出来ること すべきこと やりたいこと
ギルヴァスが現れてから事態は急速に変化していた。光姫が炎聖と水麗を治癒している間に闇牢がギルヴァスと対峙し、時間を稼いでいた。途中で合流した風鬼と雷皇、そして動けるようになった3人も戦闘に加わり、6人の魔装騎士がギルヴァスの元に集まった。魔族と戦い、万全ではなくとも戦わなくてはいけない。たとえ命を失うとしても人界を救うためには倒さなければいけない相手なのだから………
「………この程度か…」
始めはギルヴァスも肩慣らしをしていたのだろう。魔装騎士達は連携し、各々が現状出来るの最大の動きを見せていた。しかしギルヴァスは動きを次第に見極め、準備運動は終わったとでも言うように一気に攻勢に転じた。そこからは早かった。均衡が崩れ、気付いた時には全員が倒れていた。辛うじて闇牢が片膝をついて耐えていたが、立ち上がることが出来ずにいた。
そんな中でギルヴァスは歩を進め、近くにいた水麗の前に立つ。
「期待外れだったな。我が臣下と戦い消耗しているとはいえ、エテキス、シャムレシュルム、そして先程リベラリムさえも倒したお前達なら退屈しのぎにはなりそうだと思っていたのだが」
ギルヴァスの言葉には落胆が見えていた。そしてただ殺すのではなくいかに自身が楽しむかという余裕も現れていた言葉だった。その意味を理解するのは難しくなく、動くこともままならない彼らは悔しさに歯を食い縛るしかなかった。
「しかし窮地に立てば立つほどお前達という存在は力を発揮するものだと我も体験済みなのでな。さあ我に見せてくれ! 命が終わる時に見せる最後の力とやらを!」
ギルヴァスの矛先は水麗に向く。水麗は勿論、他の者も何とかしようともがくがどうすることも出来ず、ギルヴァスの剣が突き刺そうと引かれ、そして無情にもそれは行われた。水の顔に生暖かい血が飛び散る。しかしそれは水麗の血ではなかった。
「ッ!」
水麗の前には胸から背中を突き破り剣が生え、咳き込むと同時に大量の血が出る闇牢の姿があった。
「ほう」
ギルヴァスは闇牢の姿に感心する。そして剣を引き抜こうとするが闇牢はその腕を掴み止め、そして笑っていた。
「まて…よ……最後…の……あがき…みせ…てやるよ」
闇牢は歯を食い縛り力を体から放出しだした。流した血も混ざりながらギルヴァスの体の至る所に絡み、そして闇牢ごと黒い膜が覆い始める。
「いくらお前…でも…これを解くには…多少の時間はかかる…はぁ……スゥ…とっておきだからな…少しだけそのままでいろ…俺が死ねば……解除される」
闇牢がそう言い、最後にギルヴァスを力の限り蹴り出して自身は膜から離れ、数十m後方に飛んだギルヴァスは完全に膜に覆われた。そして無理矢理剣を引き抜いた形になった闇牢の体からは血が溢れだし、力無く背中から倒れていた。手を伸ばせば届く距離にいた水麗は何とか闇牢を支え、自分自身の体に寄せる。明らかな致命傷を見て、水麗は動揺していた。
「闇牢! どうして?!」
「っ!………炎聖」
水麗は何故自分を庇ったのか、闇牢の行動の理由を聞いた。しかし弱まる呼吸の後に出されたのはその答えではなく。近くに来ていた炎聖を呼ぶ声だった。炎聖は何故呼ばれたのか…その理由を知っているかのように何も言わずに闇牢の側に寄る。
「娘を………頼む…幸せに……」
「っ! はい! 誓います。必ず俺が!」
何の脈略もなく2人から出される言葉に水麗は交互に見て、その疑問を隠せずにいた。ただ炎聖は水麗の右手を強く握り、闇牢をずっと見ていたこと。そして闇牢は仮面ごしに笑みを浮かべ、その手をゆっくりと水麗の頬に優しく触れた。水麗はくすぐったさの感じる手を無意識に空いた左手で触っていた。
"大分待たせたな……ずっと会いたかった……俺がやれることはもう終わった…役目も……だから愛する妻よ…今行く"
