3 授けられた力
邪神の体から光が伸びた。
それは五つに分かれ、ノアたちに降り注ぐ。
いずれも五十メートルを超える巨大なシルエットだった。
光想体。
第一回堕天使たちの最終戦闘形態ともいうべき異形にして最強の姿。
ノアにはすでにカマキリ型の光想体が与えられているが、他の四人にも同様のものが与えられたようだ。
「これがあれば、人間の英雄どもなど恐れるに足りんな」
ザグナークがつぶやく。
「もっとも、邪神様から力を授かるまでもなく、かつての英雄の一人はすでに我が手で打ち倒したが」
「英雄を?」
「ああ、『白の賢者』と名乗っていた……それなりの手練だったが……しょせん私の敵ではない」
鼻を鳴らすザグナーク。
「対して、お前はふがいないな、ノア」
「……なんですって」
「人間に二度も敗れたのだろう? しかも邪神様から力を授かって、なお」
「……くっ」
ノアは唇を噛みしめる。
「あの日以来、彼の顔を毎日思い浮かべている……」
「へえ、まるで恋だね」
レッツェがはやし立てた。
「恋?」
「寝ても覚めても想ってるわけでしょ?」
「……ふざけているの?」
ノアは苛立ちに眉を寄せた。
反射的に聖武具を召喚しそうになる。
いや、相手の返答次第では本当に召喚してもいいかもしれない。
堕天使である自分が、よりによって人間に――しかも邪神の仇敵たる男に恋をするなど、冗談でも言われたくはない。
「ふう……」
ノアは一糸まとわぬ姿で冷水を浴びていた。
スレンダーで美しい裸身は、まさしく神々しい輝きを放っている。
自分がジラルドに恋をしている、などという悪い冗談が頭から離れないのだ。
それを払拭しようと――頭を冷やそうと、こうして水浴びを続けている。
が、冷静になるどころか、むしろ頭の芯が火照っているような感覚があった。
もちろん、ジラルドへの気持ちは恋心などではない。
が、度を過ぎた執着かもしれない、という自覚はあった。
そしてその執着と、恋愛とは――あるいは同質のものかもしれない。
「いえ、何を馬鹿なことを考えているの、私は――」
言いながら、ノアの頬はかすかな火照りを宿していた。
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