表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
50/77

開戦 ~明日を迎えるために~

~ライイング平原~


平原から多くの魔物が吠え、咆哮し、地鳴りを響かせながら対する敵に向かいだした。それと同時に動き出した魔物とは別の魔物達が魔力を集中していた。それはまるで様々な色合いの光源が作り出す景色の一部のように輝きを放ち、そしてその魔力は地から放たれ、放物線を描きながら視界を覆い尽くす程の魔力の塊は天から降り注ぐ光の雨のように人々に襲いかかろうとする。


「闇牢!」

蒼帝は側にいる闇牢を呼ぶが、彼は既に詠唱に入っていた。


「"暗き闇夜が作り出す漆黒の牢、その牢には何人すらも突破する事叶わず、力ずくで抉じ開けるのであれば汝が力が自身を死に追いやるだろう" 詠唱結界魔法 "死闇(しえん)夜界牢(やかいろう)"」

闇牢が詠唱を終えた瞬間隊員全てを覆う半円の結界が現れた。それはまるで牢屋のように格子状であるが、その隙間は腕が通れない程の狭さで結界内を守るようになっていた。形成してから一瞬の間が空き、結界に多数の魔法が直撃する音が響く。


「ぐぅぅ!」

直撃する音は数秒続き、闇牢は結界を維持する為に力が入る。外でどのような事が起きているのか、詳細がわからない中で殆どの隊員がいく末を見守っていた。そんな中で少しの疑問が生まれる。様々な魔法が直撃する音がするのに何か爆発するような音がしていない。


何故か……それは結界の外側にあった。結界に当たった魔法は全て消えておらず、まるで接着しているように結界に張り付いていた。


「自らの力を受け取れ!」

闇牢がそう言うと張り付いているように見えていた魔法全てに黒い魔力が絡み付き、弾かれたように戦場の魔物達へ降り注いだ。咄嗟の判断が出来なかった魔物達は飛来した魔法に直撃し、爆発に巻き込まれ、裂傷を負い、当たりどころの悪かった魔物はその場で死んだ。損害は大して大きく無かったが、戦いの流れを掴むには十分な結果を生んでいた。闇牢は結界を解き、戦場を見た隊員達の士気は上がり、歓声をあげる。たがこれだけでは有利とは言えないすかさず雷皇と風鬼が前に出る。


「合わせろよ風鬼!」


「主のほうこそな」

雷皇と風鬼は互いを見ずに同時に詠唱を始める。


「"天より墜ち、地を揺らす五柱の(いかづち) 悪を裁くその雷を防ぐこと叶わず、その身を魂を焦がし、汝が見る雷は、汝を天へと送る光となろう" 先いくぜ風鬼! 詠唱魔法 "裁雷(さいらい)五堕天(いだてん)"!!」

雷皇が詠唱を終えると平原の魔物達の頭上に黄色く巨大な魔方陣が数百m間隔でまるで星の先端を描き、中央を囲うように発現した。魔法陣の周囲は稲妻が飛び交い、大きく光り轟音をたてながら天から地へ五つの巨大な雷の柱が墜りたった。雷に直撃した魔物達は声を上がることもなく焦げながら絶命し、見る者からすれば恐怖を感じるほどだがこれで終わりではない。


「"吹き荒れる風 塵へと返す嵐 全てを切り裂き 全てを屠り 生を許さぬ我が風は汝らを死の彼方へと誘おう さあ祈れ 叫べ 逃げ惑え 汝らの奏でる風が我らの勝利と成ることを" 詠唱魔法 "嵐奏(らんそう)乱飢竜(らんきりゅう)"」

雷皇の詠唱から少し遅れて風鬼の詠唱魔法が発動する。雷皇の魔法陣に囲われた中心に巨大な一つの魔法陣が空に描かれる。そして風鬼の陣から地へ、風が渦を巻きながら天を見下ろす地の魔物をまるで竜の頭が大きな口を開けて喰らおうとするように地へ覆い被さった。雷皇の魔法と同様に直撃した魔物は形も残さなず、その周囲にいた魔物もその身を切り裂かれた。


「まだまだぁ!」


「ハアァッ!」

雷皇と風鬼が更に同時に力を込める。すると囲っていた五つの雷が、地を削りながら中心の渦に向けて狭まり始めた。当然ながらその導線状にいた魔物は痺れ焦げ絶命する。そして雷皇と風鬼の魔法が互いに合わさろうとしていた。



「いくぜ風鬼ぃ!」


「承知!」



「「"複合詠唱魔法 "嵐鬼(らんき) (らい)……っ!」」

雷皇と風鬼の魔法が混じり合い、凄まじい力を発動しようとした時、巨大な2人の魔法を何処からともなく現れた更に巨大な青い炎の手?が魔法を完成しきる前にそれを握り潰した。そして魔法は四散し、魔法を握り潰した青い炎も消え去る。