触れていた手の力が抜けて地面に落ちる。それと同時に仮面が外れてその素顔が露になった。
「なん…で…あんたが」
水麗はその顔を知っていた。水麗にとって思い出したくもなかった顔。ずっと前から顔も合わせないで距離を置いていた筈の顔が……笑みを浮かべて苦しさも感じない嘘つきで母親を見捨てた大嫌いな父親の顔がそこにあった。闇牢は死んだ。自分を庇って……だというのに水麗は目の前の現実が受け入れられずに何も言わず動かず、炎聖の重ねた手を握り返した。
「もう良いのか? 存外短いな。しかし今の我を動けなくする程の力を味わえたのは中々よい経験だった。……まあそれだけだがな。お前達はもう無いのか? ただそこに動かぬままなのであればもうよい。終われ」
ギルヴァスは向かってこない相手を見て呆れ、既に何ももたらさないと結論付けて自身の剣に力を込める。そして剣が振られると同時に黒い波動が彼らの視界いっぱいに広がる。なす術なくただ目の前の終わりを見届けるしかない中で、彼らの前に蒼い光が降り立った。
光は大きな蒼い剣に変わると波動を切り上げ、数秒の拮抗の後に上げられた雄叫びと共に空へ打ち上げられた。
「すまない…遅れた」
蒼い光が収まり、彼らの前に立つのは蒼い髪が風によって靡く待ち望んだ姿だった。
「蒼帝、無事だったのか…っ! 素顔を…」
一番近くにいた炎聖がそう口に出す。顔を見れば仮面を外した蒼帝が……いや…アゼルがギルヴァスを見据えていた。
「ああ…俺にはもう必要ない。そう思ったから………闇牢、すまない」
アゼルは答え振り返ると、闇牢の姿を見て眉尻を下げた。そして全員を見て、ギルヴァスに向き直ったアゼルの顔に弱い表情は消えた。
「皆ありがとう。ここから先は俺が責任を果たす番だ。後は任せてくれ」
アゼルはそれだけ言うとギルヴァスに歩を進める。
「その力、お前がリベラリムの言っていた蒼帝という者だな?! 感じる力は剣鬼に以上だな! そいつらだけじゃ退屈だったのだ! お前なら我を満足させてくれるのだろう? 楽しい殺し合いをさっそく始めよう!」
ギルヴァスはアゼルの出現に気を引き締めるどころか、満面の笑みを浮かべて新しい遊びを見つけた子供のように笑っていた。しかしその表情とは裏腹にギルヴァスの纏う雰囲気と力は先程とは別次元の威圧を放っていた。だがアゼルはそれを受けても引くことなく、剣を構えた。
「もうお前の好きにはさせない誰も奪わせない。お前によってもたらされる終焉の運命を俺がねじ曲げる。俺は蒼帝 アゼル・ベルライト! 今こそ人界を守り導く救済の光になる! そしてお前を殺す!」
アゼルの感情と共に猛々しい力を見せ、そしてアゼルの変化に更に口角を吊り上げたギルヴァス。両者は示し合わせたかのように同じタイミングで地面を蹴り、二つの剣が斬り交わされた。
2人の戦いは凄まじいものだった。剣が振られ斬り交わされる度に戦場全体を揺るがすような余波が生まれ、その圧倒的な力がどれだけの物なのか誰もが知る程だった。
始めは互角……それどころかアゼルが押しているように見えた。現状力の差はそれほど変わらないように見えるが、アゼルは巧みに力を使いこなし、接近すれば剣戟と共に力による追撃を、距離を離せば力を纏った魔法を間髪いれずに打ち込み、ギルヴァスの思う通りの攻撃や行動を防ぎ、そして効果的に直撃させていた。ギルヴァスも自身に近しい力の攻撃に完璧な対処が出来ず傷が増えていった。アゼルが優位なのは理由がある。それはギルヴァスはアゼルと違い、有り余る力の制御が出来ていないようでその身体能力を使ったいわば力任せに近いものであり、その手っ取り早い方法が接近して斬りつけるという方法だったからだ。
