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エピローグ : 偽りの声は冷たくて 痛くて


あの日から既に二週間経っていた。勇夜達は再開した学園で少しずついつもの日常に戻りつつあった。


俺が目覚めたときには全ての戦いが終わっていた。戦闘の音が突然消え、動けるようになった魔装騎士様達に俺は見つけられて運ばれたそうだ。不思議と傷は少なかったらしいが、俺には何故そうなったのか靄がかかったみたいに朧気な記憶しか無かった。アゼルはその時居なかったそうだが、暫くして姿を現しギルヴァスを倒したと勝利を宣言したみたいだ。歓喜と生き延びた事や親しい者の死に多くの人が涙を流し、祈りを捧げたらしい。そして刻まれるのは魔装騎士、そして蒼帝 アゼル・ベルライトがギルヴァスを倒したという歴史……それが真実だ。俺が戦ったのはごく一部しか知らず、その場には居なかったことにされている。所謂世界に残される平和と勝利の歴史、希望の為の事情。

それに対して俺は特に反論は無かった。あの後色んな人に怒られ、そして心配させてしまって……でも同じくらい感謝をされて、自分が成した事よりしてしまった事に対しての罪悪感の方が強かったのに不思議と暖かい気持ちになった。

戦争による復興は今でも進んでる。やはり魔族の進行は国にも及んでいた。外壁には未だ生々しい傷跡が残されている。それでも人々に被害がなかったのは騎士団のおかげだ。こうして今帰る場所があってまた皆と一緒に過ごす事が出来たのは誰が欠けてもいけない皆が戦ったから。

平和の訪れたこの世界に、未来に繋がる明日を迎えた日に、俺は……俺達は忘れない。多くの想いが繋がった事を……そして伝えられる今日を迎えられた事を……


ーーーーーーーーーーーーーーーー


「何耽ってるんだよ」


「うおっ!」

ボーッと考え事をしていた勇夜の肩にヴィルが手を乗せると勇夜は驚き、そしてその反応が大きく、乗せたヴィルも予想外だったようで驚かせたことに謝った。


「こっちこそ悪い。考え事してたら話聞いてなかった」

学園は確かに再開はしたが、授業の予定はない。主に安否の確認と生徒達の心配を取り除くための配慮があったようだ。クラスの人数も少なく、戦争前とはやはり雲泥の差だった。今クラスにいるのは勇夜達部隊の6人と数人だけである。そして話を聞いていなかった勇夜にヴィルがざっくりと説明した。それはあの日から会ったり話したりもしなかったわけで、だから久しぶりに皆で遊ぼうという話だった。その中で勇夜が驚いたのはトールも賛成だということだ。顔はそっぽを向いているが、リースが行きたいと言ったらしい。だからだそうだ。そしてそのリースは今までの被っていたフードを脱ぎ、まだ視線には慣れていないようだが、明るい表情と話し方になろうと頑張っていた。


「"でだ…前に聞いてた件だけど今日な。上手くやっとくから"」


「っ!」

勇夜の耳元でボソッと言うヴィルの話に、勇夜は勢いよく椅子から立ち上がりヴィルを見た。


「決める時決めろ。やれる時にしないで後悔するの嫌だろ?」

ヴィルは顔を離して普通に話し出し、その隣に居たセリエとアリサは何の事かと首をかしげた。勇夜はその反応をした2人を、正確にはアリサを見て気恥ずかしさから少し顔が赤くなった。そう、勇夜がヴィルに相談していたことはアリサに関しての事だからだ。勇夜がヴィルに視線を戻すと、したり顔で歯を見せて笑っていた。ヴィルの態度から逃げても仕方無いと勇夜は諦め、心の中で人知れず覚悟を決めていた。


