3 宮殿正門
俺たちは正門の前までやって来た。
高さ五十メートルほどもある巨大な門である。
ぴったりと閉じていて、手で押した程度では当然開かないだろう。
「他に入り口はないのか?」
「ない。ここから入るしかないのう」
なら、手は一つだ。
俺はアルジェラーナを見つめた。
「久しぶりに――やるか、あれを」
「うむ」
互いの口元に笑みが浮かんだ。
かつての邪神大戦のころの感覚がよみがえってきていた。
彼女となら――どんな困難でも障壁でも突破できる。
そんな『無敵の相棒』とも呼べる仲間。
俺とアルジェラーナの二人で、この門を必ず突破する――!
「――だけど、ここで【全盛期ふたたび】のスキルを使ってしまうと、装置を守っている堕天使たちと戦う前に効果切れするかもしれないな」
「だが、門を破るにはわらわとお主の力が必要だろう」
と、アルジェラーナ。
「スキルについては――新たに開発した術式があるから心配するな。どうにかしてやる」
「どうにかって――」
「このわらわが言っておるのだ。超天才魔法剣士のわらわが。信じるがいい」
「まったく……自信家だな」
「当然じゃろう」
ため息をつく俺に笑うアルジェラーナ。
「分かった。君を信じる」
俺は小さく息をつき、ソフィアに向き直った。
「聞いた通りだ。スキルを頼む」
「は、はい、あの……」
ソフィアが恥ずかしそうにモジモジとした。
自分の唇をそっと押さえている。
「……通常のスキルで大丈夫だ」
俺と彼女がより心を通わせることで、スキル効果を高める――というやり方があるのだが、そのためには俺とソフィアがキスを交わす必要がある。
他の四人が見ている状況でそれは、内気なソフィアにはあまりにも抵抗のある行為なんだろう。
「分かりました。では――スキル、発動!」
ソフィアの手から光が飛び、俺の全身を包む。
体中から、力が沸き上がった。
全盛期の能力がよみがえり、俺は体中から闘気をあふれさせた。
そのエネルギーが物質化し、黒い全身鎧となって俺の体を覆う。
「全力でぶっ放す。みんな、少し離れていてくれ」
大剣を掲げて告げる俺。
「アルジェラーナ、準備はいいか?」
「いつでもいけるぞ」
アルジェラーナが俺を見てニヤリと笑った。