大な魔力を利用した超加速。

 もしミリエラが未来の全盛期の能力を備えているなら、その術もはるかにパワーアップしているかもしれない。


「えへへへー、あたしのパワーアップぶりを見て、腰抜かさないでね、師匠」

「ああ、楽しみにしているぞ」


 俺はすっかり弟子の成長を喜ぶ師匠気分である。


「加速~!」


 満面の笑みを浮かべて走り出すミリエラ。

 その全身が青い魔力の輝きに包まれ、スピードが上がり──、


「あれ~? あんまり速くなってない……?」


 首をかしげるミリエラ。


「基本的な身体能力はどうだ? あるいは魔力が上がったとか、そういう感じはないのか?」


 俺の問いにミリエラは、


「えいっ、とうっ」


 素振りをはじめ、すぐに眉を寄せた。


「やっぱり、変わらない気がするなー」

「では魔力はどうでしょう?」


 と、ソフィアがたずねた。


「ん。試してみるね。はあああああああああああああああああっ!」


 ミリエラは腰を落として気合の声を上げる。

 全身から炎を思わせる青い魔力のオーラがほとばしる。


「ふおおおおおおおおおおおおっ」


 さらにほとばしる。


「……どうだ?」


 俺は恐る恐るたずねた。


「ぜいぜいぜいぜい……」


 ミリエラは息も絶え絶えだった。

 魔力を全開で解き放ったからだろう。


「いつもよりちょっぴり調子がいいかも、くらいかなー……うーん……」


 ミリエラは悲しげにうなだれた。


「ああ、ミリエラちゃん、落ちこまないでください……」


 ソフィアが慌てた様子で彼女の肩を抱く。


「あたしは全盛期になっても今と変わらないんだ……もう成長しないんだ……うう」

「単に、スキル【全盛期ふたたび】が不発だったということはないか?」

「いえ、スキル自体はやはり正確に発動した感触があります」


 俺の問いに答えるソフィア。


「発動してなお、この効果なんじゃないかと」

「どうせどうせ」

「ああ、ミリエラちゃん、ごめんなさい」


 ふたたび慌てるソフィア。


「というか……たぶん、ジラルドさんにスキルをかけたときだけが特別なんじゃないでしょうか」

「えっ」

「ほかの人にこのスキルをかけたときは、体調がすごく良くなるだけで、ジラルドさんみたいに全盛期の力を取り戻す──といった感じはなかったので」


 ソフィアが説明する。


「じゃあ、あたしの全盛期はまだ先なんだね! いつかきっと、熱血最強魔法剣士ミリエラになれるんだねっ」

「それは君の努力次第だな」


 復活したミリエラに、俺は軽く肩をすくめた。


「あ、そういえば師匠。スキルの名前──【全盛期ふたたび】って格好悪いと思う」

「な、何?」


 ミリエラの指摘に、俺は軽くショックを受けた。

 自分ではなかなかのセンスだと思ったんだんだが……。


「私はいいと思います」


 ソフィアがフォローしてくれた。

 おお、ありがとうソフィア。


「そうかなー……?」

「ただ、あくまでも今のところはジラルドさんを相手にしたときだけの、限定的な効果ですね。他の人に使うときは、今まで通り【体調回復(特効)】と呼んだほうがよさそうです」

「確かにな」




 翌日。


「ジラルドさん、ご無沙汰しています。ソフィアさんとミリエラもお久しぶりね」


 ヴェルナが『癒しの盾』本部にやって来た。


「今日はあたしたちの新ギルド設立の報告に来ました」

「ああ、『栄光の剣』の離脱メンバーで作ったっていうギルドか」

「はい。新しいギルドの名前は『守護の剣』といいます。ここの隣町に本部を建てている最中です。新しいメンバーも順調に集まっています」

「それは何よりだ」


 彼女たちの船出が幸先いい様子で、俺もうれしかった。


「できたばかりのギルドなのでランクはFなんですが、近々Eに上がれそうです」

「じゃあ、俺たちと一緒だな」

『癒しの盾』も負けていられない。

「競争だね。どっちが先にSランクギルドになれるか!」


 ミリエラが叫んだ。


「ふふふ、負けないよー」

「あら、あたしたちだって負けないわよ」


 ふふん、と勝ち気に笑うヴェルナ。


「お互いに駆け上がっていきましょ」

「そうだね」


 そんな二人のやり取りを俺は微笑ましい気持ちで見ていた。


 いがみ合いや権力争いじゃない。

 純粋な競争心と闘争心、そしてさわやかなライバル意識。


 若者たちの熱い気持ちに触れると、俺まで気持ちが若々しくなれる気がした。


「『栄光の剣』のほうはメンバーが次々と抜けた影響でだいぶ弱体化しているようです、ジラルドさん」


 ヴェルナが俺に向き直る。


「弱体化か……」

「懇意にしていた得意先からも、いくつか取り引きを中止されているようですね。クエストをこなせる冒険者が足りないとかで」


 確かに、ヴェルナたちエース格が何人も抜ければ、当然そうなるだろう。


 取り引き中止の噂が広まれば、それによってさらに別の得意先もクエストを頼まなくなっていき、ますます実績が下がっていく──。

 負のスパイラルに入っていくかもしれない。


 ギルドマスターのバルツが招いた、ある種の自業自得とはいえ──。


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