11 ヴェルナの想い
いよいよ明日は出発の日だ。
「ジラルドさん……」
「ヴェルナ……?」
その日、突然ヴェルナが俺を訪ねてきた。
「その、明日はよろしくお願いします」
「ああ、こちらこそ。戦力の一人として期待してるぞ」
「……! ジラルドさんにそう言っていただけると光栄です。あたし、がんばります……っ!」
言ってから、ヴェルナがうつむいた。
その横顔が妙に寂し気だ。
「どうした、ヴェルナ?」
「また……ジラルドさんは『英雄』として戦うんですね……」
ぽつりとつぶやくヴェルナ。
「あたしにとって、あなたの戦いは『伝説』です。生まれる前の出来事ですし……」
「確かに、そうだな」
俺が邪神軍と戦っていたころ、彼女はまだこの世に生を受けてさえいない。
そう考えると、あらためて年齢の差を実感してしまう。
文字通り親子ほどの年の差だ。
「そんな昔から戦っている人が、今また最前線に向かう――本当なら、ジラルドさんには平和を謳歌してほしいです」
「ヴェルナ……」
「いえ、あたし程度の剣士が何を言うんだ、って思われるかもしれませんが……本当は若いあたしたちが立ち向かうべき事態じゃないか、って思って」
ヴェルナが俺を見つめた。
「なのに、実際にはあたしにできるのはサポート程度……ジラルドさんが体を張って対邪神軍のミッションに挑むことになる、という状況が……ふがいなくて」
「君一人が背負うことじゃないさ」
俺はヴェルナの肩にポンと手を置いた。
「す、すみません……あたしの方がジラルドさんの不安や緊張を少しでも和らげられたら、って思ったのに、逆に慰められちゃって」
「ヴェルナ……」
「ジラルドさん――」
ヴェルナがふいに顔を近づけてきた。
「えっ……?」
完全な不意打ちで、俺は避けられなかった。
ヴェルナの柔らかな唇が俺の唇に触れている――。
「え、えっと、その、お、おまじない……ですっ」
顔を真っ赤にしながらヴェルナが離れる。
「いきなり、こんなことをしてすみません! 少しでも……ジラルドさんに幸運が宿ればいいと思って……」
「驚いたけど……嬉しいよ。ありがとう、ヴェルナ」
おまじない、か。
大胆な行為に驚きつつも、その心遣いは何よりも嬉しかった。
「あたしに、あなたの背負っているものは分かりません。ですが……せめて、少しでも気持ちが和らげば……と」
そして――翌日。
いよいよ出発のときだ。
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