戦いの場は地面から空へ上がり、アゼルは半透明な蒼い翼を、ギルヴァスは自らの羽を生やして更にその速度が上がる。アゼルは可能な限り早々の決着を望んでいた。アゼルは想像通り……いや想像以上のギルヴァスの力に今のままでは決め手にかけていた。そしてアゼル自身もう一つ致命的な懸念をしていたことも……そしてそれは次第に現実になり始めた。
「いいぞいいぞいいぞ! 楽しいな蒼帝ェ! こんなにも力を使えるのは初めてだぞ! もっともっともっと我に力を使わせてくれ! 全身が燃える程の快感を味わえる我の限界を引き出して満足させてくれ! 蒼帝ェェェ!」
力の均衡が徐々に崩れ始めた。力の使い方が粗かった先程までと比べて、成長し学んでいるかのようにその鋭さを増していき、力の出し方を忘れていたと言わんばかりの力を解放し出したのだ。禍々しいその力は形を変え、優勢だったアゼルに攻撃する暇を与えず防戦一方にさせていた。
「蒼帝が押され始めたぞ」
地表で見守る魔装騎士達はその情勢を見て、炎聖が呟く。
「やはり彼奴の力は別格か……しかし蒼帝もまだ纏っている様子ではない。まだ分からんぞ」
「そんな隙を奴が出すとは思えねぇ。いくら蒼帝でも難しいぞ……くそっ! 俺らじゃ足手まといかよ!」
風鬼の話に雷皇は言葉を口に出す。端から見ていてもギルヴァスの攻撃は凄まじく、また興奮しているように見え、ただただ力を使うことを楽しんでいるようだ。そして今の彼らに手を出すことは不可能であり、仮に援護したところで隙など生むことも出来ず邪魔にしかならないことの現実を理解するしかなかった。
遠くで戦う音以外静かなこの場で彼らの前に突然現れたかのように、この場に居てはいけない存在がそこに立っていた。
「どうして貴方がここに?! 貴方はここに居ては行けません。早く下がりなさい! 如月 勇夜君!」
目の前に現れた存在が誰か気付いたのは、会ったことのある光姫だった。光姫は目の前の人物である勇夜に叫ぶ。しかし勇夜は耳を貸さずに動かず、それどころか俯いたままでそこに居るだけだった。
「勇夜君! 早くここから……ッ!」
光姫はもう一度勇夜に向けて叫ぶが、その途中で急に脱力感に襲われ地面に膝をついた。だがそれは光姫だけに起こったわけではなかった。その場の魔装騎士全員から力が抜けたように地面に倒れ込んでいた。
その原因は明らかだった。彼らの体からは目に見える力の流れが勇夜に向けて……その手甲に吸われていた。見れば亡くなった筈の闇牢の体からもその現象が起きていた。
「やめ……なさい! 何をしているか……わかって…るのですか……」
光姫は倒れながら顔を上げて勇夜を見る。これが何なのか光姫は勇夜から聞かされていたためわかっていた。その危険性を理解し、何とか止めさせようとするが、その声は届かない。そして勇夜な顔から血が滴り地面を濡らした……
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「っ!」
激しい頭痛により、勇夜の意識が目を覚ました。勇夜が頭を押さえながら見渡すと何もない暗い空間に居ることがわかった。一先ず落ち着くために深呼吸を行っていた。
「やあ、はじめまして。君の分岐点へようこそ」
誰も居なかった空間に突如響く声に驚き、勇夜は瞬時にその方向へ体を向けた。そこには優しげな笑みを浮かべた恐らく20代辺りの男性が手を振り、勇夜を見ていた。勇夜は何者なのか、そしてここがどこなのかを聞こうと口を開くと、先に話したのは目の前に居る男だった。
「先ずここが何処かというのは…まあ分かりやすく言うと君の精神の内側かな。それとさっきも言った通り君の運命が決まる分岐点になる。そのどちらにも希望は無いけどね……そしてぼくは君にそれを伝え選ばせる存在。強いて言うなら君の使用している今は陸真って呼ばれてる物の所有者だった者…かな。あえて名乗るなら イオ、僕が昔呼ばれてた名前だよ」