今日は顔合わせと連絡、そして情報共有位だったため学園はお昼前には終わっていた、そこから食事を済ませて夕刻前まで勇夜達は久しぶりに羽を伸ばしていた。


「ん~ 結構周ったね。これからどうする?」


「そうだな……」

セリエが伸びをしながら他の皆に向かって聞き、ヴィルが考える素振りを見せ、角度的に他の皆に見えないようにヴィルが勇夜の脇を肘でつつき、催促する。


「っ! ……えっと、アリ…サ…話したいことがあるんだけど……」


「どうしたの?」

勇夜が勇気を振り絞り目を泳がせながらアリサにそう言うと、アリサは普通に返した。


「いや、えっと…ここだと話しづらいから…2人で話したい……なんて」

知らない人から見れば勇夜の女々しく感じる雰囲気が可笑しく見えるだろう。言われた当の本人はよく分からないと言った顔をしているが、セリエは気付き、恐らく勘の良いトールも理解しただろう。そして煮え切らない態度の勇夜に頭を掻いたヴィルが助け船をだす。


「そうかそうか! じゃあ俺達先に行ってるけど、もし合流出来るならまた後でな。よく分からないがそのまま2人で帰っても大丈夫だからな!」


「う、うん!そうだね! 何の話か分からないけど2人とも気を付けてね!頑張って!」

ヴィルの言葉に合わせてセリエも話すが、何故かテンパってしまって変なテンションになってしまっていた。


「馬鹿ばかりだな」

そんな2人を見て鼻を鳴らしたトールは歩き出す。リースもよく分かっていないようだが気にせずトールに付いていき、その後に馬鹿と言われたセリエが文句を言いながらヴィルと一緒に勇夜達から離れていった。


「………はぁ…それじゃあ申し訳ないんだけど付いてきて」

ゆっくり息を吐く勇夜は気を取り直して落ち着き、アリサと一緒に歩き始める。

勇夜が知っている人気の少ない場所というのは、何度か来ている公園という選択しかなく、そして色々と勇夜がアリサに想いを伝えた場所で、ある意味特別な場所だ。着いた時は少しだけ日が傾き始め、ほんの少しの赤みを帯びた光が2人を照らしていた。


ーーーーーーーーーーーーーーー


「えっと、改めて2人だけで話すの何か久しぶりだよね」


「? そうだね」

"さっきまで落ち着いてたのに、何か色々ヤバい!"

勇夜は急に緊張し始め、そんな雰囲気をアリサは感じたのか疑問を感じながらもそれに答えた。


「何を話そうとしてるか分からないけど、少し落ち着こ。今の勇夜君何か変だよ」

アリサは小さく笑い、今の勇夜を可笑しく感じた。勇夜はそう言われると思わなかったのか、驚きそして深呼吸をする。


「ありがとう。何か変に緊張してたかも。言うって決めたのに」

アリサの言葉で目を閉じ、気持ちを改めて真っ直ぐアリサを勇夜は見詰めた。


「アリサ…俺は…」

少しの間の後に勇夜は口を開き、名前を呼ばれたアリサは勇夜の次の言葉を待つ。


「俺はアリサの事が……」


「?」

次の言葉を溜めるように止まる勇夜にアリサは頭に?を浮かべた。


「……好きだ!」


「……っ!」

勇夜から出される言葉に一瞬呆けたアリサは徐々に理解し、そして驚いた。


「ずっと伝えたかった。言わずに後悔もしたくなかった。自分の想いを、本当の気持ちを君に伝えたかった………俺はアリサの事が好きです。これからもアリサの隣に居たいです」

アリサは勇夜の真っ直ぐな瞳と声に偽りの無い本当の気持ちを感じた。ほんのり赤く染まる頬は日の光だけじゃないのかもしれない。


「私………私も!」

アリサは勇夜の言葉に自分の気持ちを答えようと胸に手を当てて、そして口を開く。勇夜の目を見ながら出された言葉を勇夜は待つ。ただ直ぐに答えが出されることはなかった。アリサは突然うつむき、その表情を見ることはできなくなっていた。そんなアリサを見て勇夜の鼓動ははち切れそうな程煩く鳴っているのだろう。恥ずかしさとちょっぴりの期待を持ちながら………

