5 アルジェラーナの奥義
「くっ、これは――」
ゴルゴーンの驚愕の声が響く。
数千数万を超える氷の刃が、彼女を全方位から切り裂いた。
発動までに時間がかかるのが欠点だが、威力は圧倒的である。
単純な魔法の『火力』という点では、あの『白の賢者』ガウディオーラをも上回っている。
「お、おのれぇぇぇっ……!」
ズタズタに斬り裂かれながら、ゴルゴ―ンの全身の傷はすぐに塞がっていく。
さすがに第一階位堕天使だけあって、超速回復能力も高いようだ。
ただ、回復に気を取られている今が、攻撃のチャンスだろう。
「攻めるなら――今だ」
俺は大剣を掲げた。
「ソフィア、いくぞ!」
「えっ」
「君がさっき言っていた新しいスキル効果だ。俺に合わせて!」
「は、はい……っ」
うなずくソフィア。
「冥皇封滅剣――」
俺と彼女の声が唱和する。
同時に無数の光剣が出現し、ゴルゴーンを全方位から貫いた。
俺の闘気剣と、それをコピーしたソフィアの闘気剣。
二重攻撃だ。
「お、おのれぇっ……」
後退するゴルゴーン。
明らかにひるんでいる。
俺はこの機を逃さず、一気に距離を詰めた。
「くっ、人間ごときが――【石化】!」
「遅い――」
ゴルゴーンのスキル【石化】は発動までに一瞬のタイムラグがある。
その一瞬よりも早く、俺は速力特化の『雷光の闘気』をまとい、奴に迫った。
「終わりだ!」
振り下ろした大剣を叩きつける。
派出な鮮血がしぶいた。
「うう……」
体の半ばまでを断たれた無残な姿で、ゴルゴーンが倒れている。
いくら第一階位堕天使とはいえ、さすがに回復が追い付くまい。
虫の息のようだ。
ノアのように時間を巻き戻して体を再生するような術は使えないんだろう。
「これで戦闘不能だな」
俺は大剣を掲げた。
こいつを振り下ろして、終わりだ。
「最後に言い残すことは?」
「ま、待て! 待ってくれ! まさか、あたしを殺す気か!?」
とたんに堕天使ゴルゴ-ンが表情を引きつらせる。
「ふざけるなよ! このあたしが、人間ごときに殺されるなんて――」
先ほどまでの上品な言葉遣いは消え去り、必死の様子だ。
「俺たちがやっているのは戦争のはずだ。負けた者は死んでいく――」
俺は剣を振り上げた。
「ひ、ひいっ……」
ゴルゴーンの顔がさらにひきつった。
その表情が恐怖と憤怒で醜く歪む。
「ち、ちくしょう、こんなところで――」
ゴルゴーンの全身から光が漏れだした。
なんだ、これは――?
嫌な予感を覚え、俺はすぐさま剣を振り下ろした。
が、それより一瞬早く、
「死んでたまるかぁっ!」
ゴルゴーンの全身から光が弾けた。
「我が力、我が魂のすべてを今ここに解放する──」
謳うように、告げる。
あふれた光が物質化し、彼女の体を覆い尽くす。
全長50メートルを超える巨大な怪物の姿へと――。
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