9 みんなで銭湯に
「おっと、忘れておった。銭湯に行くか」
解散する前に、アルジェラーナが唐突に提案した。
「銭湯……?」
「転移の前には沐浴しておく必要がある。各自に魔法薬を渡すから、それを使って身を清めてほしい」
アルジェラーナが説明した。
「『儀式のための沐浴』と言っても、そう特別なことは何もない。魔法薬を体の四か所に塗り、洗い流した後、湯船に浸かるだけじゃ。ただし、魔法薬はきっちり塗るんじゃぞ」
「ねえねえ。どうせなら、みんなで行かない?」
ミリエラが提案した。
「うん、いいんじゃない」
「みんなで銭湯ですか。楽しそうですね」
うなずくソフィア。
「……裸になるの、ちょっと恥ずかしいな」
「くくく、初心じゃのう」
照れているリーネと、嬉しそうなアルジェラーナ。
「じゃあ、俺は俺で適当に体を清めておくよ」
「付き合いの悪い奴じゃの。お主は男湯の方に行けばよかろう」
アルジェラーナが俺をジト目で見た。
「やったー、師匠も一緒に銭湯だ!」
ミリエラが笑う。
「ジラルドさんと一緒に銭湯っ……!」
ソフィアが声を上ずらせた。
たちまちその顔が真っ赤になる。
「銭湯……銭湯……い、いえ、落ち着くのよ、ソフィア。別に一緒にお風呂に入るわけじゃないんだから……っ」
「どうした、ソフィア?」
「ひ、ひぁぁぁぁっ!? す、すみません、別にエッチなことを妄想したわけじゃありませんので……っ」
ソフィアの顔はさらに真っ赤になった。
「……そ、そうか」
なんとなく、彼女が慌てふためいている理由が想像できなくもないが……まあ、触れないでおこう。
大人の気遣いということで……。
その後、俺たちは町の銭湯に行った。
俺は一人、男湯に遣っていた。
女湯の方からは、女性客の声がいくつか聞こえてくる。
その中に混じって、聞き覚えのある声があった。
「うわー、ここが銭湯か~。あたし、初めて来たよ」
「えっ、そうなの?」
これはミリエラとヴェルナのやり取りだろう。
「だって、エルフの森には銭湯なんてないし」
「ふふ、きっと気持ちいいですよ」
と、ソフィアらしき声。
「ソフィアさん、綺麗……」
ぽつりとつぶやく声はリーネだろうか。
「お肌すべすべ……」
「あ、本当だ~」
「くくく、若い娘たちはよいのう。眼福じゃ」
エロ親父みたいなセリフは……アルジェラーナだな。
……まあ、楽しそうなのは何よりだが。
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