だが勇夜の甘酸っぱい気持ちは、顔をあげたアリサの表情を見て途端に冷えることになる。



そう……アリサの表情はまるで初めて会ったときのような無表情だったから



ーーーーーーーーーーーーーーー




「私は貴方の事が嫌い」

私は凍りつく勇夜君に向けて言葉を出した。


「私は貴方を好きになんてならない。関わってほしくない。……私は!」

私はその後勇夜君に酷い言葉を…傷付ける言葉を何度も言った。何度も…何度も……言う度に胸が痛くて、でも止めるわけに行かなかった。私は勇夜君を突き放さなきゃいけない。だから嫌われる言葉をいくつも吐いた。勇夜君の顔を見れなくなって、下を向きながら言葉を出し続けて息が苦しくなった荒い呼吸の後に見た勇夜君の顔は辛そうで…悲しそうで…苦しそうだった。


「だからもう…私にこれ以上関わろうとしないで!」

突き刺されるみたいな痛みが胸に走るけど、ここで私が向ける言葉は最後まで変わらない。勇夜君は少しだけ後ろに下がった。


「そう…だよな。何期待してたんだろ俺……馬鹿だな。俺が誰かに好かれるわけ無いじゃんか……ごめんアリサ、変なこと言ったよな。気にしないでって言うのは無理かもしれないけど……またよかったら前みたいには戻れたらなって……ハハ……」

勇夜君の声は分かりやすいくらい落ち込んでて、傷付いてて……酷いこと言ったのに結局自分のせいだって言った。私は何も言えない。



「っ!ごめん!先に帰るよ。こんなことに付き合ってもらってごめん。アリサも気をつけて」

勇夜はアリサに顔を見せないようにそう言い、足早にアリサの前から離れていった。アリサは止めることも何かを言うことも出来ずにただ佇んだ。気付けば赤みを増した光がアリサの足元を照らした。


「ごめ……さい」

誰もいないこの場所でアリサが小さく呟く。


「ごめん…なさい、ごめんなさい! ごめん…な…さい…」

アリサの湿った声が響き渡り、次第に弱くなっていた。


「本当は好きなのに!大好きなのに!……でも私は…勇夜君の気持ちに答えれない…」

"私は答えちゃいけない"

アリサの悲しげな叫びは伝えたい"人には"伝わらない。アリサの気持ちは理解されない。その辛く苦し気な顔も……


「だって私は………」








「私は…"罪人(つみびと)"…だから……」

赤く染まるこの世界で、後悔をしても戻りたいと願っても既に進んだ今この時を戻すことはできない。そしてアリサの溢す言葉の意味する事をアリサを知るものには分からない。

アリサはゆっくりとこの場から歩き、帰路につくのだった。


ーーーーーーーーーーーーーーー


アリサの居なくなった空間で誰にも気付かれず、人影が現れる。


「ククク…そうですか、やはり貴女でしたか」

何処からともなく現れたのは フェーシャ・サングィーズ セルン王国から戦争での応援として派遣された者だった。


「先の戦争でお見掛けしたときにもしやと思い、これまで情報を探っていましたが、これは大当たりです。一刻も早く王に報告しなくてはいけませんね」

淡々と出される言葉には興奮したような喜びの感情も見えていた。




「アハハッ これからがとても楽しみです。直ぐにまた迎えに来ますよ アルセリア姫」

風が吹くとそこにはもうフェーシャの姿は無くなっていた。

彼の言葉はこれから何をもたらすのか、止まっていた筈の運命が再び動き始める時、それが少女に何をもたらすのか…… その行く末は……



一章 完結❗


どうも 木崎 ユウ です。

欠陥剣?士一章はいかがでしたでしょうか?今回テーマといいますか、勇夜君があんまり主人公してない感、書いててヤバかったです(^-^; まあ一章は勇夜君とその周辺の物語がテーマだったので、メインは皆しっかりと描写したかったんですね。

そして更新の延期を重ねてしまい完結まで非常に時間を掛けてしまいました。その分色々と編集の時間を割くことも出来たのですが(--;) 更新が遅くて本当に申し訳ございませんでした。

今回で完結にはなるのですが、本来掘り下げたいエピソードがそこそこあったんですけど本編があまりに進まなそうだったので割愛しました。なので違った形で作成していこうと思います。


続いての二章はあまり間隔を開けずに更新しますのでお待ち下さい。


それでは二章もよろしくお願い致しますm(__)m

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