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ジュブナイル・イクリプス  作者: リル
美由美ルート
56/90

58.7月もだいぶ過ぎてきた

この美由美ルート(美由美編)は、共通ルートである16話で、(秀樹ルートの後に)新しくできた選択肢を選び、「執務室の前で待っていた美由美の相談に応じた」ことを前提としております。

 私と秀樹が恋人同士になってから、早くも一ヶ月。

 もう周りは、すっかり真夏になっていた。


「もう7月も半ば、か……」

 久しぶりに廊下の自販機で冷たいサイダーをがぶ飲みしながら、私はそんなことをつぶやく。

 もうこんなに時間が過ぎていたんだ。ちょっと信じられない。

 まあ、秀樹に「別の姿」がバレて、付き合うことになって、秀樹も無事に「元の姿」に戻れて。あまりにもダイナミックな日々だったのだから、そう思えてしまうのも仕方ないけど。

 最近はものすごく暑くなってきて、もうクーラーのない生活は想像ができない。

 はっきりいって、暑さに弱い私はあんまり外に出たくないけど……。まあ、ここで働いている間は、外に出ること自体がそもそもないわけだし、助かっているのかもしれない。


「おいおい、柾木」

 そんなことと思っていたら、端末でなんか動画を見ていた慎治が、こちらに話しかけてきた。

 なんか最近、こんな場面を経験していたような気が……。まあ、そんなことはどうでもいいだろう。

「聞いてんのか。もう」

「ああ、聞いてる」

「最近お前、俺に冷たくなったんだよな。反応がいい加減っていうか」

「……お前、いつから俺のこと、そこまで気にしてたんだ?」

 これは冗談でもなんでもない。そもそもこいつ、今まで私の態度にグレたりしたこと、指で数えられるほどしかなかった。

 むしろいつもこっちをからかったり、いじってくることが多かった気がするけど……。まさか、アレのせいなんだろうか。

「い、いや、決してそういう理由じゃないぞ。お前の『元の姿』とか、そんなどうでもいいこと――」

「ああ、そっちのせいだな」

「違うって言ったんだろ?!」

 どうも図星だったらしく、慎治はとうとう逆ギレしてきた。

 ……いや、こっちにそうされても困るんだけど。私のせいじゃないし。

「べ、別にそんな理由じゃないからな。最近お前の仕草とか、まじまじ眺めることになったとか、そういうのも違うぞ」

「お前、俺をそういう目で見てたのか」

「違う! 俺は女の子が好きなんだ!!」

「……慎治。お前、自分が何言ってるのかわかってるのか?」

 ここまで来ると、こっちもそろそろ呆れてきた。

 まあ、動揺するのはわからなくもないけど、もうそろそろ落ちついてほしい。時には結構いいことも言ってくれるやつなんだから。


「ああもう、そういうのはどうでもいい! 俺が言いたかったのはそっちじゃないんだ!!」

 どうしよう、ついに慎治が開き直った。

 こうなったこいつ、結構面倒くさいんだよな……。

「それよりお前、その、最近モテすぎじゃないのか?!」

 それに、やっと本題に入ったと思ったら、今度はこんな突飛なことである。

「た、橘さん……はともかくとして、綾観さんにもモテるわ、高梨さんにもモテるわ、なんだこりゃ」

「……つまり、焼きもちか」

「違うっ!!」

 こっちとしてはもう呆れてるが、まあ、慎治のことだし、しょうがない。

「うう……なんでこんなことになってるんだよ……お前、以前は高梨さんの相談に乗ってたんじゃないか」

「……そうだな」

 そういや、最近はずっと忘れていた。

 あの時――秀樹が「別の姿」でやってきて、ずっとその世話をしていた頃に。

 私は、自分の事務室の前で待っていた美由美と話したんだった。


『どうしたんだ、顔が暗いが』

 あの時の美由美の顔がどうしても気になった私は、結局そう話しかけた。

 事務室まで入ってきてもずっと顔が暗いままだった美由美は、やがてそっと口を開く。

『え、えっと、そこまで大したことじゃないですけど……』

 話を聞くと、美由美は最近忙しかったせいか、あんまり家に戻ってないらしい。

 まあ、あの時には「反軍」も攻める頻度が多かったから、美由美が戻れなかったのもおかしい話じゃない。私だって、5月はあんまり学園に行けなかった。

 ただし、私と美由美とは、その「戻れなかった」の重さが違う。

 美由美には今の時代からするとかなりたくさんの兄弟がいて、とある事情もあり、その面倒のほとんどを見ていたらしい。今はすぐ下の妹がなんとかしてくれてるようだけど、やっぱり自分からじゃないと不安なようだった。

『妹の美智琉みちるはうまくやってると言ってくれてますけど、どうも心配で心配で……』

『なら大丈夫なんだろう。あんまり心配しすぎても体に良くないと思うが』

『わかってます。わたし、心配しがちですから』

 そういや、私も美由美の家族事情についてはそこまで詳しくない。一応、とある事情によって話自体は聞いているが、美由美の家とかに直接訪れたことなんかはなかった。

 ……美由美が心配だ。

 やっぱり、近いうちに美由美の家に行ってみたほうがいいのかな。

『その、なんだったらまた俺に頼ってもいい。自分でもできることがあったら力になるから』

『ありがとうございます、柾木くん』

 あの時、美由美はこっちに向かった笑ってみせた。

 その、心から落ちついたことがよくわかるやさしい笑顔が、未だに忘れられない。

 今の美由美はどうしてるんだろう。

 まだ、家族のことを心配しているのかな。

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