10 女湯での一幕
「ふう……いい湯だな、ソフィアとやら」
「は、はい……」
ソフィアは思わずドキッとしながら、裸のアルジェラーナを見つめる。
ふと、ジラルドが彼女を見たらどう思うだろうか、などと考えてしまった。
アルジェラーナとジラルドはともに五大英雄だ。
かつての大戦では数えきれないくらい一緒に戦っただろうし、一緒に過ごした時間も自分よりもずっと長いだろう。
「なんだ、わらわをジロジロと見て。まあ、美しさに見惚れるのは分かるが」
「ち、違いますっ」
思わず首を左右に振るソフィア。
「ん? わらわが美しいことを否定するのか?」
「あ、そ、それも違います……すみません」
「はははは、冗談だ! こちらこそ悪かった」
ぺこりと素直に頭を下げるアルジェラーナ。
「で、お主とジラルドはどういう関係じゃ?」
アルジェラーナがニヤニヤと笑いながらたずねた。
「ど、どういうって……」
ソフィアは息を飲む。
さらに、
「ジラルドさんと上手くいくといいですね」
「っ……!?」
サラッと告げたリーネに、ソフィアは思わず息を止めた。
「な、な、な、な……」
「まさか、『なんで分かったの?』とか思ってます? バレバレだと思うのですが……」
「だよね……やっぱりソフィアさんってジラルドさんのこと……」
「師匠とソフィアさん、お似合いだと思うなー」
「初対面の時点で、わらわには分かっておったぞ」
と、ヴェルナとミリエラ、そしてアルジェラーナ。
どうやら自分の恋心は他者から見て、かなり分かりやすかったようだ。
「だが、心するがよいぞ。あの男、ああ見えても女関係は意外と派手じゃ」
「ええっ、そ、そうなんですか!?」
思わず立ち上がるソフィア。
「はははははは! 動揺しすぎじゃ。若いのう」
アルジェラーナが愉快げに笑った。
「冗談じゃ。そんな男に見えるか?」
「……いえ」
「まあ、わらわたちの付き合いは長いからの。そういった想いをひそかに抱いていたものもいよう。ミーシャとかな」
「えっ」
「いや、そうじゃな……わらわもあの男との付き合いは長い。戯れに一夜を共にしたことも――」
「ええっ、そ、そうなんですか!?」
ソフィアはふたたび立ち上がってしまった。
「だから、冗談だというに。いや、冗談かどうかは……いちおう濁しておくか」
「えっ、それって」
「わらわとジラルドの関係は別によい。それより、お主とジラルドの関係の方がよほど面白そうじゃ」
アルジェラーナが話題を戻した。
ジラルドと一晩を過ごした、とか思わせぶりな言い方はかなり気になるが、この調子だと教えてくれそうにない。
「もう、アルジェラーナ様ったら……」
ソフィアは思わず口を尖らせた。
「はははは、気分を悪くしたか? すまんな」
「べ、別にそういうわけじゃ……」
「そういう反応が出るということは、お主の中にそういう気持ちがあるということじゃろう。違うか」
アルジェラーナがソフィアを見つめる。
「意識しておるのじゃろう、ジラルドを」
「私は――」
「お主のスキルは、ジラルドへの想いが一つの鍵になっているようじゃ。その気持ちは大切にするがよかろう」
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