まるで勇夜の考えを読んだかのように男は疑問の答えを話し出す。勇夜自身の理解が追い付いていないが、それでも今置かれている状況だ
けは理解をしていた。
「君が初めてじゃないってことだよ如月 勇夜君。そして君が来たのは偶然じゃない。願わくばそうなってほしくはなかったけど、やっぱり世界は理不尽なことだらけだ」
イオという男はとても残念そうな顔で勇夜に話す。
「正直どういう事なのかよくわかりません。でも俺は確かに戦場に居たんですが、ここから出ることは出来ないんですか?」
勇夜はイオに対してそう尋ねた。イオはその問いに答えるために口を開く。
「出ることは可能だよ。君が選びさえすればね。それと君は今でも戦場に居るよ。別の意識が君の体を使ってはいるけどね」
「別の意識?」
勇夜は始めに分岐点という言葉を聞いている以上選ぶというのは理解していた。ただ自身の体は別の場所にあって、その上別の意識の話をされたことで更なる疑問が生まれた。
「簡単に言えば陸真に宿ったモノ……君も言葉が浮かんだ筈だ。そして聞いただろう? 悲しみ憎しみ怒り…あらゆる負の感情が込められた彼らの声が…」
勇夜はその話に頷く。そしてイオは話を続けた。
「本当はそんなのは無かったんだ。ただ多くの意識、力、感情を取り込んでそれが出来た。君が聞こえた声は、今で言う魔装騎士と呼ばれる特異な力を持った人々の感情なんだよ。彼らがどんな仕打ちを受けてきたかわかるかい?君もあの苦しむ声を聞いたならそれがわかる筈だ。ただ望まない力を持っただけの少年を…少女を人は拒絶した。だが戦わなければいけないときが来た。それが魔界との戦争。当時の奴らは腐ってた。だから制御するためにその手甲を作った。逆らえないように彼らから力を…多くを奪い、そして強制させた……その力は感情によって力が上がる。だから負の感情を奴らは利用し戦わせた。まあ手甲の所有者にもその力が吸収されて身を滅ぼすわけだが、僕も含めて使い捨ての駒だったて訳だ」
勇夜は聞けば聞くほど多くの感情を嫌でも理解してしまった。イオな口から出されるのは真実であることは、彼の言葉からわかっていた。
「まあ何で僕だけここにいるのかっていうのは僕自身確証は無いけど、多分一番親和性があったからなんだと思う。僕の力も関係したんだと思うけど、僕は魔力を自分の中で複合させる力があった。こう言うのもなんだけど戦争で魔界の王を倒したのって僕がその時の彼らの力を借りて出来た事だから」
勇夜は今までの話で特に驚いた。歴史を学ぶ上で魔界の王との戦いは今回を除いて一度だけ…それも数百年も前の話になるのだ。
「君が契約して力を使ったときに僕も目覚めた。今の世界を見て間違いじゃなかったって思ったけど、結局こうなって残念なんだ………ごめんね少し話しすぎたよ。君の体は魔装騎士の力を吸収して限界に近付きつつある。だから選んでほしい。 "死んで未来を繋げるか" "死んで終わりを向かえるか"」
「はっ?」
勇夜は馬鹿げたようなその選択肢に思わず声が出てしまった。死ぬことに変わりはなく。ただ違うのは繋げるか、終わるかだけ……
「気持ちは察するよ。でも何も変わらないんだ。君以外の子も同じ様に危機に瀕した時同じ選択肢を出して皆同じ答えだった。残念だけどこれは変わらないんだ。正直今回外から感じた力は途方もない。外の彼だけでは無理だ。だから君の体を使い、身に過ぎた力で敵を討ち、命と引き換えにするか、何もせず戻って敵に世界の全てを終わりにされるかなんだ。僕はどちらでも構わない。強制はしないから…二つ目を選ぶなら今だよ。今ならまだ何とか僕の力で彼らの力を除去出来る。それだけだけどね」
外の彼と言うのは蒼帝であるアゼルの事だと勇夜は理解した。そしてその選択肢の理由を聞いて納得せざるをえなかった。勇夜にとってこの二つしかないのであれば答えは決まっていた。
