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婚約破棄をするしないを5年繰り返した結果  作者: りすこ
アザレア視点

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9/14

9.5年繰り返して変わったことは

冒頭シーンに戻ります。

 残ったお茶の水面を覗くと、苦笑いの自分が写った。


 いやぁ、若かったなー。

 今、思い返すと少々、恥ずかしいセルリアンとの学園生活。

 画策するも失敗して、セルリアンとの関係は良くなるどころかこじれまくっている気がする。


 一度目の婚約破棄宣言から、はや5年。

 婚約者になってもう10年になる。


 変わったことは……………何一つない。


 相変わらず会えば口喧嘩。

 婚約破棄するしないを繰り返している。


 進展がなにもない。


 相変わらずセルリアン愛には溢れているし、セルリアンが嫌になって書面を叩きつけてきたって、燃やして葬りさるぐらいの気持ちはある。



 だけどねー。



 最近、色々考えてしまうのよね。

 これでよいのかって。


 そのきっかけはバイオレットだ。


 私はお茶を片付けると、癒しを求めてバイオレットの所へと行った。



 ◇◇◇



「可愛いー! ほんと、可愛いー!

 お持ち帰りしたいー!」

「ダメよ。うちの子、持って帰らないでね」


 バイオレットの所へ向かった私はベビーベッドで眠る赤ちゃんにはあはあしていた。


 バイオレットは、二年前に幼なじみのグレイと結婚して、シオンちゃんを産んだ。この子が可愛くて可愛くて私はすっかりメロメロだ。

 なんだろうね。

 世の中の可愛いを全て集めて固めたような可愛さ。ほんと、天使。


「それで? 久々の王子様との陸言はどうだったの?」

「相変わらず。また、婚約破棄してやるって言われた」

「あらあら。変わらないわねー。ふふっ。それでこそって感じだけど」

「ほんと、ちっとも、これっぽっちも変わらない。バイオレットはグレイと結婚して天使を産んでるのに! ほんと、変わらなさすぎる!」


 少し声を荒げると、眠っていた天使がふぇっと顔をしかめる。それにはっとした。

 息を潜めると、また天使は眠る。

 それにホッと胸を撫で下ろした。


「ふふっ。でも、喧嘩するほど仲がいいって言うし、王子様も本気で婚約破棄したいとか思ってないんでしょ? 思ってたら、とっくにやってるじゃない」


 本気でしたいと思ってないか…

 うーん。うーん。

 どうだろ?


「婚約破棄するなら、聖女様とお姉様たちと、うちの両親と、お兄様たちを撃破しないといけないから、めんどくさいんじゃない?」


 私だったら、かなりめんどいというか、しんどい。できる気がしない。


「面倒でも嫌だったら、やるでしょ」

「命が惜しいからそのままにしてるんじゃないかな」


 ハッキリ言って父上とお兄様達は、私に甘い。激甘だ。私が婚約破棄を嫌がっているうちは何がなんでも阻止するだろう。


 そして、セルリアンは顔が可愛いだけの普通の人だ。

 そんな人が元勇者と、元巨大魔銃使いと、騎士団団長と、国内最強武道家と、王家御抱えの魔術師と、暗殺部隊参謀を相手にできるだろうか。

 うん。無理だろう。


 だから、セルリアンが婚約破棄をしないのは、私に好意があるからではなく、家族が最強なだけだ。


 なんか、自分で言っていて空しくなってきた…


 愛されてないー。

 こんなにも、愛に溢れてるのにー。


 むーなーしーすーぎーるー!


「命は確かに惜しいわよね。でも、なら、観念して結婚するんじゃないの? それをしないってことは、王子様にも考えがあるんじゃない?」


 そうなのかな…

 そうと思いたい。


 セルリアンの中にも私を思う気持ちが砂粒一つでもいいからあると思いたい。

 ちっとも思えないけど。


「どうかな…今度こそ、書面を持ってくるって言ってたし」

「婚約破棄の? あらあら。怒らせちゃったのね」

「激怒してた。ギャフンと言わせてやるとか言ってたし」

「ふふっ。そう。でも、書面を持ってきたらどうするの?」

「どうしよう」


 難しい質問だ。

 少し前ならそんなの燃やして、セルリアンを今度こそ捕縛して、結婚すると言うまであの手この手を使ってやるって思っていたけど。


 なんか、それも空しいというか…


「あら? 諦めるの?」

「諦めるというか、なんというか…私だって幸せな結婚をしたいのよ。人並みに。バイオレットの幸せそうな結婚を見てたら、そうなりたいって思っちゃうのよ」


 私だって、愛されて結婚したいのだ。

 天使を産みたいのだ。


 愛が欲しい。

 愛がほしーーーい!!


 切実に。



「幸せな結婚をしたいなら、王子様じゃなくてもいいわけ?」

「そういうじゃないけど。セルリアンを待ってたら、死んで屍になってもできる気がしない」

「あらあら。いつになく弱気ね」

「だって、ほんとうに何も進展しないんだもん! 手元にはセルリアン似の天使どころか、セルリアンもいないし」


 泣き言の一つでも言わせてほしい。


「じゃあ、他の人もちょっとは、目を向けてみたら?」

「えー、私、セルリアン以外、どてかぼちゃにしか見てないよ?」

「それでも。あ、そうだ。今度の舞踏会でビックな人がくるらしいわよ。あなたの好みだと思うのよねー。行ってみたら?」


 舞踏会?

 確か、セルリアンも来るといっていたやつかな。


「誰よ。ビックな人って」


 バイオレットは、にこり笑って言った。


「元魔王よ」


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