「ちっ! 一応今出せる全力だったんだがな」


「………こうも容易く消されるとは」

戦場を支配しつつあった巨大な魔法が消え去り、雷皇と風鬼、そしてこの場に居る者達は魔物達の後方、青い炎を放った右手を此方に向けるリベラリムに視線を向け、苦虫を噛んだような表情をした。

対してリベラリムは遠目では見にくいが、まるで何処からでもどうぞとでも言いたげな表情で彼らを見ていた。そんな中で詠唱魔法により一時魔物達は動きを止めていたが、所々で咆哮を上げると突撃を再開した。魔物については4分の1は減っただろうか……しかしそれでも脅威的な数の暴力が今まさに人族に襲いかかろうとしていた。


「この場にいる全ての戦う者達に告げる! 我々に向かう敵は全てを殺し、全てを壊す我々に害をなす存在だ! 猶予はない。我々には守るべき世界が、国が、人がいる! ここいる理由は皆違うかもしれない、だか敗北は自らの守るべきものを滅びへと向かわせる! 立ち向かい死することは恥ではない! 立ち向かわず敗北することを恥と誓え! 死を恐れるな! 敵から逃げるな! 覚悟に迷うな! 犠牲を無駄にするな! 我々が進む、世界が望む明日を迎えるために立ち止まるな! 我々は勝利するためにここにいる!! 幾十 幾百 幾千の屍を踏もうと眼前の敵を全て殺し尽くせ! 行けぇぇぇぇぇぇぇ!!」

誰も彼も戦いが好きなわけではない。恐怖から逃げたいと思う者も少なくないだろう。だが蒼帝から放たれた言葉はそんな迷いを吹き飛ばすような聞く者達の心を、感情を奮い起たせた。そして蒼帝の掛け声とともに本当の戦争が始まった。


「蒼帝、私達はどのように動く?」

闇牢は蒼帝に進軍を始めた戦場を見ながら問い、他の魔装騎士達も蒼帝に視線を集める。


「私達は上位魔族を最優先で叩きます。他の魔族が居ないのは気がかりではありますが、2人一組で別れましょう。炎聖、水麗は上方を」


「了解」


「分かったわ」

呼ばれた炎聖(えんせい)水麗(すいれい)は短く返事をして互いに頷くと、その場から駆けて戦場へ向かう。


「雷皇と風鬼は下方から、2人は詠唱魔法を放ってますから出来るだけ余計な戦闘は控えて下さい」

蒼帝は次に雷皇と風鬼に向けて伝える。詠唱魔法を人の身で放つにはリスクがある。いくら魔装騎士が強大な力を持っていようと大規模な魔法を放てば少なからず負担が出るからだ。それでも彼らを一緒にしたのは相性と戦闘スタイルが影響している。


「承知。だが心配せずともあの程度で疲れる程柔ではないぞ」


「ああ、風鬼の言うとおりだ。まっ こっちは任せとけって」

2人は蒼帝の言葉に頷くが、余計な心配は要らないと口角を上げ、風鬼は背を雷皇は右拳を向けてその場を離れる。


「闇牢と光姫は主戦場で全体の補助をしつつ魔族の本体へ向かってください」


「はい!」


「分かった。それで蒼帝は? どう動く?」

最後に闇牢と光姫に指示を出す。2人は返事をするが、闇牢は意識が"戦場に向ききれていない"蒼帝に聞く。そんな闇牢の言葉に蒼帝は小さく息を吐く。


「私は……俺は気がかりを先に潰して来ます。魔物が進行してからずっと戦場から少し離れた場所から俺にだけ分かるように殺気を放ってるんです。少なくとも確実に力のある魔族です。もし放っておけば最悪の事態になる可能性があります。それが済んでから戦況を見て直接ギルヴァスを叩きます」

闇牢と光姫は蒼帝の言葉を聞き、その殺気について驚くが、蒼帝の行動を理解する。


「分かった。だが早めに決着を頼むぞ。君が居なければ決まった運命になる。それを忘れないでくれよ」

闇牢はそれだけ伝えると光姫を見て行こうと言い、この場には蒼帝だけが残る。


「……分かってますよ自分の存在の意味を……"過去"も現在も変えれない。だけど生きる意味をくれた…"俺が救われたこの世界"を救うために」

蒼帝は呟くと力一杯拳を握り、仮面の内側に決意の宿る瞳を光らせて半透明の蒼い羽を広げて、行くべき場所へ飛び立った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