「俺は……っ!」
勇夜は命を捨ててでも未来を繋ぐ選択をしようとしていた。覚悟は決まっていた筈だ。自分の死で大切な人達が助けられるなら惜しくはないと本気で思っていた。そんな勇夜の思いの中で自分以外の言葉と想いが思い返すように甦った。それは友人との約束…そして自分にとって大切に思える人の言葉…
「俺は……俺は! ……死ねない」
勇夜の言葉にイオは少し驚いていたが、それを反対することも無かった。
「そうか…なら直ぐ君を助けるよ。終わるかもしれないけど君にとってそれが大事なことなら僕は尊重する。僕の手をとって…」
「違う!」
勇夜はイオの言葉を妨げた。イオは首をかしげて勇夜を見る。
「俺は世界が終わるとか、俺が命を捨てて力を使わないと救えないとか言われてもよく分からない……でもまだ死にたくない……前まで自分が居ない方が皆が幸せになれるって本気で思ってた…正直今でも必要な存在なのか分からない…でも皆で生きて帰るって約束した…絶対に生きて一緒にって言われた…俺が死んで悲しむ人の事を知った…俺が本当に望んだのは大切な人達が笑って幸せになること…俺のせいで悲しませることじゃない! でもその人達が…俺が生きて進むために今力が必要なら俺は戦う! 俺のすべきことならそれを受け入れる! でも絶対に死なない! 生きて勝つ! それが叶わなくなったとしても俺は最後まで生きることを諦めない! 出来ることがあるのに始めから望まないなんて選択はない! 皆とやりたいこと、話したいことがまだいっぱいあるのに俺はそれを捨てるなんて出来ない! だから力を貸してください。世界を…皆を…俺を助けるために…」
勇夜は自分の感情を乗せた言葉を放つ。イオに対してか、それとも自分にか。話として成り立つ言葉ではないかもしれないが、それでも勇夜は言い切り、そして頭をイオに下げていた。イオはただ黙ってそんな勇夜を見ていた。
「君は…本当に生きて勝つ事が出来るのかい? 言葉や感情だけじゃどうにもならないと思わないのかい?」
「出来る出来ないじゃない! やらなきゃいけないんだ! それに貴方が言ったんです。この力は感情によって強くなるって。だから諦めないために…大切な人を助けるためのこの感情を持ち続ける限り、俺は死なないし負けない!」
イオの問いに答えた勇夜の言葉を受けてイオは目を丸くして驚き、そして笑いだした。
「ハハッ……確かにそうだ。僕が言ったんだったね。………保証は出来ないよ。君がこの力を使いこなせるかも未知だ。耐えきれず自我も体も崩壊するかもしれない。それでも君が…君自身が戦うって言うんだね」
勇夜の目に迷いもなく、それどころかこの不利しかない状況でも諦めるなんて言葉は微塵も感じさせなかった。
「……無粋だったね。なら僕は君を全力で補助しよう。向こうで僕が出来ることは少ないけど、アドバイス…というより絶対にしなきゃいけないことを伝えるよ。先ずは力の感情に飲まれず"陸真"を制御すること、それと取り込んだ力のせいで君の体は悪い状態だから、辛くても苦しくても集中してその力を使うんだ。君の体はその力に耐えられるように作り替えるために。心配しなくてもイメージを力にする事が出来るから、それさえ出来れば君は大切な人を助けられる。とりあえずこんな感じかな。まあ力を使うところまで出来れば僕も手助け出来るから、そこまでは頑張ってね。………これを選んだ以上もう戻れない。分かってるね?」
イオの説明を聞き、勇夜は頷いた。イオは小さく笑って手を出した。
「それじゃあ始めようか。君が望んだ未来を現実にするために。君の、君だけの物語を作るために」
勇夜はイオの手を取り、そして薄まる意識の中で決意する。勝つために自身が想うこと、そして勝つことを




